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狼の化け物二匹を討伐し、その余韻に浸っていた魔弾と仁は、この後訪れるであろう火葬タイムを心待ちにしていた。
ーーはよー!!火炎放射はよー!!
魔弾と仁の視線はサキに釘付けになっていた。
サキは二人の視線を全く気にせず、死んだ化け物に炎を放った。
魔弾と仁は、目を輝かせながら興奮していた。
サキは二人の視線に気付くと、冷たい視線を返した。
ーーえっ?まだ怒ってんの?
サキの態度に不満を覚えた魔弾は、ザロに近付き話しかけた。
「じゃあ俺達は街に戻るよ。この柵補強したほうがいいと思うよ。」
仁も心配そうに、柵を揺らしながら説明した。
「土台の石がもうあまり耐えられる状態じゃないと思う。」
ザロは困惑した表情で、二人に助けを求めた。
「どうやって補強するんだ?」
ーー確かに…どうやって補強する?石の加工職人はいるのか?土台作り直すのにどれくらい時間かかるんだろうか?
魔弾と仁はその場で考え込んでいた。
「石の加工職人はレテにいる?とりあえず新しい土台は今すぐ作ったほうがいいと思う。大陸に作ってもらうにしても早く手配した方がいいよ。」
仁はザロに伝えると、魔弾と共に見張り小屋の中へ入って行った。
「土台の強化できそうな物あるかな?つってもどう強化するんだ?って感じだけどさー…。」
魔弾が仁に向かって呟くと、仁もそれに同意した。
「流石に土台は俺達でも無理だよねー…柵に毒でも塗っとく?まぁ…あんまり意味なさそうだけど…。」
ーーあいつらあんまり毒を怖がって無かったっぽいしな…外皮が厚いのかナイフも全く気にして無かったし…
魔弾は今日の戦いを頭の中で再生し出した。
ーー賢いって言ってたけど、体当たりを繰り返してたのは何か意味があったのか?土台の破壊目的?そういえば、熊の化け物も体当たりしてた。何でだ?
「ジン、体当たり防ぐにはどうしたらいいと思う?」
「落とし穴とかバリケードで柵の前を固めるとか?」
「バリケードか…仮に作るとして材料は金属以外でいけるかな?出来ればすぐ調達できそうな木材とかで…。」
「そっか!要は体当たりさえ防げればいいってことか!」
魔弾の戦う姿を思い出して仁は、何か閃いたのか急に大きな声をあげた。
「バリケードって程立派じゃ無いんだけど、柵に体当たりしたら確実に体に傷ができるような仕掛け作るのはどうかな?有刺鉄線みたいな感じで刺さると傷つく感じにしたいんだけど…あいつらダンの攻撃は嫌って避けてたじゃん?」
「確かに避けてたわ!それに毒も塗っておけばより安心だわ!でも俺こっちで有刺鉄線て見たこと無いかも…」
「あぁ…確かに…俺も見たこと無いわ…何とかそれっぽい物作れないかな?」
魔弾はイメージが固まったのか、仁のアイデアに同意した。
「見た目は不恰好だけど、長めの釘と板があれば作れそう!革紐とかで柵に固定すれば安定しそうだし!」
魔弾のイメージは仁が伝えたかったアイデアの本質を理解した内容だった。
それが嬉しかったのか、仁は善は急げと言わんばかりの早さで帰り支度をし始めた。
「釘って確か出店で売ってたと思うんだ、無かったとしても大工さんの所に行って事情話せば、きっと協力してくれると思う。」
魔弾も仁につられ帰り支度を始める。
「待って、とりあえずタキリ様とやらに土台の事話したほうが良くない?その間に材料は俺が集めておくよ。ヤギレースの常連に大工の知り合いがいるからさ。」
すると仁は歪んだ表情を魔弾へ向けた。
「えー…俺が行くのー…?まぁ…俺だよなー…。」
ーーあぁ、まだこの間のやりとりが忘れられないのか…でも露骨すぎてちょっとウケる!
二人は急いで街へ戻り、それぞれやるべき事を優先させた。
仁と別れた魔弾は出店をまわり釘を探したが、思う長さの釘は見付から無かった。
一般的な釘は出店で売っていた為店主に長い釘について尋ねてみたところ、大工なら建築用の長くて丈夫な釘を使ってると聞いたので、知り合いの大工の家へ向かうことにした。
日が暮れる前に何とか材料を揃え、魔弾は広場で仁を待っていた。
食事と酒を買い、座って仁を待っているとザロが現れた。
「ダン、一人?ジンと一緒じゃないの?」
ザロは当たり前のように、魔弾の向かいに座った。
「ジンはタキリ様に柵の状態を報告しに行ったよ。ザロは休憩?ってか駆除人て休憩あんの??」
「え?俺はまだ駆除人として認められて無いから、夜はいつも街に戻ってるんだよ。足手纏いなんだって。」
「そっか…駆除人の世界も大変そうだよな。命がけだし、応援はしてるけど無理はして欲しくないっていうか…」
「それ、母さんがよく言ってる!」
そう言ってザロは人懐っこい笑顔を魔弾に向けた。
ーーまだ子供っぽさが抜けてないもんなー…17か8くらいかな?どう見ても高校生ぐらいだもんなー…
食事を頬張るザロを眺めながら魔弾が酒を楽しんでいると、仁が酒を片手に現れた。
「ダン、お疲れー!ってあれ?ザロじゃん。家帰んないの?」
「母さん祈りの間にずっといるから、夜飯無いんだよ。」
ーーなんかジン、機嫌良さそうじゃん!良かった!今回は揉めなかったんだな!
軽く酔っているのか、仁は勢い良くザロの隣に座り食事に手をつけ始めた。
「どうだった?こっちは準備万端。」
魔弾は空いたコップに酒を注ぎながら仁に訊いた。
「石はレテで加工出来るって。三日以内には土台の修繕ができるってさ。」
仁は余程空腹だったのか、料理を頬張り続けていた。
「三日間ね、バルに話して明日は休み貰ったから朝から行けるよ。」
「柵を直すのか?俺も手伝おうか?」
魔弾と仁はザロの申し出をありがたく思い、柵を補強している間の護衛をお願いした。
「明日もサキさん居るのかなー…」
魔弾と仁は今日のやりとりを思い出し、ため息をついた。
「あいつ、この間腹やられてからずっと機嫌悪いんだよ。ゴウも。」
ザロもサキの態度に不満だったのか、食事の手を止めて話し始めた。
「ゴウとサキの両親は二人共駆除人でさ、だからゴウもサキもすっごい期待されてたらしいんだけど、ゴウは期待通り強くなったから良いけど、サキは多分俺とあんまり変わらないくらいの強さだからさ。いくら傷が深くても死なないけど一人じゃ化け物倒せないんだよ。だからゴウに柵から出るなって言われて怒っててさ。」
「え?!駆除人て死なないの?!」
魔弾と仁は同時に声を出した。
「え?死ぬよ?即死じゃなければ傷が塞がるってだけで、生き返る訳じゃないから。」
ザロからは死に対する恐れが全く感じ無かった。
ーーえ?ちょっと待って。ザロとサキさん同じ強さで、一人で化け物倒せないって…明日の護衛は大丈夫そ?




