#1 すべての始まり
人類史上最強のボクサーの斑目潤は8階級制覇がかかった試合で相手に反則を使われ敗北し、そのまま死亡してしまう。だが彼は異世界に転生し、今度こそ最強への道を突き進む。
ドスッ!ドスッ!ドスッ!
コンクリート打ちっぱなしの古びたマンションの一室にサンドバッグを叩く音が響く。
「ふぅーー…」
(いつからだろうか思うように笑えなくなった時は、)
(父親に酷い虐待をされそれから逃れるためにボクシングを始めた時か?)
(トレンドに乗るからって言ってあまり知らない顔だけの女と結婚した時か?)
(ボクシングで7階級を制覇して、誰も対等な相手がいなくなった時だ。)
(じゃあなんでボクシングを続けるんだって言う奴もいるだろう。理由は簡単だ。)
(ボクシングが世界で一番大好きだからだ。)
「あ、明日試合か…これ勝てば8階級制覇か、」
(退屈だ。)
(辛い体重増量にも、厳しいトレーニングにも俺はずっと耐えてきた。それもすべて夢の8階級制覇への道を開くためだ。)
「それも、全部明日で終わりか…」
(また新人時代みたいに目標に向かってひたすらに頑張ってみたいな…)
―試合当日―
「さぁ!いよいよこの戦いが始まります!スタジアムは当たり前のように満員だ!人類史上最強のボクサー斑目潤の前人未到の8階級制覇がかかったビッグマッチだ!!!」
「赤コーナー。」
「斑目ーーー!!潤ーーー!!!。」
「うわぁぁああああああ!」
スタジアムはとてつもない歓声で包まれた。
「青コーナー。」
「馬場ーー!!!和仁!!!」
「馬場選手もかなりの選手ですよー、この試合瞬きできませんね!」
SNSによる勝敗予想は俺の勝利が96、3%にまで登った。
「斑目の1RKO見てぇ!」
「先輩!あれが斑目っすよ!」
「斑目くーん!こっち向いてー!」
外野の声が聞こえてくる。俺はリングに上がった。
馬場が俺に話しかける。
「お前にとって俺は視界に入れる価値もないかよ…」
「あぁ…俺が見てるのはお前じゃなくて8階級制覇してベルトを担いでる未来の俺だ。」
「クソが!イキってんじゃねえぞ…痛い目に遭わしてやるからな…」
「レーディッ!ファイッ!」
馬場はさっきの俺の言葉がかなり効いたのか試合開始のゴングと同時に俺に突進してきた。
(こいつも対等に戦える相手じゃ無かったか…)
バキッ!
馬場が突進してパンチを打った所を俺は容易く避けて渾身のボディブローを決めた。
「うぐぅ!!」
(これ相手のやつ、肋骨折れたな…)
バタッ!!
「斑目のボディブローが突き刺さり!馬場はたまらずダウン!」
「もう終わりか…」
「まだだよ…イキリ野郎…」
馬場は血反吐を吐きながらなんとか立ち上がった。俺はその姿に昔の自分を重ねていた。
「タフさだけはチャンピオンだな。」
「黙れ…」
「ボックス!」
試合再開の合図がなりまた馬場は俺の方に猛突進を仕掛ける。
(だからわかりきったフックをブンブン降っても俺には勝てないって。)
バキッッ!!
俺は一瞬我が目を疑った。馬場は危険技で反則である後頭部への打撃を平気に行ってきたのだ。
「おっと!まさかのここで斑目がダウン!」
「おい、審判今のはどう見ても後頭部だろ。」
「いえ、あれは正当な打撃です。」
(は?)
俺はまさかと思い馬場の方を見ると、
「ニヤッ!」
その瞬間俺は全てを理解した。こいつと審判は裏で繋がっていると…それからは一方的だった。
バキッバキッバキッ!
「斑目が馬場のフックの連打をまともに喰らっています!」
(あ、やべぇこれ脳が揺れる。)
「俺に楯突くからこうなるんだよ!イキリ野郎が!」
(まずはカウンターを…)
スカッ!
俺のパンチは空を切った。
(ちっ、方向感覚がおかしくなってる…このままじゃ本気でまずいな…)
その瞬間、一つの考えが俺の頭によぎった。
(俺これ死ぬ?)
バキッバキバキバキッバキッ!バコッ!
(あ、やばこれ…)
ぐらっ…
バタン!
「ま、斑目がK、KO負けです…」
「ルーナ!もうすぐ生まれるぞ!」
(うるさいな…こっちはもうすぐ逝くんだぞ…)
「ひっひっふーひっひっふー」
(死んだらもうボクシングできないのか…)
(死にたくない死にたくない死にたくな…)
目の前が暗くなった。
「ルーナ、生まれたぞ…」
(なんだここ病院?それともあの世か?)
「あなた、私たちの子よ…」
(何言ってんだ。生きてるんなら俺は早くボクシングの練習に戻らないと…)
そう思い、俺は起き上がるために手を出した。
(何だこれ手が小さい?)
(まさかこれは…)
「おんぎゃー!おんぎゃー!」
(どういう状況だ!?)
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