検察意見
「では、続けよう」
裁判長の陸軍法務大佐が全員に告げる。
「この裁判の争点について整理したい。検察側、意見は」
「はい」
検察が立ちあがる。
それからは、流暢な答弁が続く。
なにせ、だいたいのあらすじは決まっているのだ。
分からないのは、裁判官たちの心情と、判決だ。
裁判官が検察からの意見を聞いたうえで、自らの意見をまとめて検察へ聞く。
「では、検察側の意見としては、次のようなことになるわけだな。ひとつ、被告人は親の代から中国共産党からの贈賄を受けていた。ふたつ、被告人は反乱を企てた。みっつ、被告人は内通者として閣議内容を全て流していた。よっつ、被告人は敵の武力を集めており本国の弱い地点を敵に流していた。そういうことでよろしいか」
「はい、そういうことです」
「なるほど。反乱罪については、高等裁判所の管轄となるため、本裁判所では争点としない。これについて異存は」
検察官が立ったままで裁判長へ返す。
「ありません」
それからやっと検察官は座った。
それを見届けてから、裁判長が弁護士へ話を振る。
「では、弁護人、それらに対する意見を」
「はい、裁判長」
弁護士が立ちあがった。