第108話 死闘、そして
「ワインもう少し右! ノー、攻撃に全力! ブラック、ストライプ回収!」
劣勢は加速していく。
戦えるのは、もはや三人。
うち高速戦について行けるのは二人、もう一人は動きが遅すぎて、おそらく彼女の呪文が唱え終わるころには決着がついているかもしれない。
それほどまでに、もう、終わりが近い。
何しろ、ライサナは、傷一つ負っておらず、疲れも全く見えない。
これは、無理だ。
「あ……っ!」
中距離に油断していた、ワインの元に、一気に距離を詰めたライサナが現れ、そして──。
「ぐ……っ!」
まずは腹に一撃。
「っあ!」
そして、顎。
その二撃で、ワインという戦力を完全に無効化した。
一秒にも満たない時間で、フリルは一人になった。
「くっ、あっ……!」
「ふふふふふ、うふふふふ!」
人が一人いなくなるごとに余裕が出来、今となっては妹のみ。
この弱い妹をいたぶって、二度と逆らわないような強烈なトラウマを植え付けようかしら。
その可愛い顔に、二度と消えない醜い傷を付けてあげましょうか。
毛髪を永久脱毛してあげましょうか。
面白い。
この子の絶望の表情が、滑稽でしかたがない。
そうだ、一つ一つ全部やってあげましょう。
いくつ目で赦しを乞い、いくつ目で絶望するでしょう。
ああ、楽しみ。
この子は一生、私の可愛い玩具として──。
「……何ですの、これ?」
ライサナは自分の身体に短剣が刺さっていることに気づいた。
そんな短剣、自分に刺さるわけがない。
鉄の刃ごときがこの身に傷を付けられるわけが──。
「ウィークポイントを、突きましたね?」
こくり、と肯くのは、レザー。
「油断、しましたわ……」
ライサナが多人数を同時に相手に出来る理由。
それは、強い者の闘気のみを感じ、反応しているからだ。
だから、パンが指示を出しているのに気づいても、倒そうとしなかった。
更に、戦闘中はレザーの存在すら分からなくなっていた。
完全に、盲点だった。
膝を突く、ライサナ。
「わたくしの、負けですわ」
新魔王、ライサナに勝利した。
「勝ったの……かよ?」
フリルが疑問系で聞く。
「勝ちました……ね?」
パンも疑問系だった。
「勝った……のかな?」
レザーですら疑問系だ。
「あなた方の勝ちですわ?」
しょうがないから、ライサナが答えた。
なんか、新魔王に勝ったらしいよ?




