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第四章
まことの姿を見た瞬間、封じていた記憶がふっと滲んだ。
母の泣き顔。
抱きしめられた腕の温度。
許したわけでも、理解したわけでもない小さな歪み。
胸の奥が痛む。けれど、その奥にやわらかく溶ける何かがあった。
凪音は少しだけ息を漏らした。
「状況を説明してください。」
「あ、あの……じょ……きょう……?」
言葉が喉で折れる。
凪音は問いを変えた。
「眠れていますか?」
「……ね、眠れて……ます……。」
「警察の人とは、話せていますか?」
その瞬間、まことの肩が硬直した。
そして──
「……どうして僕は捕まっているのですか?」
空気が静かに冷えた。
「今日はここまでにしましょう。次にまた来ます。」
凪音は立ち上がり、部屋を出た。




