表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/117

99.究極の選択

 早い方がいいだろうと、二人はすぐ花嫁に紅児(ホンアール)の叔父に会う旨を伝えに行った。花嫁は笑んでさっそく手配してくれた。

 そうは言ってももう夕方であるし、早くても謁見は明日の午後以降になるだろうことは二人にもわかっていた。

 夕食を終えると、紅夏(ホンシャー)は具体的に紅児の叔父に伝える内容を整理してくれた。二人の関係を正しく説明するにはやはり紅夏が伝えた方がいいだろう。紅児では伝えようとする前に叔父に遮られてしまう可能性も0ではない。もちろん叔父に反対されたからといってこの婚姻がなくなるわけではない。けれど少しでも理解してもらうよう努めないといけないと思うのだ。

 許せなくても、相手は身内なのだから。

 はるばる海の向こうから紅児を迎えにきてくれたのだから。

 叔父は唐への貿易についてほとんど携わっていなかったので四神信仰については詳しくない。どういう経緯で王城に来、紅夏と知り合ったのかは先に花嫁が説明してくれたようだが、結婚となると話は別だ。特に紅児はまだ未成年である。

 紅児だって、まさかこんな遠い地で伴侶に巡り合えるとは思っていなかった。

 それもすこぶる素敵な……。

 チラ、と紅夏を伺い頬を染める。暗紫紅色(ワインレッド)の長い髪に、健康的な滑らかな肌、黒曜石を思わせる瞳。こんな美丈夫が己を愛しているだなんてどうしても信じられない。

 客観的に見ると紅児の容姿はとてもかわいい。しかしこの国で暮らした3年で紅児は己の容姿がコンプレックスのようになってしまっていた。

 セレスト王国にはいろんな髪や肌の色をした人間がいるので全く気にならなかったが、この国の人々の容姿はほぼ同じ。黒髪に黄色を帯びた肌色、というのが一般的である。村でも大人たちはかなり紅児を気遣ってくれたが子供たちはそうはいかなかったし、たまに訪れる旅人はいぶかしげな視線を紅児に向けた。それ故に紅児は己の容姿に全く自信を持てなくなってしまっていた。

 そんな紅児を紅夏が愛しくてならないという風に見つめている。

 その視線は全然変わらなくて、それも紅児の心を溶かした要因の一つかもしれなかった。

 二人の唇が自然と重なろうとした時、扉を叩く音がした。

「紅児ー、お風呂に行きましょう~!」

 侍女たちの声だった。

 紅児ははっとして紅夏からその身を離そうとする。だが紅夏は逃がしてはくれなかった。

 そっと唇が重ねられすぐに離される。紅夏は苦笑した。

「全く……無粋な……」

 そう低く呟いて紅児を優しく離した。

「紅児ー?」

「……あ。はーい、今行きまーす!!」

 真っ赤になってしまっただろう頬に触れる。案の定熱を持っていた。どうしよう、と思いながら入浴の準備をし「行ってきます……」と紅夏に声をかけて室を出た。

「さ、行きましょ!」

 好奇心に満ちた視線に出迎えられ紅児は一瞬怯んだが、両腕を侍女たちにがっちり掴まれ文字通り浴場へ連行されてしまった。

 あのまま紅夏に押し倒されていればよかったのか。

 まるで究極の選択といえる状態に紅児はこっそりため息をついた。


 侍女たちの好奇心は留まるところを知らなかった。

 あけすけに「初めてってどんなかんじ?」とかもう聞かれ放題である。猥談なんて本当に困る物はない。

 紅児は侍女たちに囲まれて乞われるままにぽつりぽつりと答えた。いったい何の羞恥プレイだろう。

「はーーーっ! やっぱりそうなのね~」

「最初は痛いんだ? でも気持ちよくなるんでしょ?」

「花嫁様の時はすごかったわよね、あの血の量ときたら……」

「でもあれって一神につき一回だけみたいだし、毎晩のように過ごされてるんだから、やっぱりすっごく気持ちいいんじゃない?」

 侍女たちの猛攻の前で、紅児はただ真っ赤になってあうあうと口を開いたり閉じたりすることしかできない。

 気持ちいいというか、もうどうしたらいいかわからないというか……。

 そんな恥ずかしいことを世の女性たちは話し合ったりするものなのかと意識が遠くなりそうである。

「そういえば、紅夏様は紅児と結婚したのよね?」

「……はい」

 もうどうにでもしてくれという心境である。

「白雲様と陳さんとか、青藍様と延様は結婚されてないわよね」

 彼女たちは顔を見合わせて確認した。

 そういえば彼らが結婚したとは聞いた覚えがない。

「……そうしたら……朱雀様のお付きはどうなるのかしら?」

 紅児はあ、と顔を上げた。

「ええと、領地から一人来られるようなことを聞いています」

「え、本当!?」

「は、はい……」

「きゃーーーーーー!!」

「やだー、また目の保養が増えるのねッ!」

「いやーもう! 今度こそ玉の輿狙わなきゃーーー!」

「あんたが相手にされるわけないでしょっ!」

「お肌の手入れしてないーーー!」

 彼女たちの反応に紅児は茫然とした。確かに、一人増えるということはそういう可能性もないではない。

 ふふ、と紅児はやっと笑みを浮かべる。

 紅児がもし帰国してもみんな変わらず楽しく暮らしてくれるだろう。そう思ったら嬉しくなった。

 浴場での喧騒は、侍女頭に一喝されるまで続いた。

まー、女の子同士の猥談なんてえげつないもんです。

でも女の子同士の会話って好き! お風呂だとたまに胸揉ましてもらったりとか(ぉぃ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