一宿一飯の恩9
「ただいまー。ジェイクさんに通訳頼む。ありがとうと、買ってきたヤカンでお湯沸かすから茶はちょっと待ってくれって、あら。お客さんか?」
「おかえりなさいませ、カイト様」
「・・・おかえりなさい」
「ぱぁーぱっ」
わざわざ様子を見に来てくれたジェイクさんに買い物の手伝いをお願いし、二人とも両手に大荷物を抱えて家に帰ると、知らない美人さんがウイトをだっこして出迎えてくれた。
優しそうな人だ。サクラが苦虫を噛み潰したような表情だから、余計にそう思えるのかもしれない。
「わざわざ様子を見に来てくれたのに、買出しの案内までさせてごめんなさい。今お茶を淹れますのでお座りになって下さい」
「いえいえ。どうぞおかまいなく。某も帰宅する時間ですので、すぐにお暇いたします」
ジェイクは逃げ出した。
「面倒事なら大神官に口利きしてもらわんといかんから、ちょっと時間貰って説明しな。ウイトもちゃんと紹介してえし。あ、寝具は右のベッドルームに一つ、左に二つ運んどくぞ」
「そうね。ジェイクさんちょっとお話よろしいですか?」
「えっ、はい。もちろんです」
が、回り込まれた。逃がすかボケー。
寝具セットを運び込んで戻ると、すでに茶が用意されて湯気を立てている。
早すぎるとは思うが、魔法使いのやる事にいちいち驚いていたらキリがない。それ位には、俺もこの世界に慣れた。丸一日と数時間で。
「ほんで、ヤバイ話なのか?」
腕を伸ばしてだっこをせがむウイトを受け取る。前の住人が置いていったテーブルに座り、買ってきた木杯の茶を啜ると、仄かに甘い上品な味がした。
「ヤバイって言うか、前例がないの。まあ、紹介するわね。この腹黒が私の相棒、精霊ファル」
「腹黒とか酷いわサクラ。はじめまして皆さん、よろしくお願いします」
「カイトです。膝の上にいるのがウイト。あ、通訳頼むな」
ジェイクさんが「せせせせせ精霊」とか言いながらテンパっている。剣の実力が確かなのは立ち居振る舞いで分かる。愛嬌があるから多少の欠点があっても気にならない。買出し中は住人達に慕われているのをこの目で見たし、長い付き合いになりそうだから「ジェイクさん」と呼ぶ事にしたんだが、おっさんに戻したろかこの熊さん。
「ゴホン。ジェイク・カルバインです。雑事等ありましたら、いつでもお申し付けください」
「あーい、ういとぅー」
自己紹介のつもりなのか、背伸びして右手を振りながらウイトが笑う。
「かわい過ぎる罪で、撫で回しから頬ずりの刑に処する。裁判はいらねえっ」
「うきゃー。ぱぁぱー」
「話を続けてもよろしいかしら?」
「あ、はい」
「あい」
ウイトを抱き直して「お前の母ちゃんこええなあ」と耳打ちしたら、「ああん?」と凄まれた。




