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第107話 限りない、劣勢。

「パン、俺も戻る!」


「分かりました! フリル、右、ブラック、強化、フリル」


 だが、一度バランスが崩れてから、防戦も出来なくなっていた。

 ストライプが参戦したのだが、指示に従ってくれないことも多い。

 ドットやリボンはダメージを蓄積している。


 こんな最強のメンバーに囲まれて戦っているのにダメージをほぼ受けていないライサナ。


「あっ!」


 右手側のダメージ蓄積で腕が動きにくくなっているドットが、攻撃を受けそこなって、攻撃を頭に直撃する。

 ふらふらとしたドットは、そのまま地面に尻を着く。


「ドット、回復待ち!」


 咄嗟の判断で、パンは戦えないと思い、休ませることにした。

 だが、一人減るとたちまちきつくなる。


「ノー、防御強化、フリル、リボン、ワインの順! ワイン、弓連射、リボン、潜伏後場所移動!」


 とりあえず、正面のフリルに攻撃を集中させ、それを援護させるように作戦を変更した。

 だが、それでも欠けた穴は大きい。


「おい、こっちに集中しろってんだ!」

「あなたの相手だけでは暇すぎますわ」


 明らかに、フリルを後回しにしている。

 前衛の中で、最もダメージの大きい、リボンを狙っている。


「くぁっ!」


 ほぼずっと潜伏していたリボンも、ダメージを蓄積させ、その場に倒れる。


「リボン、引いてください!」


 二人倒れた。

 これで、完全にバランスが崩れた。


「ワイン、弓と魔法、後方! フリル、全力防御、前方! ブラック、後方に、ノー、防御、フリル!」


 崩れたバランスは、もうどうあがいても取り返せない。

 だからと言って、パンが投げ出すわけにも行かない。


 パンは、もう無理だと思っている。

 今のうちに逃げ出したい。

 だが、今彼女が逃げる事は出来ないし、逃げても追いかけて来るだろう。


 何より自分を参謀として信頼してもらった彼女たちを置いて逃げる事なんて出来ない。


「ワイン、魔法! ノー、炎!」


 涙が零れて来るのが分かる。

 行動を共にした少女たち。

 誰もが、一人でも恐れられるようなクラスの人間だったはずだ。


 それが全員束になってかかって、まるで駒のように倒れてしまう。

 あれは、人間ではない。

 人間は、あんなものに戦いを挑んではいけなかったのだ。


「ストライプ、体当たりからの攻撃C! ……あ……っ!」


 しまった。

 今のは指示ミスだった。

 攻撃Cは、近接連続攻撃中に魔法の準備をしてとどめに魔法を放つものだが、想定する速度が違い過ぎる。


 フリルが防御に徹している以上、その攻撃は中距離のワインではなく、同じく近距離のストライプに向かう。


「ふぎゃぁぁぁぁっ!」


 ストライプの叫び。


「フリル、全力攻撃!」


 だが、それでも、パンは逃げる事は出来なかった。


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