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重労働

昼時に近づいたのか、広場に人が少しずつ滞留している。

空腹に気付いた魔弾は、屋台を物色しながら広場を彷徨いていた。

美味しそうなスープや野菜と肉のサンドイッチ、焼いたフルーツ等が屋台に並んでいるが、魔弾はそれらに一切興味を示さず一直線に肉の屋台へ向かった。

串焼きを6本買い次の屋台へ足を運ぶ、魔弾が求めるは主食に準ずる物。

純粋に肉を味わうために、味付けの少なそうなパンを厳選した。

テーブルを確保し、パンを片手に待っていると焼きたての串焼きが運ばれて来た。

魔弾は右手にパン、もう一方の手には串焼きを持ち交互に口へ運んだ。

魔弾自身も驚くほどの爆食は、食べ物が尽きるまで終わらなかった。

広場に人が増えてきた為、食事を終えた魔弾は港近くに移動することにした。

埠頭の近くで座れる場所を探して彷徨っていると、腕に腕章をつけた若い男が魔弾に話しかけてきた。

「新入り?」

「はい!ダンです、宜しくお願いします!」

魔弾は元気よく答えた。

「俺はマト、よろしく!」

ーー20代前半くらいかな?

マトは繁華街で遊ぶ大学生のような雰囲気で、外見は力仕事には不向きなのではと思うほど細身だった。

「若い人珍しいね、大陸から来たの?」

魔弾は言葉に詰まった。

ーーこの場合、なんて言うべきなんだ?巣鴨で通すべき??

「巣鴨って所から来たんですけど、トリカブトのジンと同郷です。」

「ああ!ジンね!さっき倉庫に来てたよ。ジンの知り合いだったんだ?」

ーーいや、仁さんめっちゃ有名じゃん!

魔弾とマトが話していると、港の鐘が鳴った。

「じゃ行こうか!あっ腕章つけとかないとダメだよ。」

魔弾は腕章をつけて、マトについて行った。

波止場にはキオと男が3人集まっていた。

3人の男はいずれも中年で魔弾より10歳から15歳位年上に見えたが、肉体労働で鍛え上げられた体はとても引き締まっており若々しく見えた。

ーーこの中だと俺も若い部類に入るんだな…

「マト、じゃあこっちは任せる。ダン頑張れよ」

特に説明もなくキオは倉庫の方に去って行った。

ーーあれ??仕事の説明は無い感じなの??

戸惑っている魔弾にマトが説明を始めた。

「船から荷をおろすのは、船員がやってくれる。その荷を倉庫まで運んで、倉庫から船に積む荷を波止場に運ぶのが俺たち。荷物がなくなるまで。」

「わかりました!」

ーーとにかくガンガン運べって感じね!

マトは魔弾に革の紐を渡し、荷の担ぎ方を教えた。

魔弾は教わった通りに、荷に革の紐を通し背に背負ってゆっくりと立ち上がった。

ーーうわっ、結構重いじゃん…これ担いであの階段と坂は確かにヤバそう…

荷を大きく揺らさないようにゆっくり階段を上り、きつい勾配ではないが500メートル程続く坂道を抜けると倉庫に辿り着いた。

倉庫に着くと、船に積む予定の荷が山積みになっていて先に運搬を始めていた中年チームは、すでに荷を背負ってもう波止場に出発していた。

魔弾も運んできた荷を所定の位置におろし、すぐに荷を背負って出発した。

魔弾は急いで中年チームに追いつこうと思っていたが、上りよりも下りは足の踏ん張りを維持しながら歩くため体力の消耗は激しかった。階段を下りる頃には魔弾の脹脛は悲鳴を上げつつあった。

ーーたった一往復でこの疲労…マジかよ…俺もしかして衰えてるの??

ジムに通うほど体に自信を持っていた魔弾の心は、計り知れない程の大きなダメージを負っていた。

何よりもショックだった事は、不向きだろうと思っていた細身のマトが軽々と荷を担ぎ、飄々と運ぶ姿を見てしまった事だった。

ーー若さなのか?!それ以外無いだろ?!そうだろ?!

魔弾は何度も自分に言い聞かせた。なんとか加齢のせいだと言い聞かせ二往復、三往復とこなした。

四往復の階段を上り終えたあたりで、魔弾の膝が笑い出した。

ーーあの辛かった練習の日々を思い出すんだ!!頑張れ俺!!

野球で鍛えた精神力がここぞとばかりに輝いた。

六往復が終わると、残りの荷も目に見えて少なくなっていてあと一往復か二往復で終わるだろうと感じた。

不思議と終わりが見えてくると、辛い仕事ほど早く終わらせたい一心で頑張れるもので最後の往復時は仕事後の予定はどうしようかなんて考えるほど元気が回復していた。

最後の荷を所定の場所におろすと、まるで試合に勝った時のように魔弾は喜んだ。

ーー終わった!!やったぞ!やってやったぞ!!

喜びを噛み締めていた魔弾に、中年チームの1人が声をかけてきた。

「あんた初めてなのにすごいな!普通は2、3個でぶっ倒れちまうぜ!」

「そうなんですか?でもすっごい疲れました!明日が怖いですよ。」

魔弾は笑いながら答えたが、心から明日なるであろう筋肉痛に怯えていた。

「まだ若いんだ、大丈夫だろうよ!さぁ、早く日当もらって飲みに行こうぜ!」

ーーめっちゃ自然に誘ってキター!!仲間認定嬉しい!!

男たちはキオの事務所で日当をもらうと、一目散に広場へ行ってしまった。

「やっぱ若いと体力が違うな!じゃあ次もよろしくな、ダン!」

キオは喜びながら日当を魔弾に渡し、受け取った魔弾も嬉しそうに感謝した。

「ありがとうございます、またよろしくお願いします!」

事務所を出た魔弾は早速渡された、日当の入った袋を確認した。

ーーすご!!銀40個ぐらい入ってない?!今夜は豪遊確定じゃん!!

広場に着くと中年チームは酒を飲んで盛り上がっていた。

魔弾も屋台で酒とつまみを買い、中年チームの輪に入っていった。

「あれ?マトはまだ来てないんですか?」

「マトはまだ手伝いが残ってるんじゃねぇか?流石に親父には逆らえないわな!」

ーーマトってキオの息子さんなの?!知らなかったわ…

男たちの話題は豊富で、公衆浴場のおやじの話や祈りの間で働いているきれいな女性の話、ヤギレースの予想など色々聞けた。

飲み会は二時間ほどでおひらきとなり、面倒なやり取りは一切なく解散となった。

ーーこの後腐れない感じ、めっちゃ爽やかでいい!この後公衆浴場行く時間もあるし!

会社の飲み会はこうも爽やかに終わることはなく、二次会三次会と付き合って、翌朝後悔する羽目になることが多かった魔弾にとっては最高の飲み会となった。

公衆浴場で汗を流し宿舎に戻ると、流石に疲労が溜まっていたのか魔弾はすぐに眠りについた。

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