憑依
家を飛び出した大地は、何処へ向かうか、と悩む事は無かった。視線の先には待っていたと言わんばかりに少女が立っており、大地が認識をするとすぐにその身体は光の粒子となって消え、その場には青白い光が残った。その少女だった光は、こっちだ、という様に大地を導く。
光を追って暫く。街の喧騒が聞こえるか聞こえないかという所で、大地は林道の入り口を見つけた。走り通しで息の切れていた大地は、そこで一度呼吸を整える。
「ふー……、この先か?」
漂う光に問い掛けた。もちろん返事は無いが、大地には頷いた様な気がした。
半ば無理やり借りてきた破魔刀を握り締め、森へ続く林道へ入ろうとした時だった。ガサリと草を分ける音に、警戒して、すぐにでも刀を鞘から抜きされる様に柄に手を掛けるが、今更ながらに震え出した手に刀がカチャカチャと鳴る。
落ち着け落ち着け、と自分に言い聞かせるように心で唱える大地の目の前に、そいつは姿を現した。
「…………なんだ、たぬきか」
ほっとして力んだ身体が緩んで刀を支えに片膝を着いた。勇み出てきた割に情けない自身に、自嘲するように笑うと立ち上がった。恐怖が無くなった訳ではない。それは未だ震える手を見れば明らかだ。だが、大地にはその恐怖が足を止める理由にはならない。
「……生と一緒にあの馬鹿を連れて帰らないとな」
気合いを入れて進み出そうとした大地の耳に、またもや草を分ける音が聞こえてきた。同じ様に柄に手を掛ける。震えが止まる事は無いが、先程より心は落ち着いていた。
さぁ、来るなら来い、と待ち構える。
「っ、……生!?」
「……お兄ちゃん……?」
「良かった、無事だったんだな」
「……うん。でも……サムさんが」
サマエルに捕らえられていたはずの生の姿に喜ぶのも束の間、続けられた生の言葉に大地は表情を引き締めた。涙の浮かぶ生の姿を見れば、何があったかは大体察せられる。
大地は生に家に帰る様に言うと森へ向かって走った。生が戻ってきた今、態々サマエルの元へ向かうなど死に逝く様なものだが、生が無事に戻って来られたのはサムによって齎された事である以上、より強く大地は思う。
“サムを連れて帰る”。
恐怖に震えていた手は不思議と今は無く、サマエルにだって勝てる様な気がした。前方に炎の光を見つけると、大地は息を潜めながらゆっくりと進む。相手に気取られないように木の陰に隠れて様子を窺えば、サマエルの炎蛇に邪魔されながらも必死に攻撃を仕掛けようとするサムの姿があった。もっと一方的なものを想像していた大地は、意外にも善戦しているサムに驚き、そしてその戦う姿に魅入った。
だが、サマエルに食らいついていても、これといった一撃は入れられていないサムに勝利は難しい。素人の大地でさえそれはわかるのだ。実際に戦っているサムがそれを分からないはずがない。
一歩踏み込んだサムの空気が変わる。襲い掛かる炎蛇をそのままに仕掛ける、と思った矢先にサムの体が崩れ落ちた。そのまま動かなくなったサムは、止めを刺そうとするサマエルを睨みつける。
「……じゃあな、歴代最強のサタン」
サマエルの手から炎が燃え上がる。絶望的な状況だ。だが、サムはその顔に不敵な笑みを浮かべた。
「――――いや、まだだ」
「何を……っ!?」
最期の負け惜しみだろうと取り合わなかったサマエルは、背後に感じた気配に驚き、振り返ったと同時に右肩に痛みが走った。痛みに片目を瞑りつつも、もう片方でしっかりとその姿を確認する。
そこにはサマエルの肩を斬ったであろう刀を手にした大地がいた。隠れて様子を窺っていたものの、流石にサムを殺されるとなれば、あれこれ考える暇なく体が飛び出していたのだろう。今になって呆然としている大地と、自身の失態に悪態を吐きながらサマエルは二人から距離を取る。
