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行きたくない

サキと話していると、水車小屋の方から若い男が歩いてきた。

「サキ、うちの親父がゴウが戻るまでここで待てって言ってたぜ。」

男は魔弾達には目もくれず、サキに話しかけながら近付いてきた。

ーーこの男何者?!1人で柵の外から来るとか駆除人か?それにしても随分体格が良いな…

魔弾は男を凝視していた。

視線が気になったのか、男は魔弾達を追い払うように言った。

「あんたらは早く街へ戻った方がいい。」

ーーなにコイツ、なんかめっちゃ偉そうなんですけど…

「じゃあ自分達は戻りますんで。」

魔弾はムスッとしながら答えた。

「ジン、明日店に行くから化け物用の強力なやつ多めに用意して欲しい。」

「分かった、5体分くらいならすぐ用意できると思う。もっと必要?」

「化け物が何匹なのかまだ分からないんだ。今親父がタキリ様と話つけてるから、足りない材料あったらタキリ様に言ってくれ。」

「分かった、じゃあ明日。」

話終えた仁の表情は、厳しい表情に変わっていた。

最初は苛ついていた魔弾も、仁の表情を見て緊迫した状況を理解し大人しく街に戻ることにした。

街へ戻る最中、暗い表情の仁が口を開いた。

「さっきの子、シラの息子だよ。親父さんとお兄さんの3人で駆除人やっててさ、親父さんはもう年齢的に引退してもおかしくないくらいでさ。その親父さんが現場に出るって結構ヤバいのかも。」

ーーシラってあのいつも祈りの間で祈ってるあの女性か…そっか…家族の安全をいつも祈っていたのか…

仁の話を聞いて、魔弾は自身の大人気ない態度に後悔していた。

ーー誰だって危険な状況に置かれたら、愛想なんて振り撒いてられないよな…あの子多分まだ未成年だよな?

街へ着いた仁はすぐにトリカブトへ戻って行ってしまった。

魔弾は広場で適当な場所を見つけて腰を下ろすと、賑わう屋台や出店を眺めながら自分に何かできる事はないかと考えていた。

仁が駆除人から必要とされているのを見て、羨ましく思ったのだ。

ーーそういえば、シラっていつもどれくらい祈ってるんだろ?てかいつ行ってもいるよな?

そんな事を考えていたら、魔弾の足は自然に祈りの間へ向かって歩き出していた。

祈りの間に入ると、5人の女性が祈っていた。

ーーいつもより多い?やっぱり化け物が出たからかな?

魔弾は女性達の邪魔をしないように、静かに跪き祈り始めた。

30分程経った頃、目を開けると祈っている人は8人に増え、中には男性や子供も混じっていた。

ーーもしかして、思ってる以上にヤバイ状況なのかな?

魔弾は一旦外に出て、足の痺れが癒えるのを待った。

しばらく祈りの間の入り口近くで座り込んでいると、祈りの間から出て来たシラの姿を見つけた。

特に親しい訳ではないが、いつも家族のために祈っているだろうシラを思うと、魔弾は胸が締め付けられた。

ーー駆除人だって言ってもまだ子供だもんな…辛いに決まってるよな…

足の痺れが消えたのを確認すると、魔弾は祈りの間へ戻り再び祈り始めた。

決して信仰心が強い訳ではないが、これだけ人が集まって祈ってるの見ると、自分の祈りも決して無駄にはならないのだろうと思っていたのだ。

二度目の祈りを終えて外に出ると、すでに日も暮れ広場は屋台だけになっていた。

いつもなら飲み客で賑わっている広場が、今日は少し静かに感じた。

明らかに飲み客が少ない。

魔弾は自分と仁の分の夕食を屋台で買い、トリカブトに差し入れを持って行く事にした。

しかし、トリカブトに仁はおらず買った夕食を仁に渡して貰うよう無愛想な店番男に伝えて店を後にした。

魔弾は公衆浴場で汗を流した後、宿舎へ帰って1人で夕食をとった。

ーー明日、畑行きたくないなぁ…なんか怖いわ…

そんな事を考えているうちにいつの間にか眠ってしまったようで、魔弾は夜明け前に目を覚ました。

不安が募る中、渋々仕事の準備をして部屋を出た魔弾は、いつも通りミラの手伝いをして畑に出発した。

魔弾は畑につくと、速攻で小屋に籠り粉挽きを始めた。

なるべく早く終わらせて安全な街に戻りたい、その一心で働いていた。

そんな状況に置かれても、決して雑な仕事をしてはならないといつも以上に気を遣いながら作業をしていると、時間はあっという間に過ぎ作業も少し早く終えることができた。

魔弾はすぐに蔵へ行き、荷車を受け取ると逃げるように街へ戻った。

荷車をカラへ届けすぐに祈りの間へ行き30分程祈りを捧げた後、広場に戻り休憩がてら腰を下ろした。

ーー明日ヤギレース開催するのかなぁ?って何考えてんの俺!!!

自身の呑気な考えに呆れつつ、屋台で昼食を買ってトリカブトへ向かった。

魔弾がトリカブトへ入ると仁が忙しそうに、荷物を大きな麻袋へ詰めていた。

「ジン、お昼買ってきたよ。なんか手伝えることある?」

「ダンありがとう!ちょっと頼みたいことあるんだけど、時間ある?」

「手伝うよ!なんでも言って」

魔弾が快諾したのを見て、仁はホッとした表情を見せた。

「これ、昨日の見張り小屋まで運ぶんだけどちょっと重いから一緒に運んでくれると助かる!」

「い…いいよ…」

魔弾の表情は一気に暗くなった。

ーーイヤァアアアア!!心から行きたくないー!!これ絶対危ないやつうううう!!

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