第101話 託される重み
「作戦は立てましたけど、状況による分岐が多く、煩雑になりました」
「それを覚えるのか?」
「いえ、時間があればいいですけど、普通の人が覚えようとしたら、半年はかかります」
「長っ!? どんだけ分岐したんだよ?」
パンはあらゆる状況を想定して策を立てたため、もの凄い量の作戦になってしまった。
頭が良すぎるから、色々なことを想定してしまったのだ。
それでもかなり妥協した方で、時間があれば更に細かく想定したようだ。
で、立てた方はいいんだけど、それを覚えて実行する方は大変だ。
誰か一人でも間違えたら、全員死にかねないのだ。
現代の軍において、命令厳守が絶対なのはそのためだ。
全体を見て作戦を立てた人がいるんだから、駒の一つでしかないお前が疑問に思うな、ということだ。
とりあえず、この集団は軍隊ではなく、ただの有志の集団でもある。
とは言えボスがしっかりしているので統率力はある。
そして、まあ、まちまちではあるが最低限、新魔王ライサナを倒したいという気持ちはある。
「それで、どうすんだ?」
「とりあえず、基本だけ説明して、後変更があれば全て現場指示にしましょう」
「まあ、そうするしかねえよな……」
「そして、フリルさんには作戦を全部覚えてもらいます」
「ええっ!? 何で俺だけ?」
「私一人では、気を失う可能性もありますし、私が指示を出していることが分かれば、まず、狙われます。ですから、私の代わりが必要なのです」
「それは分かるけどよ……何で俺なんだよ?」
「臨機応変になった時、一番信頼出来て、みなさんもそう思ってるのがフリルさんだからです」
「…………そうかよ」
確かめるまでもないくらい、自覚している。
何だかんだみんな、文句を言いつつも自分についてきてくれる。
あの自由なストライプでも、やめろと言えばやめるし、来いと言えば来る。
他のみんなも同じだろう。
それは分かってる。
だからこそ、とても重い。
指示いかんによっては死人が出るかも知れないのだ。
パンだって、その自覚があるから、複雑な作戦を考えたのだ。
彼女もその重みを知っている。
だからこそ、他人に託すのは心苦しいと思った。
けれど、誰かに託さなければ、と言うことで、フリルに託したのだ。
絶対的な信頼。
そして、この重圧にも耐えうると信じているのだ。
「分かった。覚えよう、教えてくれ」
フリルは覚悟を決めた。
もう、みんなの命を請け負うことに、恐れはなかった。