人間の大地と瀕死のサム相手にサマエルが遅れを取る事は無いだろうが、元が下級悪魔だった事が影響してか、彼を慎重にさせていた。だが肩を斬られたのは、その慎重さが原因とも言える。サムを警戒するあまり、大地の気配を見逃してしまっていた。
その事に気付いているのかいないのか、サマエルは肩の傷に治癒魔法をかける。そんなサマエルから視線を外さずに、大地はサムの容体を訊ねる。
「大丈夫か?」
「……何で出てきた」
「それは、……サムなら言わなくても分かるだろ?」
「……あぁそうだな。ったく、お前が出てくる前に片付けようとしたんだがな……魔力残量を見誤ったか」
「その事なんだけどさ……俺に良い考えがある」
「期待はしてねぇが、一応聞いてやる。何だ?」
この状況を抜け出せる手は限られているし、その限られた中でも確実に助かると言えるものは無い。だからこそサムは期待していなかった。平凡な高校生である大地に良い案が浮かぶはずがない、と。しかし意外にも大地の考えは良案であった。だが問題もある。それはこの場にいる人間が大地だという事だった。助かる可能性の高い良案だというのに、この場にいる人間が大地であるがために、サムは即頷く事が出来ない。
その時だった。肩の治癒をしていたサマエルが、唸るような声を上げて大地を睨みつける。
「……テメー」
意味が分からず訝しげな顔をする大地に、いち早くサマエルの肩を見て理解したサムが大地の持つ刀を指摘する。
大地の持つ刀。つまりエヴァから借り受けた破魔刀だ。破魔というだけあって普通の刀と違い、魔の者には強く威力を発揮する。弱い者ならば斬られただけで消滅する事もあるが、サマエルには傷が癒えないという呪いとなった様だ。
その程度と言えばその程度だが、あの傷では右腕は使い物にならない事を考えれば十分威力を発揮していると言えるだろう。
得てせず大地たちに追い風となった状況にサムは考える。
「……短時間なら大丈夫か」
「え?」
「お前の案にのってやる。だが五分だ。それ以上はお前の身が危ない」
「それってどういう……」
意味を尋ねようとした大地だったが、いくら右腕が使えなくなったとはいえ、まだまだ油断ならないサマエルが動き始めれば、口を閉じるしかない。
取り敢えず、自身の案を使うと言うなら、今はそれに集中すべきだろうと思考を入れ替える。
「提案しといてなんだけど、俺はやり方知らないぞ」
「問題ねぇ。俺もやった事はねぇが、やり方はわかる。取り敢えず動くなよ」
そう言うとサムは大地の背に手を当てると、そのままサムは砂粒の様な光を残して消えた。相対するサマエルは、突然倒す相手が消えて驚くも、残った大地の黄金に光る目を見て笑った。それに返す様に大地も笑みを浮かべるが、どこか違和感を催す。
『流石に分かるか。……まぁ、分かって無くても説明してやる時間はねぇけどな』
「はっ……馬鹿にすんなよ、サタン」
姿は確かに大地の筈だというのに、中身は完全にサムであった。それというのも大地の案というのが、まさにこれ。あの本に書かれてあった“人間の体に悪魔を憑依させて力を得る”を応用したものだった。
肉体を持たない分、魔力を余分に使える事がこれの利点であるが、憑依する人間に負担が掛かるという問題もある。乗っ取りではないので、普通の人間ならば多少疲れが残る程度であろうが、大地にはそれとは別の問題がある。
境目である大地は、憑依されたことによって人で無くなる可能がある。しかしこちらに追い風が吹いている状況でそれを使わない手は無い。だからサムは大地に影響が少ない様に五分という短い時間を決めて憑依することにした。
