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念願の

魔弾の朝は早かった。

今までの生活ではスマホのアラームで7時に目覚めていたが、農場で働き始めてから体には自然と夜明け前に目覚める癖がついていた。

今日は休暇を貰っていた為、昨夜屋台で買ったパンを自室で食しすぐに祈りの間へ向かった。

祈りの間では、年老いた男女7人が静かに祈っていた。

ーーやっぱり最近祈ってる人多いな…てかこっちでもお年寄りは朝早いのね。

30分程祈り、外に出てみると外はすっかり明るくなっていた。

なるべく人通りが少ないうちに、広場を抜けたかった魔弾はすぐに倉庫へ行きカラに荷車を借りて用意した荷物を積み込んだ。

昨日大工に会いに行った時に事情を話したところ、大工たちは喜んで手を貸してくれた。

流石は本業なだけあって、作りたい物の簡易的な図を紙に描いただけで、想像以上に良いものを作ってくれた。

魔弾は材料費と手間賃を払おうとしたが、大工たちは皆揃って受け取ろうとしなかった。

彼等が『タキリからふんだくってやるぞ!』と盛り上がっているのを見て、ここまで嫌われる理由が知りたくなった。

荷物を積みながら、タキリ様とは一体どういう人物なのかと考えているとまた一つ疑問が浮かんだ。

ーージンは何でタキリ様と会うんだ?そもそもレテで一番偉い人なのになんで会えるんだ?

そんな事を考えているうちに荷積みは終わり、トリカブトに向かって出発した。

広場にさしかかるとすれ違う人も増え、ほとんどの人が祈りの間へ入って行くのが見えた。

トリカブトに着くと仁はすでに用意を終えて、店の前で待機していた。

「ダン、おはよう。あれ?ザロは?」

「おはよう、見張り小屋で合流って昨日言ってたよ。」

「そうだっけ?もしかして俺昨日結構酔ってた?!」

「いや、そんな風には見えなかったよ?普通に会話してたし。」

二人は荷車を引きながらゆっくりと歩き出した。

「ジンてさー、何でタキリ様と仲良いの?」

「え?別に良くないよ?」

「そうなの?!なんか毎回タキリ様に相談とか交渉っぽい役してるから、ずっと気になってたんだよねー。」

「俺大陸からの依頼で毒とか作ったりしてるって言ったじゃん、それで大陸から材料仕入れたりもするんだけど、その時に許可が必要で結構な頻度で会わなきゃいけないってだけ。普通に知り合い程度?って感じだと思うよ。」

「でもすごくない?レテで一番偉い人なんでしょ?その人に意見出来るって事は認められてるって事でしょ?」

「あー!違う違う!俺が結構な額の寄付してるからだよ!公衆浴場の改築とか、広場の改築とかで寄付してるからだと思う!まぁ金づるって事!」

仁はまるで笑い話のように話していたが、魔弾のタキリへの印象は悪くなる一方だった。

「昨日知り合いの大工の所行った時も、みんな嫌っててさー…バルも嫌ってるからなんか俺あんまり良いイメージなくて…。」

「あーみんな嫌ってるよね。俺が港で働いてた時も、みんな嫌ってたわ。なんか押領っぽい事してるって噂!」

「マジか?!てかジンもしかして今も寄付してんの?」

「うん。でも今は祈りの間くらいしか寄付してないかな。大陸に持っていくお金貯めておきたいしね。」

「寄付かー…やっぱジンはすごいわ。俺自分の事だけで精一杯だわ。」

「でもダンも寄付してるじゃん。ヤギレースで!」

仁は笑いをこらえながら魔弾に言った。

「いや!まだトータルは負けて無いはず!」

牧場に近づくと二人は足を止め、少し休憩を取ることにした。

魔弾はディーを探してずっと呼び続けていたが、近寄ってくるヤギは居なかった。

「今日はいないのかな?いつも呼んだらすぐ来るのに…。」

魔弾は残念そうに呟き荷車を引き始めた。

見張り小屋に着くと、すでにザロは柵の近くで待機していた。

よく見るとザロの他に二人の男が、柵の土台を調べているように見えた。

「ザロ、二人は何してるの?」

仁がそれとなくザロに確認した。

「タキリ様の命令で柵の補修?らしい。石職人と鍛冶職人。」

職人と聞き、二人はすかさず職人達に挨拶をし自分たちの作業内容を伝えた。

二人の職人は、もうすぐ自分達の作業は終わるから手伝うとまで言ってくれた。

魔弾と仁は職人達の邪魔にならないように、後方で二人の作業を見ていた。

石職人は柵の太さを確認し土台の石の寸法を縄で測っていた。

鍛冶職人は即席で作った竃のようなもので、何かを煮込んでいる。

石職人の計測が終わると、鍛冶職人が煮込んだ液体を柵の刺さった土台の穴に流し込み始めた。

ーー何流してるんだろ?コンクリ?いや金属か?

