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化け物襲来

仁は忙しかった。

昨日は夜遅くまで毒の抽出作業を行い、三時間ほど睡眠をとった後、抽出の終わった毒をさらに強力にするため、早朝から調合作業を行っていた。

魔弾の差し入れを食べながら、リストを片手に不足はないか確認している仁の姿は、まるで仕事のできる先輩のように格好良く映っていた。

最初に仁と出会った時、レテのためにできることをしたいと言っていたことを思い出し、魔弾は先程までの怯えた自分を叱った。

ーー運ぶだけだろ?何ビビってんの?柵から出なきゃ大丈夫だろ?ジンを見習え!!

準備が終わり麻袋を担いで二人は出発すると、農場を過ぎた辺りでようやく仁が口を開いた。

「ねっむー!多分三時間くらいしか寝れてない!」

あまりに緊張感のない仁の一言は、魔弾の不安を和らげた。

「大丈夫?俺まだ持てるよ?」

「ありがと、でも大丈夫。ダンだって朝から仕事でしょ?疲れてるのにごめんね。」

「いいってことよ!ところでさ、ジンの作った毒ってどうやって使うの?毒餌とか?」

「いろいろあるよ。武器に塗るタイプもあるし、毒餌もあるよ。そういえば原始人でも俺、毒の石斧使ってたかも!」

「俺は石槍使ってた!懐かしー!めっちゃマンモス狩りてー!!」

二人はいつものように、冗談まじりに会話をしながらも急足で見張り小屋へ向かった。

見張り小屋の前で、若い男が待機していた。

小屋に荷物を運ぼうと中に入った二人は、中にいたサキを見て目を疑った。

サキは腹部に傷を負ったのか、布を巻いており血が滲んでいた。

なにより驚いたのは、滲んだ血の量は誰が見ても軽症とは思えない量で、そんな傷を負ったにもかかわらずサキは、小屋の中で優雅に果物を齧って寛いでいたのだ。

ーー駆除人すごくね?あれどう見ても重症に見えるんですけど……なんであんな余裕な感じなの??

「サキ、怪我大丈夫なの?」

心配した仁が、素直にサキに訊ねた。

「傷は塞がってるけど、まだ少し痛む。夜には戦える。」

ーーえっ?!まだ戦う気なの?!

サキの言葉に、仁も驚いたようだった。

「あんまり無理しないでね。それよりゴウは?専用の持ってきたんだけど。」

「今見回りに出てる。」

荷物を確認していた若い男が会話に入って来た。

「そっか、じゃあこれ渡しといて。」

そう言って、仁は小さな袋を若い男に渡した。

その時、外から声がした。

「ザロー!すぐに柵を閉めろ!」

若い男がすぐ声に反応し、小屋の外へ飛び出して行った。

その後すぐに、サキは武器に手を掛け立ち上がった。

それと同時に、魔弾と仁は咄嗟に小屋の外へ出ていた。

二人とも反射的にサキを守ろうとしたのだ。

柵の外で初老の男が何かに追われて走ってくるのが見えた。

初老の男が勢いよく柵の中へ走り込んで来たタイミングで、若い男が柵を閉める。

突然目の前で柵が閉まり、化け物は勢いよく柵へぶつかった。

化け物は魔弾が以前遭遇した熊より二回り大きく、額には眼球が剥き出しになっていた。

咄嗟に小屋から飛び出した魔弾と仁は、恐怖で足が竦んでいた。

「あれが……化け物?」

化け物を初めて見た仁は、恐怖で声が震えていた。

「前回遭遇したのより、デカい……」

二人とも化け物から視線を外すことができなかった。

化け物は初老の男に相当腹を立てているのか、柵の外から執拗に引っ掻こうとしたり、柵を開けようと体当たりを繰り返していた。

柵は見かけ以上に頑丈のようで、化け物が体当たりしても歪むことなく耐えていた。

しかし、柵を支えている石柱がミシミシと音を出しており、不安を煽ってきた。

魔弾と仁が立ち竦んでいる中、二人の男は柵越しに化け物をナイフで斬りつけていた。

それでも、怒り狂った化け物の体当たりは止むことなく続いた。

戦う二人の姿を見て、少し冷静さを取り戻した魔弾と仁は、それぞれ行動に移った。

魔弾は小屋に用意された沢山の武器を外に運び、仁は運び出された武器に素早く毒を塗り付けた。

魔弾は一通り武器を外へ運び出すと、仁が毒を塗り終えた武器を柵の前で戦う二人に渡しに行った。

近くで見る化け物は魔弾に、より一層の恐怖を与えた。

そんな中、魔弾は不思議に思ったことがあった。

ーー毒塗ってあるけど、ナイフじゃ攻撃力弱くない?もっと攻撃力高い武器ないの??あれじゃ外皮でガードされてないか?小屋にもっといい武器なかったっけ?

魔弾はすぐに小屋へ戻り、武器を物色した。

ーーこれ使えそうじゃね?

魔弾はすぐに仁に声をかけた。

「ジン、これに毒塗って、奴が体当たりしてくる反動を利用すれば、結構深く刺さりそうじゃない?」

そう言って魔弾が手にしたのは、柵を作った時の余った金属だった。

都合の良いことに先端は雑に切られて、鋭く尖っていた。

「槍みたいに使えないかな?これだけリーチあれば安全に攻撃できそうだし!」

「それ良いね!すぐ塗るから待ってて!」

二人からは先程までの恐怖は完全に消えていた。

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