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始期03

 体育館の裏には男子1人、女子2人がいる。


「イチヤ!私の体に触れてみせなさい!」


「はあ」


 なぜか勝負の内容はリネルの体に触れることだった。


「何を言ってるんだ?そんなこと誰でもできるじゃないか。わざわざ俺にやらせなくても。」


 あきれたように一夜は言ったが、リネルは本気のようだ。


「イチくん。多分彼女は大丈夫でしょ?いいんじゃない?」


「まあ、それは確認済みだが・・・」


「早くしなさい!」


 リネルが急かしてくるが、あまり気乗りがしない。


「何のためにこんな事するんだ」


「べつに!ただ、あんたの実力が見たいだけよ」


 ”こいつは何かを隠している”

 そう思えて仕方が無いのだ。


「わかったよ。・・・。ただし、条件だ。俺がギブアップしたらこの勝負は中断してくれ」


 リネルは少し考えて、了承してくれた。


「いいわ。じゃあ、こちらからも条件を出させてもらうわ」


「ああ」


「私が勝ったら”            ”良いわね?」


 少し考える仕草をしたが、飲んでやれない条件ではなかったので

 了解することにした。


「わかった。条件を飲もう」


「ありがとう。それじゃ始めるわよ」


 ルールはどんな手を使ってもいいからリネルの体に”手”で触れる事。


「ふぅ・・・。はああぁ!!」


 深く息をして地面を思い切り蹴り正面から突進する。


「甘い!」


 リネルは右手で軽々と一夜の頭を掴む。

 手が届きそうで届かない。


「チッ!」


 その瞬間足を蹴り上げ手を振り払い後方へと飛び間合いをとる。


「私の能力は、移動物操作(ベクトルキャッチ)。動いているものは私の見える所にあればどんなものでも制御出来るのよ。」


「説明どうも」


 ”移動物操作”視認しているものを制御する事の出来る能力。

 対象を自然界に存在するベクトルという概念から切り離し、操る事が出来る。

 聞いた事はあったが実際に見たのはこれが初めてだ。

 そこで一夜はある事に気づいた。


「お前、まさか、佐々木ノ原基地(ささきのはら)にいた”悪魔の猫(デモン・キャット)”か・・・?」


 一夜は驚愕(きょうがく)というよりも、焦りが顔に出ていると言ったところだ。

 構えていた拳には汗が(にじ)んでいる。


「あら、知ってるんじゃない。でも、その呼び方は好きじゃないのよね。さて、私が誰だかわかった事だし。降参しなさい、私には勝てないわ。」


 この都市の南に位置する佐々木ノ原のドイター基地にはたくさんの要人を暗殺してきた”猫”がいたというのを聞いた事がある。


「イチ君、この娘強いんでしょ。降参したら?」


 リミが心配そうに問いかけてくる。


「・・・」


 降参はしたくない。”あんな”条件を出されてしまったんだ。

 だが、一夜はこんな勝負のために能力を使う気は全く無かった。

 しかし、悪魔の猫が相手ではそうもいかなくなってきた。


「あなたも、能力を使ったらどう?」


 あっちから誘ってきた。


「残念だがそれは出来ない」


 一夜の能力はこんなところで使ったら学校が危ない。

 いつも使っている”得物(ぶき)”も持ち合わせていない。


「ん〜」

「・・・」


 リネルも困ったようにこっちを見てきた。


「あんた、やる気無いでしょ」


 人差し指をビシッとこちらに向けてくる。


「まあ。はい」


 一夜は素直に答えた。


「はぁ。わたしが馬鹿だったわ。だいたいなんで私がこんなこと・・・。とりあえず、今回は引き分けでいいわ」


「そうか。助かるよ」


「た・だ・し!さっきの条件は次までお預けよ」


 気に食わなかったようだがこの場は一応収まったようだ。

 今あの”条件”を飲む気は無かった。


「リネル。俺はこれから司令官直々の任務がある。同伴者はいても良いという事だが、付いてくるか?」


 今日行くところは佐々木ノ原にある工房だ。


「ん〜そうね。暇だし、付き合ってあげるわ」


 一緒に帰る人数が増えると理実も喜ぶだろう。

 というのもあった。


「そうか。リミ、今日は来るか?」


「うん。帰ってもする事無いし、行くよ。今日は部活も休みだし」


 一夜の後ろに立っていた理実はもう帰り支度が万端だ。


「それじゃ、行こう」


 こうして、三人は校門を出た。



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