表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある喫茶店の風景

作者: 松任 優夜

黒く重みのある扉を開くと、家主にその訪れを知らせるように、鐘の音が響いた。


景色を切り取るような窓が目に入ってくる。その広い窓から差し込む日の光に店内が照らされ、店内に点在する間接照明も木目調のテーブルと椅子を照らしていた。一組ごとの間が広く取られており、広さの割に収容できる人数が少ないのだなと容易に想像できた。


「お帰りなさいませ」

黒のシャツとパンツに茶色のエプロンをした黒髪の女性が一礼して私を出迎えてくれた。


「カウンターとテーブルどちらにしますか」

言われてから、改めて店内を見回すとこれもゆとりのあるカウンターが伸びていた。


「カウンターで」

と短く伝えると、笑顔で「こちらへどうぞ」と先導してくれるのであった。



「メニューはこちらになります」

と、飲みもしないであろう水と手拭き用のミニタオルと一緒に薄手のケースに入ったメニュー表を右手側に置かれる。


それに一瞥し、「珈琲」と呟くと、かしこまりましたと、女性はカウンターの中へと入り込む。


自分のために珈琲を用意してくれているという音がちょっとした優越感を生むと共に、店内の静かさを味わう。

これほど静かな空間に居るのが久しく感じる。


「失礼します、どうぞ」

珈琲を差し出され、女性に向けて軽く会釈をする。


早速、右手人差し指をカップにかけ、珈琲を口に運ぶ。慣れないブラックの味に、雰囲気で味まで変わらなかったと苦笑する。


珈琲の味を整えていると、不意に音楽が流れてくる。決して大音量ではなく耳を澄ませると聞こえてくる。



こんな店があったんだな


と、これが喫茶店を始めようと考えたきっかけ。あれから数十年、今日も沈黙と音楽、珈琲をお客様に提供している。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