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第二章
捜査報告書の文字は淡々としていて、そこに“彼”が生きていた気配はひとつも残っていなかった。
深夜、女性を自宅へ連れ込む。
首を圧迫し、死亡。
現行犯逮捕。
ただ、そう書かれているだけ。
(……何が、引っかかる?)
凪音は指先で紙の端を押さえながら、供述の断片を追う。
「……名前……知らない。」
「嫌がったから……分からせないと。」
説明にならない説明。
それを「説明したつもり」でいる声。
そこに、言語と心のずれが見えた。
供述の途中で突然声を荒げた、ともある。
怒りか。
混乱か。
どれでもあり、どれでもないように思えた。
──まことの輪郭は、どこにも書かれていない。
その“空白”だけが、静かに揺れていた。