『そんじゃあ、とっとと始めっか』
五分を過ぎる事が出来ない以上、倒すもしくは戦闘不能までには追い込みたいサムは、時間が勿体無いという様にサマエルに突っ込んで行った。
身体は人間の身でも悪魔が憑依したその身体はサマエルの動きにもついていける。そして癒えない傷を付ける事だけではなく、サマエルの魔法すら消し飛ばす事の出来る破魔刀があることで、魔力を攻撃魔法ではなく機動力に使う事が出来、スピードは今のサムの方が速いと言えた。
それでもサマエルはしぶとく避けていたが、刀身に当たる事が出来ない分、徐々に追い詰められていき、その身体には切り傷が増えていく。
そして遂にサムはサマエルの肩から脇腹まで大きく袈裟懸けに斬り伏せた。あまり深くは切れなかったようだが、胸を押さえて荒い呼吸を繰り返すサマエルは虫の息と言えた。
これならば余裕で時間内に倒す事が出来る。そう思ったサムの耳が微かな声を拾った。それは逃がしたはずの……。
「……お兄、ちゃん……?」
『っ!? チッ、何だってこんな時に!』
帰れ、と言われても帰り道は分からず、兄はサムの元へ向かって行ってしまった。心配だったというのもあるだろうが、少し前の恐ろしさを忘れて、兄がいるから大丈夫だろう、という安心感に生はこの場に足を運んでしまった。
そしてそれを追い込まれているサマエルが目を付けないはずがなかった。ボロボロの体ではあるが、未だ魔力を多量に保持しているサマエルは、生に向かって今までの比では無い攻撃魔法を放った。サマエルから生み出された炎は、巨大な龍を模した炎に姿を変え生に迫る。
あれは流石に破魔刀でも消し飛ばす事は出来ないだろう。助け出すにしても今の状態ならスピードは出せるが、生だけでなく大地まで危険に晒す事になる。だからと言って大地の体から抜け出し生を助けに行けばスピードは衰え、生を抱えて安全圏に避ける事は出来ない。
全ての可能性を考えて最善の策を編み出したサムは、大地の体から抜け出して生を庇う様に炎龍の前に立ち塞がると、全力で防御魔法を使った。
サムの作り出した光の盾に炎龍がぶつかり拮抗する。しかし炎龍の方が僅かに強いのか、じりじりと押してくる。それに負けじと雄叫びを上げるサムの気迫に今度は炎龍が押され始める。段々と力が弱くなっていく炎龍に、ピキッと罅の入る盾。もう少し持ってくれと願いながらサムは、襲う眠気に耐えながら魔力を注いだ。
ピキピキと大きな罅が入り、もう駄目だ、と思ったと同時に力尽きた様に炎龍が姿を消し、それに遅れてパキンと音を立てて盾が砕けた。
何とか炎龍の攻撃を凌いだサムだったが、魔力切れにより意識が朦朧としていた。このまま眠りたいと身体が訴えていたが、サマエルを討ち果たすまで倒れられないというように、気力で以って意識を保っていた。
そんなサムの努力を嘲笑うかの様に、声を上げて大地が笑った。
「……なっ!?」
『こいつの体を抜け出したのは失敗だったな、サタン』
そう話すのは大地――否、大地の体を乗っ取ったサマエルだった。
炎龍の攻撃を受けるのにもしもの事があっては、とサムは大地の体を抜けたのだったが、それが徒となってしまった。優位だった状況が一気に劣性へ戻り、さらには人質と武器まで与えてしまった状況にサムは初めて苦い顔をする。
今の自身には大地を助けるどころか、後ろの生さえ守る事は出来ないだろう。そう悲観するサムの耳に届くのは大地の声で話すサマエル。だが、もうサムには彼の話は頭に入ってはこない。ただ絶望に暮れる。
