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悪魔の少年


 あなたは覚えていないかもしれないけれど、わたしたちは昔出会っていたんだよ。



 幼き日のわたしを助けてくれた彼は、わたしにとって恩人だった。

 一度きりの邂逅は、必然か偶然か、十年という月日を経て、運命はわたしと彼を巡り合わせた。

 思わぬ彼の正体に驚きつつ、またしても彼に助けられたわたしは、以前伝えられなかったお礼と共に元気良く自己紹介をする。


「ありがとう! わたしは―――。よろしくね」


 対する彼が呆気に取られていた事に、この時のわたしは気付いていなかった。

 ただ長年心に燻っていた、恩人にお礼を伝える、という事が叶って喜びに浮かれていた。



* * *



 ブスブス、ザクザク、グサグサ。色々な擬音があるが、つまりは突き刺さっていた――大地の背中に。

 物言わず、ただ大地の背中に視線突き刺しているのは(いく)だ。横目で後ろを伺えば、襖から顔を半分出してこちらを睨むように見ていた。何かしただろうか、とは大地は思わない。原因ははっきりしている。取り出したばかりの布団で眠っている目の前の悪魔だという少年だ。

 突然見知らぬ意識のない誰かを連れてきたと思えば、何の説明もないまま布団に寝かせて看病していれば誰だって怒るだろう。だから大地は言い訳をしない。たとえ妹に突き刺さるような視線を向けられようと。


「……てたなら、教えてくれればよかったのに」

「え?」

「でも普通は言わないよね、ごめん。わたし荷解きの途中だから戻るね」


 怒っていたと思えばブツブツと何事か呟くと、一人納得して部屋を出て行ってしまった生に、大地は困惑しながら見送るしかなかった。

 しばらく生の去って行った方を眺めていた大地に呆れたような声が掛った。


「お前は馬鹿か?」


 もちろんこの部屋にいるのは大地以外には一人しかいないので、自ずと答えは少年に向けられた。起き上がろうとする少年は少し顔色が悪く、慌てて大地は彼を布団へと戻す。


「俺が悪魔だってことはもう忘れたのか?」

「覚えてるよ、あんだけ脅かされて忘れるわけないだろ」

「だとしたら、やっぱりお前は馬鹿だな」


 彼の返しに言い返せないのは大地自身も馬鹿な事をしている自覚があるからか。しかし見た目人間と変わらない少年が倒れて見て見ぬフリを出来るだろうか、と心の中で言い訳をする。

 だからといって何も考えていなかったわけではない。あの部屋の件で少年が悪魔、人間ではないということを認めてしまった大地は救急車を呼ばず、家で看病することにしたのだ。もちろん少年が目覚めた時に倒れる前の様な事になったらどうしよう等と考えていたりもしたが、結局良い案が浮かぶ事もなく少年は目覚めてしまったわけだが。

 しかし今大地が思うのは恐怖よりも心配の気持ちだった。


「お前、大丈夫なのか?」

「うるせぇ、お人好し馬鹿」

「けど……」

「少し黙ってろ、眠れねぇだろ」


 目を閉じた少年にそれ以上言い募る事は出来ず、大地は口を閉ざすしかなかった。眠ることで少しでも良くなればいい、今はそう思うしかなかった。



 「あぁ、わかった」と大地は電話を切ると、台所にいる生に声を掛ける。


「母さん今日は帰って来れないってさ」

「今日も、でしょ」


 少し機嫌の悪そうに言った生に大地は苦笑いを浮かべる。

 雑誌記者をしている母親はよく遠方まで取材に行くことが多く、家に帰って来ない時の方が多い。考古学者である父親も海外で発掘調査などをしていて年に一度帰ってくるかどうかだ。もう突然帰って来れなくなる事には慣れた、とは言いつつどこか落ち込んだ様子を見せる生に、普段はダメ親呼ばわりしていても親が帰ってくる事を楽しみにしている事が分かって大地は笑みを零した。


