蜘蛛
「まさか君と意外な所で会う事になるとはね……タイラント……」
「そう……私は友達の前じゃない所で会いたかった。
スパイダーボーイこと、ジェーン・アルベルトの兄さん。」
その少年の名前はジェーン・アルベルト、彼もクリーチャーの一人で、表向きはアメリカ生まれの留学生だ。
「しかし……生身でその強さか……。
君とは何度も対立しているけど……一人の人間の為に対立するのは初めてかもね……。」
「そう?」
「そうだよ……そして今、君は僕の食事の邪魔をしようとしている……。
対立するには充分な理由だよ……。
対立するなら……来なよ、本来の姿でさ……人間はそれを人為変態って呼んでるみたいだけど……。
僕はそれを変身っていう方が好きだよ……日曜日っぽいし……。」
「わかった、私は由香を守る……。」
エルフは人為変態を行い、狼の毛皮を顔以外の部員に纏って、人狼のような姿になった。
「さあ……始めようか……今日こそは君の本気を引き出させて見せるよ……」
ジェーンはゆっくりと屈んだ。
そして、蜘蛛の足のような物で地面を叩き、その反動で近くの壁に跳んだ。
飛んでる最中に、ジェーンの手から蜘蛛の巣のような糸が放出されて、それが壁にくっつき一つの蜘蛛の巣が出来てそこにジェーンは立つ。
「壁が多いこの場所……私不利かも?」
流石にこれは地の利がジェーンにあった。
蜘蛛の糸のような物を伝って壁を移動している。
ジェーンはエルフの見えないと思われる位置から飛び付き、蜘蛛の足のような物で突き刺しに来た。
「……えい!!」
彼女がそれを読んでいない訳がなかった、彼女は自らの聴覚でそれを察知、回避した。
「読んでたよ……君が避けるのをね!!」
「!!」
エルフは気付いたら蜘蛛の巣のようなネットに絡まっていた。
「エルフちゃん!?」
思わず由香は声をあげる。
「食材は黙ってて……僕たちクリーチャーの強さは変身中の能力に依存する……
僕の力は蜘蛛……君は忘れてたのかな……糸で捕縛出来ることを……?」
「くっ……」
ジェーンは蜘蛛の足のような物を一本使って、エルフの体を貫いた。
「ううぅっ!!」
エルフは痛みに耐えていた。
「さて……由香と言ったかな?
君を食わせてもらうよ……。」
「嫌ァあああああ!!」
由香は叫び声をあげていた、そしてジェーンが由香の体を掴もうとしたその時。
「!!?」
ジェーンは突然後ろから引っ張られて、付近の壁に叩きつけられた。
エルフを貫いたアームが引っ張られたのだ。
「ぐあっ!!」
「忘れたの?
怪物は生命力が強いって事……。」
「しまったな……僕も忘れてたよ……。」
「そう……。」
エルフの目付きが変わった、エルフは壁に叩きつけられたジェーンに近寄り、顔面を殴った。
一発、二発と次々と殴り付けた。
「うっ……ぐふっ!?」
痛みを感じている声をあげていようと、エルフは止まらない。
「由香を……私の出来たたった一人の人間の友達を食べようとした、これは報復……。」
「参った!!
これ以上その子を傷つけないから……これ以上は止めてくれ……!!」
「嫌だ……。」
エルフはジェーンの顔面を掴み、地面に何度も叩きつけて、それを気絶するまで続けた。
「エルフちゃん……凄い……。」
その後エルフ人為変態を解いては由香に近寄り、抱き締めた。
「ごめんね……。
ずっと黙ってて……。
私は由香が傷付くのが怖かった。」
「私こそ……ごめんなさい。
酷い事言っちゃって。」
彼女達は仲直りが出来た。
一方でこの一件を見ていた人物が居た。
「(ブラボーブラボー。
彼女の強さ、全力のあの子を食べるのも……一興かな?)」
その人物は、何かを抑えながら去っていった。
見ていた人物はロリコンなのか?