仁も気になったのか鍛冶職人に質問した。

「それで穴塞いでるんですか?金属?」

「ああ、これは鉱石を溶かして流し込んで固めてるんだ。新しい土台ができるまでの三日なら問題なく耐えられるだろう。」

すると石職人が道具を片付けながら会話に入ってきた。

「そもそも、先代が土台を早く変えたほうが良いってずっと前から言ってたんだ。それをタキリがずっと無視してたからこんな状態になった。お前達もタキリからふんだくったほうがいいぞ!」

ーーマジか、タキリ本当にどうしようもねぇな。横領とか余裕でやってそうだわ。

鍛冶職人も石職人に同調した。

ーーハハッ、本格的に嫌われてんのな!

「こっちは終わったぞ、俺達は何をすればいい?」

魔弾と仁は荷車を柵の外へ運び、釘の刺さった板を柵の外側から抑え、中にいる職人達に革紐でくくりつけてもらった。

下段はうまく出来たが、中段より上の設置には、板と釘の重さで固定するのにかなりの時間を要した。

柵の補強を終え、満足した魔弾は余裕があればと鍛冶職人に金属の加工の話を聞かせてもらった。

前回使った金属を見せ、何とかこれを槍に加工出来ないか訊いてみた。

「多分これは専用の炉がないと溶かせないと思うぞ?切ったり、曲げたりくらいなら出来るかもしれねーが、形を変えるってんなら高温の炉が無いと無理だな。」

「切れますか?!半分に!」

「試しに切ってみるか?」

「お願いします!」

魔弾の目は完全に少年の目に戻っていた。

二人の会話を聞いていた石職人は手袋をはめ、竃を解体して新しく石を組み上げていった。

隙間を粘土で埋めながら円筒型の竃が出来上がると、鍛冶職人は中に物凄い勢いで燃える大量の石を入れ蓋をした。

筒には前後左右に計4つの穴が開いており、前後二つの穴は驚くことに金属がピッタリ入るサイズで、長い金属でも好きな位置を熱することが出来るような作りになっていた。

しばらく金属は熱され、竈から出てきた時は赤くなっていた。

鍛冶職人はすぐに金槌で熱された部分を叩き、厚みを薄くしていった。

それを何度か繰り返すと、今度は氷水を杓で掬ってかけた。

ーー本当だったら水に浸して冷やすんだろうけど、この長さじゃ無理か…

何度か水をかけると、今度は薄い部分を金槌で思い切り叩いた。

すると金属は折れ、魔弾の希望する長さになった。

「これでいいか?」

ーー槍ゲットー!!!!!!!

「ありがとうございます!!」

魔弾は全身全霊で二人の職人に感謝した。

「気にすんなよ、これくらい。」

そう言って職人二人は片付けを始めたので、魔弾は笑顔で二人を手伝った。

余程嬉しかったのか、魔弾はみんなでこれから広場に戻って食事をしようと言い出した。

ザロは見張り小屋で待機すると言って断ったので、四人で街へ戻ることになった。

「あとで差し入れ持ってくるよ」

「俺、串焼き。」

ザロは一緒に行きたかったのか、悔しそうに返事をした。

その時、サキの怒鳴り声が聞こえた。

「柵を開けろ!!」

傷だらけのサキが背負っているのは傷だらけのゴウ。

柵の手前にいた魔弾とザロはすぐに柵を開けて、二人を中へ誘導した。

サキの衣服についた血の量から結構な傷を負っているのはすぐわかった。

ゴウに至っては簡易的な止血はしてあったが、おそらく出血は続いており意識が無かった。

職人達が慌ててゴウを荷車に乗せ街へ戻ろうと提案してきた。

サキがゴウを荷車に乗せようとしていると、ザロがサキに確認した。

「親父は?」

サキは俯いて無言だった。

ザロはすぐに何かを察し柵の外へ飛び出して行った。

何故か魔弾も一緒に。

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