「じゃあ、今日の夕飯は二人分だね」

「あぁ……いや、あいつの分も」

「……あの人、食べれるの?」

「え? ……あぁ、体調悪そうだったしな。聞いてくるよ」


 一瞬生の疑問にドキリとした。相手が悪魔だから聞かれたと思った大地だったが、生には何も言っていない事を思い出して、体調の事を言っているのだと気付いて頷いた。それと同時に、悪魔である少年が人間と同じような食事をするかどうか分からない事に気付いた大地は、生に聞きに行くと言って、少年の眠る部屋へと足を向けた。



 一応声を掛けてから襖を開けると部屋はもぬけの殻で、大地は乱雑に置かれた掛け布団を拾い上げた。


「出て行ったのか? ……いや、でも」


 いくら人外だからといっても数時間で体調が改善したとも思えず、大地は少年を探しに広い家を歩き回った。

 中々見つからず、やっぱり出て行ったのかと思い始めた頃、その姿を見つけた。少年と出会った、開かずの間だった部屋の前にそっと佇んでいた。

 今は普通に開く襖は閉じられ、目を閉じてその襖に当てている少年の手は淡い光を放っていた。幻想的なその姿に、声を掛けようとした事も忘れて大地は息を呑んだ。数秒だっただろう。大地には数分に感じられたが、きっとそう長くは無い。少年が放つ光は無くなり、その目を開いた。


「この札はいつから貼られていた?」


 目線を襖から離さずに少年は問う。チラリとも視線を寄こさなかった少年に、自分がいることに気付いていないと思っていた大地は驚きつつ答えを返す。


「さぁな。俺たちは今日引っ越して来たばかりだし、この家はずっと空き家だったみたいだからな」

「……そうか」


 特に答えが返ってくるとは期待していなかったのか落胆は無く、ただ言葉通りそうか、と頷くだけだった。その初めに会った時とは違う雰囲気に何と声をかければいいか迷って、結局ありきたりな言葉を掛ける。


「ところで体調は良くなったのか?」

「……多少はな。そもそもただの魔力切れだ」


 また誤魔化されるか、無視されるか。どちらにしても返事はしてもらえないだろうと思っていた大地は答えが返ってきたことに驚いた。そして少しではあっても良くなったことにほっとしつつ、ファンタジーな単語が出てきた事に大地は眉を寄せた。先程の事といい、少年が悪魔というのを信じている時点で今更であるが。


「魔力切れ?」

「魔力は俺ら悪魔の動力源だ。それが無くなれば身体に支障を来す。まぁ、ガソリンの無くなった車みたいなもんだ」

「無くなったら動けなくなるってことか。大丈夫なのか?」

「睡眠や食事で多少は回復する。問題ねぇよ」

「そうか。なら、お前も夕飯食べるか?」


 会話が続いたことに少し楽観視していたらしい。大地は襖から目を離さなかった少年がこちらを向いて呆れたように溜息を吐いた事に考えが甘かったと思い知る。

 全快とはいかなくとも少しは体調が回復した少年が何を仕出かすかは分からない。鋭い視線を向けてくる少年に大地はタラリと背中に冷や汗を流す。


「それ以外にも魂を喰うっていう手もあるんだが、どうする?」


 ニタリと笑った少年に大地は逃げ出したい衝動に駆られたが、それに反するように身体は全く動かない。

 殺される、と大地は恐怖に目を閉じた。しかしいくら経っても何の衝撃も襲って来ない事に不思議に思い始めた時だった。


「あー、やめだやめ。せっかく回復した力をおめぇみたいな馬鹿に使うのはもったいねぇ」


 突然そう言って緊迫とした空気を霧散させると、少年は大地の横を通り過ぎて行った。それに慌てて声を掛ける。


「え、ちょ、どこ行くんだ?」

「あ? 夕飯食うんじゃないのかよ?」


 大地の問い掛けに立ち止まって振り返った少年が言った言葉を数秒遅れて理解すると、単純だろうと何だろうと、恐怖よりも嬉しさが勝ってしまった大地は笑顔を浮かべて彼を追いかけた。