サマエルは動く様子の無いサムに近づくと、今までのお返しだ、と言わんばかりに刀を振り上げた。生がその様に目を閉じる。
しかし、いつまで経っても刀が振り下ろされる気配はなかった。呆然と見上げたサムの目には、自身も驚きながら刀を持つ手を震わせるサマエルがいた。振り下ろそうとも止めようとも取れるその動作に困惑するサムを置いて、サマエルは刀を手放した。
それにまさか、と目を見張ったサムは、苦しそうに顔を歪めるサマエルの奥底に沈む光を見遣った。
『……っ、テメー……やめ――』
胸を押さえ苦しむサマエルが内に向かって憎悪を向けるが、相手は関係ないとばかりに這い上がり、言葉が途切れた瞬間、電源が切れた様にピタリと動かなくなった。かと思えば、すぐにばっと顔を上げた彼は――
「俺の身体、返して貰ったぜ」
――正真正銘、大地だった。
サムの背後で生が涙ぐむのが分かる。まさか大地が自力で戻ってくるとは思わなかったが、戻ってきた事は喜ばしい。だが、サムはまだ安心出来なかった。何故なら、大地の身体には未だサマエルが入り込んだままだからだ。
憑依なら問題ない、そもそも憑依は長時間取り憑く事が出来ないからだ。だが、サマエルがしているのは乗っ取りだ。一つの身体には一つの魂しか入れる事は出来ない。では二つある場合は? それはどちらか強い魂がもう一つの魂を喰い殺すのだ。
取り返した身体でいつものように微笑んだ大地は、すぐに眉間に皺を寄せた。
「……っ、何とか表に出てこれたけど……あんま長く持ちそうにないや。……サム」
「……何だ?」
内でサマエルが這い上がってくるのを押さえているのだろう、時たま苦しげに声を漏らす大地は真剣な表情でサムを見据える。それに嫌な予感に眉を寄せつつも答えるサム。
少しの迷いが顔に表れたが、一つ深く息を吐いた大地は、決心がついたのか口を開いた。
「俺の名は上園大地だ。……サム――――こいつごと俺を殺してくれ」
契約による繋がりを感じる。大地の魂が縛られる。……だが、まだ足りない。そう、そのために自分は今まで名乗っていなかったのだから。しかし、それでも動揺してしまった自分は、随分と昔のそれがトラウマとなっていたらしい、とサムは揺らめいた心を落ち着かせながら思った。
一つ、サムは悪魔との契約について大地に言っていなかった事がある。それは、互いの名前を名乗り合う事だ。と言っても、契約自体は人間が名前を告げるだけでいい。だが、人間が願いを告げる時、必ず契約した悪魔の名前を呼ばなければいけない。敢えてそれをサムが黙っていたのは、昔犯した過ちを繰り返したくないからだろう。
だから今回は大丈夫だ。そんな願いを聞かなくてもいい。そうサムが心を落ち着かせ、断ろうと口を開く前に、大地がそれを遮る。
「と、言おうと思ってたんだけど、やめた。俺はまだ死にたくない。……それに祟られたくないからな」
決意を固めて真剣な表情で告げたと思っていた願いは、告げた本人から取り下げられた。思わず呆気に取られたサムには、最後に小さく呟かれた意味を考える余裕はなかった。
そんなサムに珍しいものが見れた、とでも言う様に笑みを零すと、大地は地面に落ちたままの刀を拾い上げながら、更に驚きの言葉を発する。
「俺がサマエルを外に出すから、あとは頼んだぞ、サム……いや――――ルシファー」
「なっ!?」
告げられたのはサムの本来の名。何故その名を知っている。そうサム……否、ルシファーが問おうとしたその瞬間、大地は拾った刀を自身の胸に突き刺していた。
驚きに目を見開いたルシファーは、大地のその姿が過去の少女と重なって見えた。
* * *
