弁護士意見
「一つ目に対して意見を申します。親の代から贈賄を受けていたと検察は申しておりますが、親は親、子は子として裁かれるべきであります。ゆえに、この件については無罪」
ふむと裁判官が言う。
「二つ目に対して。反乱を企てたということでございますが、反乱とは、刑法第77条によって定義されております内乱罪のことでありましょう。これは、『国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者』ということになります。平たく申しましたら、憲法が定めておる国家の基本構造を破壊することが目的で暴動を起こしたもの、もしくは起こそうとしたものということであります。しかしながら、被告人はそのような企てをひとつもしたことはなく、これは同時に四つ目についての否定となります。すなわち、内乱目的での武器を集めたところはおろか、そもそも武器を集めたということすらないということであります」
裁判官はなにかメモを取っている。
「三つ目につきましては、メールや電話を盗聴したということは、プライバシーを著しく損害したことであります。ゆえに、これらは憲法違反の疑いが強いということとなります。そのために、これらはすべて証拠を排除していただきたいと思います」
ここで裁判官は片眉を上げた。
だが、何も言わずに、裁判官はそのまま24時間の休廷を宣告した。