 ほとんど調理を生に任せてしまったざる蕎麦が食卓に並ぶ。

 今日は掃除や荷解きで食材を買ってくる余裕はなく、そう想定もしていたことから夕飯は簡単に調理できる蕎麦をあらかじめ買っていた。そうめんでも良かったかもしれないが、引っ越しと言えば蕎麦だろうという思考の元、決定された。

 箸を手に取りさぁ食べよう、とした時ふと少年は箸を使えるのだろうか、という疑問が浮かび、大地は隣に座る彼に視線を向けた。

 そこにはお手本の様な箸使いをする少年がズルズルと蕎麦を啜っていた。


「何だ?」

「いや、箸使い上手いな」

「……教えた奴がキッチリしてただけだ」


 特に問題はないようなので大地も蕎麦を食べようと箸を伸ばした時、数時間前に経験した視線を感じた。蕎麦を啜りながら器用にこちらを見つめる生の姿に、そろそろ事情を説明した方が良いだろうかと大地は考える。しかし何と説明した事やら、と頭を悩ます。


「あ~……えっと、生、こいつは……」

「大丈夫、言いにくい事なら聞かないよ。けど名前くらいは聞いてもいい?」


 言い淀んでいた大地に生は訳知り顔でそう言った。確かに言いにくい事であるし、生の言は有り難い事ではあったが、大地には何故彼女がこうも協力的なのか分からず首を傾げる。不思議には思いつつも、こちらの事情を説明できない大地にそれを尋ねる事は出来ず、こちらの回答を待っている生に少年の名前を告げようと口を開いた。


「こいつは……」


 言い掛けて大地は止まった。思い返せど、大地は少年の名前を思い出せなかった。それはそうだろう、大地は少年の名前を聞いてなどいなかったのだから。


「……お前、名前は? 無いってことはないだろ?」

「…………」


 押し黙る少年に悪魔に名前はないらしい、と結論付けた大地は頭を切り替え生になんて言い訳をしようか考え始めた。しかし何事か呟いた少年に大地は思考を止め、耳を傾ける。


「……言いたくねぇ」

「言いたくないってなぁ……」

「何か理由があるんだよ、お兄ちゃん。……でも名前が無いと呼びにくいね」

「別に問題はねぇだろ。すぐに出て行くしな」

「すぐにって言ったって、名前は必要だろ」

「今回は特別だ。これ以上お前らと馴れ合うつもりはねぇ」


 この話は終わりだ、とでも言う様に止まっていた食事を再開し始めた少年に大地たちは何も言えなかった。



 あれから特に会話もなく静かな食事を終えると、少年は居間を出て行った。すぐに出て行くと言っても今では無いらしく、家から出ることはなかったが、声を掛けようにも大地たちを寄せ付けようとしないオーラを放っていた事もあり、ただ見送ることしか出来なかった。

 ザーザーと水が流れる音だけが響く。無言で大地と生は食器を洗う。いつもなら楽しい会話が、無くても今の様にどんより重い空気は流れていない。


「……生」

「……お兄ちゃん」


 ほとんど同時に互いを呼び合う。それに驚いて顔を見合わせると、兄妹だからなのか相手の言いたい事を察して笑い合った。


「後はわたしに任せて」

「あぁ、頼んだ」


 手をタオルで拭うと、大地は生に後片付けを任せて居間を出た。もちろん向かう先は悪魔の少年の元だ。



 それは何となくだった。特に探しまわることもなく、初めからそこを目指していたかのように大地は少年の元に辿り着いた。雨戸はなく、窓ガラスも割れて開けっぱなしの縁側に座り込んで少年は空を見上げていた。