目の前には見慣れた少女。その筈だ。だのに何故だか違和感を覚える俺に気付いたのか、少女が常にない笑みを見せた。悪辣で纏わりつく様なねっとりとした笑みは、彼女がする事などない。いや、出来ないだろう。
「っ、誰だ!?」
『誰だとは無愛想じゃな、サタンよ。否、わしからサタンの名を奪った侵略者よ』
「……前任か。だが、奪ったとは心外だな。テメェは民に見捨てられた。消耗するしかない戦いを強いるテメェに付いてく者は誰もいねぇよ」
『この、クソガキがあぁ!!』
怒りに任せて放たれた魔法は一瞬で掻き消せるほどに弱い。そも、この国に入るのに人間に取り憑かなければいけなかった時点で前任が俺に敵う筈がなかったのだ。
「テメェは俺には敵わない。とっととそいつから出て行け」
とんだ茶番だ。早々に終わらせてしまおう、と告げた言葉に前任はせせら笑う。不快感に苛つくそれに眉間に皺が寄る。しかし相手はさらに笑い声を大きくすると、勝ち誇った目でこちらを見た。
『ははっ、確かにおぬしは強い。だが、わしを傷付けられるか? この小娘の身体を』
「っ、てめ――」
『まぁ、待て。無抵抗でわしの攻撃を受ければ、返してやらん事もないぞ』
反抗は出来なかった。相手に言われた通りにするしか彼女を取り戻す手はなかった。思わず舌打ちが漏れるが、言われた通り無抵抗を貫く。普段なら届く事もないそれを受け続ける。弱いと言っても生身で受け続ければ、それなりに疲弊する。もう立っていられず膝を着いた時、やっと攻撃が止まった。
「……もう、終わりか……?」
強がって言ってはみたが、相手にはお見通しだろう。三日月の様に曲がった口元ですぐに分かる。そんな俺に前任はしゃがみ込んで絶望の言葉を吐く。
『そうじゃな……最後にこれを言って終わろうか。――――これは憑依ではない。もうおぬしの知る小娘は居らん。わしが乗っ取ってやったわ』
言われた言葉が分からなかった。いや分かる。分かるが、その言葉を理解などしたくなかった。前任の笑い声が耳にうるさく纏わりつく。うるさいうるさいうるさい。そんな話信じるか。
『はははっ、滑稽だな。こんな人間の小娘一人でサタンともあろう者が感情を乱すとは』
「……せ。かえせ、そいつを返せ!!」
咆哮して相手に掴み掛るも、中身は別でも体は彼女のままだ。殴る事も出来ず、ただ掴んだ胸倉を揺らす。そんな俺を前任は笑って見ているだけだ。
もう無理なのか、と諦めに手が緩んだその時だった。彼女の胸元からきらりと光る何かが飛び出した。
『なっ、十字架だと!? うぐっ……』
それはネックレスだった。確かに十字架ではあるが、ただのお洒落で信者が使うものに比べたら効果はお粗末なものだ。しかし苦しみ出した前任を見るに、そいつには効果的だったらしい。
昔に比べ、今の悪魔は十字架程度で倒されることは無い。ただ、目の前にいるのが時代遅れの昔の悪魔だっただけの事だ。だが、やはり効果は弱かったらしい。少し苦しむだけで消え去ることは無かった。無かったが。
『小娘がっ、まだ生きておったか……?!』
「……っ、ルシファー!」
「っ、お前……」
感じた気配は彼女のもの。まだ生きていた。戻ってきた。歓喜に沸く俺に、彼女は謝る。そんなものは後でいい。今はそいつを追いだす方が先決だ。だが、彼女は首を振って、もう一度謝罪の言葉を言うと、涙ながらに告げる。
「お願い、ルシファー。…………わたしを殺して」
「な、に……を……、まだ……まだ何とかなるだろ!?」
「ごめんなさい」
彼女のその言葉を最後に体が勝手に動き出す。契約の縛りによるものだろう。必死に反抗するも、体が止まる事は無く、俺の手が彼女の胸を貫いた。