四十話 長期休暇のとある一日
大変お待たせしました。
起承転結すらない今話ですが、よろしくお願いします。
それと誤字脱字報告大変助かってます。
大精霊討伐を終え、家に帰ったボクは、まだ残っている長期休暇を実家で過ごしていた。
「セオ、こっちを手伝ってくれ」
「うん」
ボクは、一番上の兄であるルーベン兄さん──ルー兄さんに言われて、駆け寄った。
彼は、朝から畑に行って作物の世話をしていた。
「今日は、ヒュー兄さんはいないんだね」
ボクは、ルー兄さんにそう言う。
ヒュー兄さんとは、次男のヒューゴ兄さんのことである。
「まあ、アイツもほぼ婿に行ったようなもんだしな。今日もあっちの家を手伝いがてら、嫁さんとイチャついてるだろうよ」
ルー兄さんが言うように確かに、次男であるヒュー兄さんは成人と共にほぼ家を出ているような状態だった。
彼は、ボクが魔法の適性があったとこを知った時や、長期休暇に入った時に顔を見せに頻繁にやってくるのだが、通常彼方の家にいることが多い。
ヒュー兄さんは頭が良いから、仕事も早いから、結構来るけどお嫁さんをほっとくわけにもいかないようだ。
ボクは、そんなことを思いながら、兄さんから農具を受け取った。
そして、暫くして、ルー兄さんは思い出したように口を開いた。
「そう言えば、お前、お嫁さんはどうするんだ?」
「え?」
突然の言葉に、ボクは首を傾げた。
確かに、ボクは成人したけれど、学園に通うことになってそのあたりがうやむやになっていたため、完全に忘れていた。
「セオは、学園に行ってるから、暫くはいいかもだけど、少しは考えないとな」
「まあ、確かに。でも、結婚してない兄さんに言われても釈然としないなぁ」
「それは言うなよ。相手と、ちょっとトラブっちまったんだから」
「ミアさんだったよね。ボクはあまりあったことないけど」
一応昔からの、ルー兄さんの許嫁であったミアと言う女性を思い浮かべた。
「ああ。セオは昔からすぐどっか行くから、あまり面識はないのか」
ルー兄さんのその言葉に、ボクは顔を引きつらせながらも笑って見せた。
昔から、聖域に忍び込んでいたボクは、家族のそう言った事情に疎い。
「でも、昔は、仲良かったじゃん」
「ああ、それな。結婚直前に、怒らせちまってなぁ。ほら、あっちの家は割と村でも大きいから、割と保留になってはいるんだけど」
ルー兄さんが言うには、結婚直前と言ったところで、相手の機嫌を損ねてしまったらしい。
ミアさんも、彼方の家では、上に兄がいることもあって、結婚が保留状態になっていてもなんとかなっているようだけど。
普通ならないことだけど、彼女の両親は駆け落ちしてこの村に来て、一代にして力を持ったと言うし、本人の意思を尊重したいのだろう。
「俺だって、頑張ってるんだけどな。一応毎日会いに行ってるんだけどなかなかうまくいかなくてなぁ」
ルー兄さんは、そんなことを言いながらも、手は動かしていた。
「って、ことなんだけど、どう思う?」
暫くして、聖域に行ったボクは、エインセルにそう訊いた。
内容は、ルー兄さんとミアさんのこと。
「どうと言われても、これだけじゃ難しいですね。フェイスは分かります?」
「いえ。ですが、ミアさんの家と言えば、村の中ではそこそこの地位ですし、相手は他にもいるでしょう。でも、他には行かずと言う事なら、結婚自体が嫌なわけではないのではないでしょうか?」
エインセル、フェイスと口を開いた。
なんだか、ここで話をするのも懐かしく感じる。
旅から帰って来て、元の位置に収まったからだろうか。
「嫌じゃないのは、ボクも思ってはいるんだけど」
「よくわかりませんね。私がセオと一緒になるというんだったら、保留などと言う状態にはしませんのに」
「エイン様素敵です!」
確かに、ボクもあまり詳しくは知らないから、もうちょっと聞いとけばよかったんだろうか。
そう思って少し後悔する。
そんな時、不意にエインセルが口を開いた。
「そう言えば、何でそんな話になったんですか?」
「えっと、ルー兄さんが一番初めに、ボクもゆくゆくは結婚するんだから少しは考えろって……」
少し言いづらいなと思いながらも、ボクは話した。
なんだか、こういったことは言いたくなかった。
でも、エインセルは思ったより淡白な反応をした。
「そんなことですか」
「そんなことって……」