「……何の用だ?」


 振り返る事なく拒絶の姿勢を隠しもしない声音に少し怯んだ大地だったが、生に後片付けを任せた手前、何の成果もなく戻ることは出来ない、と一歩踏み込む。


「いつまでここに居るんだ?」

「二、三日もすりゃあ出てくさ。お前らもいつまでも悪魔が家にいりゃあ嫌だろうしな」

「そういうつもりで言ったんじゃない! それにお前の方が先にここに住んでたのに、俺たちが住む事になったからって追い出しはしないさ」

「お前はどこまで馬鹿なんだ? 先に住んでたっつっても、俺は勝手に住みついてただけだ。追い出されて当然だろ」


 確かに少年の言葉は間違っていない。大地も彼でなければ、すぐに追い出すことはしなくとも出て行ってもらうだろう。なら何故ここまで彼を引きとめているのだろうか。大地の頭を過るのは、あの部屋の前で佇む少年だ。


「……俺にはお前がここを出て行きたくない様に見える」

「そりゃ新しい住処を見つけなきゃならなくなったんだから当然だろ」

「だったら俺たちが出て行かなくて良いって言ってるのに出ていく必要はないだろ」


 やはりそれが本当の理由ではなかったのか、少年は大地の言葉に押し黙る。しばらくの沈黙の後、溜息と共に肯定の言葉が返る。


「あぁそうだよ、この家から出て行きたくない理由がある。だからと言って人間と一緒に住むつもりもねぇよ。どうしても出て行くなって言うなら、お前らが出て行くか――――死ね」


 スッと立ち上がって振り返った少年を見た瞬間、大地は動けなくなった。悪寒でガクガクと震えて多量の脂汗が浮かぶ。彼が悪魔だという事は分かっていても、見た目が人と変わらぬ所為かどうにも警戒心が長続きしない。だが少年がこうして人外の力を見せれば、畏怖し怯える。

 しかし大地はその時恐怖を感じなかった。身体は本能からか震えたままだったが心は微塵も怯えてはいなかった。少年が大地を殺そうとしている事が本気なのは分かっていた。同時に彼が殺したくないと思っている事も感じていた。ここで「もう引き止めないから殺さないでくれ」とでも言えば彼はきっと殺しはしないだろう。何故分かるのか、それともただの想像か。どちらにしても大地はその言葉を言うつもりはなかった。代わりに違う言葉を少年に送る。


「何に怯えてるのかは知らないが、俺はそんな脅しには引っかからないぞ」


 震える身体で言葉を紡ぐのは大変であったが、何とか最期まで言い切った。相手を煽っているようにしか聞こえないセリフだったが、こちらへ近づいていた少年の足が止まったことから何かしら彼に伝わったのだろう。

 それを確認した後、緊張状態が続く身体の限界がきたらしく、視界がぼやけたと思った直後、大地はバタリと倒れ伏した。

 残された少年はそれを揺れる瞳で見つめていた。



 日溜まりにいるかの様なポカポカとした暖かさを胸に感じて、大地はパチリと瞼を開けた。初めに見えたのは月だった。否、これは月の光で反射してキラキラと輝く髪だ。その下にある顔は無表情に見えて、どこか不機嫌な表情に大地は見えた。


「殺そうとしてる相手を余計に煽るなんて、どこまで馬鹿なんだお前は」

「……けど死んでないってことは、お前には煽る言葉じゃなかったってことだろ?」

「……脅しであったことは認める。お前が逃げたり命乞いをしてこねぇから焦ってただろうが、俺が怯えてたなんてことは絶対にねぇ。絶対に、だ」

「そこまで否定しなくてもいいだろ。俺がそう思っただけなんだから」

「例えお前一人だけだろうと俺が怯えてたなんて思われんのは心外だ」

「あーもう、わかったよ。怯えてない怯えてない。で、どうするんだ?」


 頑なに譲らない少年に面倒臭くなった大地は軽く頷いて流すと、色々あって忘れ去られていた本題に戻る。尋ねられた少年はあれだけ動かしていた口を閉じて押し黙ると、しばらく間を開けてから顔を背けてぼそぼそと呟いた。だがそれでは聞き取れなかった大地が聞き返すと、今度は少し大きく、だがどこか頼りない答えが返る。


