13話「高嶺の花」
チャイムが鳴ると、ようやく質問攻めが終わります。クラスメイトが各々の席に戻って、私も席に戻りました。
席に戻る直前、
「よくできました。とてもかわいかったですよ」
他の誰にも聞こえない声量で、サヌちゃんは私に呟きました。
労いの言葉でしたが、私にはちょっしたからかいのようにも取れました。
アピールにしても、いきなり膝の上は刺激が強すぎます。赤面の顔が元に戻りません。
私は、恥ずかしさが取れないまま朝のホームルームに臨みました。
ホームルームが終わって授業が始まると、むやみやたらにサヌちゃんへと押し寄せていたクラスメイト達も、静かになります。
先生が問題について解説する声。黒板でリズムを刻むチョークの音。あとは、生徒達のページをめくる音や、ペンを走らせる音だけが教室に響きます。
そんな誰もが勉強に集中している環境の中で、ただ一人、私だけは別のことを考えていました。
(恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいっ……。ああぁぁっ……)
先ほどの質問攻めの件でした。
少々引きずりすぎな気もしますが、ろくに人と関わってこなかった私にとっては、過去最大レベルの恥ずかしさでした。
クラスメイトの大半から集中する視線。こちらの気も知らないで絶え間なく飛んでくる質問。そして、サヌちゃんの膝の上で子供みたいにちょこんと座り続けなければならない地獄。
できるなら、今すぐにでも布団に顔を埋めてのたうち回りたいです。
(これをサヌちゃんは毎日のように……。すごい……)
そもそも、あれだけの人集りを作れること自体がすごいのですが、その人集りをサヌちゃんは表情一つ変えることなく捌いているので、余計にすごすぎます。
まさに高嶺の花。本当にサヌちゃんは、私とは真逆で未来ある人物でした。
「……」
……本当にすごい人です。
だからこそ、その未来をこの手で奪いかけたことが許せません。
一時のくだらない感情で、一方的に追い詰めて……。
(じゃあ何で、サヌちゃんはこんな私を……?)
許されているとまでは言わなくとも、今のこの状況はかなり不自然でした。
自身を襲ってきた生徒達に躊躇なく暴力を振るえるにも関わらず、私には何もしない。
それどころか、友達になろうと提案をして仲を深めようとしている。
動機も意図もあまりに推察のしようがないので、私は返って不安になります。
もしかしたら、復讐をする価値もないと判断したのかもしれません。
もしかしたら、裏では私を怖がっていて、クズである私に迂闊に手が出せないのかもしれません。
もしかしたら……。意味もなく妄想を繰り広げては、結論を出せずに終わります。
私は恥と未知に苦悩しながら、しばらく無駄に時間を過ごしました。
「では、次の問題を焔さんに答えてもらいましょう。この作者はこの物語にどんな想いを込めたのでしょうか?」
「何もかも投げ出したいですっ……」
「『何もかも投げ出したい』ですか……。正解です。他のクラスでは誰も答えられなかったのに……。素晴らしいですね!」
「すげえ……」「焔さん頭いいんだ……」「何か今答え方に感情篭ってなかった?」