⑨
「バイトやべえ。なんでこんなにピザの注文入るんだよ、クリスマスかっつーの」
陸の部屋。ゲームをスタンバイさせる私の肩に、彼は頭を乗せた。
「八月ももう終わるんだし、みんな素麺でも食べてろよー」
「ずっと素麺だったから、夏の終わりにピザでも食べたくなったんじゃない?」
そう言って、コントローラーを陸に渡すが、受け取る気配がない。
「陸?ゲームやらないの?」
「やる」
「めっちゃ疲れてんじゃん。無理して会わなくてもよかったのに」
「やるけどその前に──」
首に回されるその腕は、いつだって私よりも熱い。触れた唇の先、いつもそこから溶けていく。
「チャージしたい」
重なる私達に理屈はない。互いに罪悪感を抱えながら一線を超えたあの日から、きっといつまででもこうしていたかったんだ。
✴︎
「ちょっとふたり共、言わなきゃいけないことあるでしょ」
夕ご飯をご馳走になり、皆で寛いでいると、楓が突然腕を組んだ。
「お兄ちゃん、前にも増して乃亜ちゃんと座る距離近いし、夜ずっとメールしてるし、ふにゃふにゃしてるし。変、変すぎる!絶対何かあった!」
「はあ?ふにゃふにゃしてねえよっ」
「今もスライムみたいだよっ。もしかしてふたり、付き合ったの?」
陸の反応を横目で見る。見事に耳が真っ赤っかだ。
「楓あたり。付き合ってるよ。陸ってば言ってなかったんだね」
しれっとそう報告して、陸の二の腕をぎゅっと抓る。
「イッテ!イッテェってば!」
悶える彼には皆が笑った。
「ちゃんと家族に言えし」
「そんなん、言わないだろ普通っ」
「あ、何。私は家族にも紹介できない恋人なの?」
「そ、そういう意味じゃなくてっ」
陸の母は、写真立ての中で微笑む母に向かって、何やら話しかけていた。
「今の聞いた?私達の子供達、付き合ったんですって。びっくりねえ。乃亜ちゃんのことは、これからは陸が守るからねえ」
よろしくね。そんな母の声が聞こえた気がした。