「……しばらく世話になる。だが、ここからはそのうち出て行く」

「うん、お前が本当に出て行きたいって言うなら止めない。けど、俺たちに気を使って出て行くってならまた止めるからな」

「あぁ」


 お互い落とし所を見つけ、話は付いたと大地はゆっくりと立ち上がって伸びをする。新しい家に来て掃除をしたり悪魔と相対したりと色々あり、疲労が溜まっていたはずなのだが、何故か気絶する前よりも体調の良い身体に首を傾げながら空を見上げた。夜空に浮かぶ少し欠けた月は数日もすれば綺麗な満月になるだろう。


「そういや、お前の名前を聞く前に俺も名乗って無かったよな……俺は――」

「言うな」

「え? お前の名前はもう聞かないし、俺の名前だぞ?」


 名乗ろうとした大地を遮って止めた少年は、敵意とはまた違った鋭い視線を大地に向けていた。

 自身の名を言おうとしないのは何かしら理由があるからだろうと無理に聞き出すつもりはもう無かったが、自分にすら名乗らせない事には流石に意味が分からず大地は少年に問うた。しかし中々答えを返さない少年にしつこく問いただすと、いい加減鬱陶しくなったのか、固く閉ざした口を開く。


「……理由を話せば多少は黙るか」

「何だよ、俺が口煩いみたいに」

「自覚がねぇのか? 馬鹿」

「馬鹿呼ばわりされるなら勝手に名乗るぞ!」

「だから今から説明してやるって言ってんだろ! 少し黙っとけ!」


 納得はいかなかったが、このままでは話が進まないと思い直し、大地は仕方なしに押し黙ると続きを促す。それにやっと黙ったか、という様に疲れた顔で溜息を吐く少年に苛立ちを抱いた大地だったが、いつまでも話が進まないとやっぱり言うのやめたと言い出しかねないため、拳を握りしめるだけに留めた。

 そんな大地に気付いて鼻で笑った事に、やっぱり殴ってやろうかと考え始めたが、話し始める少年に何とか怒りを収める。


「……悪魔に名前を名乗るって事は契約をするってことだ」

「契約って?」

「人間の願いを叶える代わりに、その人間の魂を貰う契約だ」

「ん? ……お前さっき俺の魂喰おうとしてなかったか?」

「そういうルールがあるっつーだけでバレなきゃお咎めもなしだ」


 バレなければいいといういい加減な悪魔にはルールすら無用であった。なら何で守られもしないルールがあるんだ、と呆れる大地に少年は平然とこう言う。


「バレずに人間から大量の魂を取ることは出来ねぇだろ」


 人間を殺したいのか殺したくないのか、よく分からない理論に顔を引き攣らせる大地だったが、ふと疑問が浮かんだ。少年には何度殺されそうになったか知れない大地だったが、今もこうして生きている。それは少年の気紛れなのか、それとも――。


「でもだったら何でさっき魔力切れだってのに俺と契約しようと思わなかったんだ?」

「願いを叶えんのだって魔力がいるんだ。それに契約が切れるまで契約者の傍を離れる事が出来ねぇ。……おめぇと契約したらここを出て行けなくなりそうだからな」

「なんだ、人間を殺したくなかったからだと思ったんだけどな」

「なっ……んな訳ねぇだろ!」


 意表を突かれた様に驚いた少年はすぐさま否定の言葉を口にするが、その白い肌には赤みが差していた。それが本気で怒っているからなのか、図星を指されてなのかは大地には分からなかったが、出来る事ならば図星であってほしいと願うのだった。




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