「セオには私と言う存在がいるのですから、考える必要もありませんね」
エインセルは自信満々にそう言った。
確かに、エインセルが大精霊であっても、ボクは彼女のことが好きだと言う事実は変わらない。
そう思っていると、不意にボクはあることを思い出した。
「エイン、それにフェイスも、これ、受け取ってくれないかな?」
ボクが、取り出したのは、銀色に輝く指輪とブレスレットだった。
ロプトで購入したものを渡していないことを思い出したのだ。
「これは……いいんですか?セオ?」
「うん」
「私までもらうなんて……」
「フェイスにもいつもお世話になってるから」
ボクはそう言って二人に渡した。
二人とも嬉しそうにしてくれてよかったとボクは思う。
フェイスは早速、腕に着けてくれるようだ。
「こうでしょうか?……腕に着けるのは結構難しいですね」
フェイスは、自身の左手にブレスレットを付けようとするが片手がふさがってるために苦戦している。
それを見かねたエインセルは、手を出した。
「フェイス。私がつけてあげますよ。……ほら、似合ってますよ」
「エイン様…………ぽっ」
エインセルがフェイスの腕に着けて上げると、フェイスは顔を赤くして頭から湯気を出した……ように見えた。
「エイン様、エイン様」と呟いている。
そんな光景を見ていると、エインセルがボクの手を取った。
「セオ」
そして、名前を読んだ彼女はボクに指輪を握らせた。
まさか、返されてしまったのだと一瞬焦るがそうではないようだと気付いた。
「私の指につけてくれますか?」
「うん」
ボクは、頷いた。
確かに、こういうのは男の人がつけてあげると聞いたことがある。
ボクはエインセルの手を取った。
ん?
そう言えば、どの指につければいいんだろう。
そう思ったボクだが、その尊大を強調するように彼女の薬指が銘一杯伸ばされるのを見て、掴んだ指輪を指に通した。
「きつくないかな?」
ボクは、念のためにサイズがあっているか聞いてみた。
一応、彼女に会いそうなものを選んできたつもりだけど。
でも、そんな杞憂はいらなかったようだ。
「ピッタリですよ」
そう言って彼女は微笑んだ。
「ごめんね。遅くなって。ホントはエーリューを倒した後に渡そうと思っていたんだけど」
デリックの件があってすっかり忘れてしまったボクは、二人に謝った。
「気にしてませんよ。でも、討伐後に渡すつもりだったんですね。討伐前じゃなくて。もしかしたら、あそこで死んでしまうと言う可能性もあったでしょう?」
責める様子はなく、エインセルは疑問を呈した。
「うん。でも、だって、ボクたちは、エインセルを除いた六柱もの大精霊を倒さなければならないんだよ。だから、死ぬかもしれないと悩んでもこれで終わりだとは思ってなかったから」
ボクは、絶対に「大精霊の業」による死を免れてエインセルと一緒に暮らすんだ。
だから、これはエーリューを倒す前じゃなくて、倒した後だと決めていた。
「そうですか」
エインセルは優しく笑った。
「ちょっと、フェイスいつまでそうしてるんですか。戻ってきてくださーい」
「エイン様……」
「これは、暫くはダメそうだね」
ボクは、未だ心ここにあらずと言った表情をしたフェイスを見てそう言った。
「あ、ヒュー兄さん、来たたんだ。お嫁さんとあっちの家は良いの?」
「お帰り、セオ。まあ、俺も婚約だけで結婚じゃねぇしな」
家に帰るとヒュー兄さんがいた。
どうやら、またこっちに来ているようだ。
村の中もそう広くないから行き来は割と簡単だ。
「そう言えば、ルー兄さんのことだけど」
「ん?ああ、ミアさんとのことか」
「うん。困ってるみたいだから、頭のいいヒュー兄さんに相談しようと思って」
ボクは、そう言った。
聖域に行って、途中で忘れてしまったことは否めないけどそれでも、ちょうど思い出したので聞いてみた。
「ああ、それな。でも、心配ないと思うぞ」
「え?」
「兄さんも結構思い立ったらやるタイプなんだよ」
ヒュー兄さんと、ルー兄さんは年が近い。
だからか、二人にしか分からない何かがきっとある。
歳の離れたボクは昔からそんなものを感じていた。
きっと、今のもそれだろうか。
「そうだね」
ボクは、そう頷いた。
それから少し、帰って来たルー兄さんは上機嫌で、次の日にはミアさんと楽しそうに歩いている姿は村の至る所で見られたと言う。




