友人
「まさかエルフちゃんが、クリーチャーだったなんて……」
エルフの正体が、世間でクリーチャーとも怪物とも呼ばれる生命体だと言うことが、由香にバレてしまった。
「ごめん……」
「ふざけないでよっ!!」
由香はエルフの顔に思いっきりビンタをした、強靭な肉体に定評のある怪物の一体、エルフはビンタされたように首が動くが、痛みはなかった。
しかし、彼女の心は深く傷ついた。
「エルフちゃんが……人間を食ってる生物なんて!!
それを隠していたなんて最低だよ!!」
由香は走って逃げて行った。
それを見たエルフの目からは、涙が流れていた事に由香は気付かなかった。
「(私だって……人として生きたいよ、でも人間食わなきゃ寿命で死ぬ体で、どうやって人のように生きればいいの……
誰か教えてよ。)」
彼女はその場で動かず、ただ静かに泣いていた。
自分達の事を理解してくれる人間は居ない、だから素性を隠していたのだが……それがバレて友人を傷つけた、エルフはただ辛かった。
この一軒から翌日の事だった、いつものように学校に行くのだが、エルフは遅刻してしまった。
そして学校廊下に彼女は立たされるのだが何かに気付く。
「(由香が居ない?)」
そう、由香が学校に姿を見せなかった。
その翌日も、さらに翌日も。
彼女はあれ以来学校に姿を見せなかった、相当なショックを与えてしまった事を、エルフは悔やんでいた。
そして、あれから一週間くらいたった日の下校中の時刻だろうか。
事件は起こった。
それはエルフの帰り道にある、路地裏での出来事だ。
「い、嫌……誰か」
「おいおい……声は出すなよ?
……僕は今すごくお腹が空いている……」
由香は怪物に襲われていた、その怪物の特徴は、額に六つの赤い複眼のような物があり、肩甲骨の辺りから左右に二本ずつ、黒と黄色の縞模様の大きな蜘蛛の足のような物が生えていた。
「大きな声を出すなよ……?
……お前は今から俺の燃料になるんだ……。」
「ね、燃料?」
「そう、僕らクリーチャーを車とするなら……君たち人間はガソリン……わかるだろう?
僕は人間を食わないと生きられないんだ……だから、ごめんね……?」
その後少年は由香を咀嚼しようとしたその時。
一人の少女が二人の間に飛び込んできて、少年にとびひざげりをお見舞した。
「ぶげっ!?」
少年は吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた。
「由香は……誰にも食べさせない!」
「エルフ……ちゃん?
何で……あの時私、酷い事言っちゃったのに?」
「そんなの関係無い。
由香は私の……たった一人の友達だから!!」