⑥
四人で食卓を囲むのは久々だった。バイトの話や楓の受験話など、終始話題は尽きなかった。
塾に通い出したという楓を送り出した後、陸と私はゲームをした。彼の部屋のテレビへ精神統一していると、こんな質問を投げかけられた。
「なあ、俺達って付き合ったの?」
その途端、切れる集中力。
「はい?何言ってんの、付き合ってるわけないじゃん。陸は凛花の彼氏でしょ」
「あ、そっかそうだった。凛花と話さなきゃか、俺」
「忘れるとか、最低」
コントローラーを操作する手が図らず止まる。陸を最低だと罵る資格など、私にはない。
「おい乃亜、何やってんだよ。あーあ、死んだじゃんか」
敵にあたり、点滅するキャラクター。それを目に入れながら、私は言った。
「私、凛花に酷いこと言っちゃったんだよね」
記憶を呼び起こすだけで、負い目しか感じない。
「くだらない八つ当たりした。凛花ばっか楽しそうに見えて、鬱陶しかった」
陸は呆れて、笑う。
「まぁ、アイツは人生楽しそうだしな。嫉妬する気持ちもわかるよ」
画面のキャラクターが生き返る。またすぐ敵にあたって死んでいく。
「どうでもいいって言った。凛花がどれだけ私の人生で大きな存在だったかなんて考えずに、人生どうでもいいって。凛花のことも大嫌いって言った」
「んー。それはアイツ、傷付くかもな。凛花は乃亜のこと、本当に好きだから」
背後のベッドに頭を預け、天井いっぱい凛花を描く。
「……私、どうすればいい?」
寸刻悩んだ陸は言った。
「悪いと思ったなら、謝ればいいんじゃん」
「謝って、もし仲直りできたとして。陸のことが好きですって言ってまた傷付けるの?もう私、凛花と喧嘩したくないよ。仲直りのまま終わりたい……」
嫌な静寂が漂って、陸が口を開く。
「じゃあ、俺のこと諦める?」
「何。その上から目線」
「だってお前、友情とって諦めそうだから」
私は、その言葉に何を返せばいいかわからなかった。陸と凛花、ふたりを天秤にかけるわけではないけれど、陸を取った際に凛花との関係が崩れるのがとても怖い。それだけは、絶対に避けたいと思った。
いつまでも黙りこくる私の側に来て、陸も天井に目を移す。
「諦めんな」
「え?」
「俺は乃亜に俺を諦めて欲しくない。俺は乃亜をもう二度と、諦めねぇ」
「でも、そしたら凛花を……」
「そんでもって凛花のことも諦めんな。お前等一体何年友達やってんだよ。もう十年は経つだろ。凛花が乃亜に愛想尽かすならとっくに尽かしてるし、お前等の友情なんて壊れてるよ。十年も隣にいてくれるってことは、乃亜のそういうとこ全部知って、何回も振り回されて、それでも友達やりたいからやってんだろ?俺と一緒だよ凛花は。乃亜の身勝手なとこも全部知った上で、悔しいけどずっと一緒にいてぇんだよ」
真顔のままにこちらを向いて、陸の親指がグッと立つ。
「だから安心して、話してこい」
しっかり説得されてしまい、こくこくと二回に分けて頷いた。そんな私に、彼は優しく微笑んだ。
「あ。そーいうの全部終わったらさ、俺、また乃亜に告白するわ」
ゲームを再開させた陸が言う。
「次は絶対、オッケーしろよ」
綿毛のように軽い口調でも、耳は薔薇のような深紅色。くすぐられるのはハートの真ん中、笑みが自然と溢れていく。
「陸の格好いい告白、待ってる」
「ハードルあげんな、ばーか」
色々な雑念を飛び越えて、その日を待ち遠しく思う。




