表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/96

 四人で食卓を囲むのは久々だった。バイトの話や楓の受験話など、終始話題は尽きなかった。


 塾に通い出したという楓を送り出した後、陸と私はゲームをした。彼の部屋のテレビへ精神統一していると、こんな質問を投げかけられた。


「なあ、俺達って付き合ったの?」


 その途端、切れる集中力。


「はい?何言ってんの、付き合ってるわけないじゃん。陸は凛花の彼氏でしょ」

「あ、そっかそうだった。凛花と話さなきゃか、俺」

「忘れるとか、最低」


 コントローラーを操作する手が図らず止まる。陸を最低だと罵る資格など、私にはない。


「おい乃亜、何やってんだよ。あーあ、死んだじゃんか」


 敵にあたり、点滅するキャラクター。それを目に入れながら、私は言った。


「私、凛花に酷いこと言っちゃったんだよね」


 記憶を呼び起こすだけで、負い目しか感じない。


「くだらない八つ当たりした。凛花ばっか楽しそうに見えて、鬱陶しかった」


 陸は呆れて、笑う。


「まぁ、アイツは人生楽しそうだしな。嫉妬する気持ちもわかるよ」


 画面のキャラクターが生き返る。またすぐ敵にあたって死んでいく。


「どうでもいいって言った。凛花がどれだけ私の人生で大きな存在だったかなんて考えずに、人生どうでもいいって。凛花のことも大嫌いって言った」

「んー。それはアイツ、傷付くかもな。凛花は乃亜のこと、本当に好きだから」


 背後のベッドに頭を預け、天井いっぱい凛花を描く。


「……私、どうすればいい?」


 寸刻悩んだ陸は言った。


「悪いと思ったなら、謝ればいいんじゃん」

「謝って、もし仲直りできたとして。陸のことが好きですって言ってまた傷付けるの?もう私、凛花と喧嘩したくないよ。仲直りのまま終わりたい……」


 嫌な静寂が漂って、陸が口を開く。


「じゃあ、俺のこと諦める?」

「何。その上から目線」

「だってお前、友情とって諦めそうだから」


 私は、その言葉に何を返せばいいかわからなかった。陸と凛花、ふたりを天秤にかけるわけではないけれど、陸を取った際に凛花との関係が崩れるのがとても怖い。それだけは、絶対に避けたいと思った。


 いつまでも黙りこくる私の側に来て、陸も天井に目を移す。


「諦めんな」

「え?」

「俺は乃亜に俺を諦めて欲しくない。俺は乃亜をもう二度と、諦めねぇ」

「でも、そしたら凛花を……」

「そんでもって凛花のことも諦めんな。お前等一体何年友達やってんだよ。もう十年は経つだろ。凛花が乃亜に愛想尽かすならとっくに尽かしてるし、お前等の友情なんて壊れてるよ。十年も隣にいてくれるってことは、乃亜のそういうとこ全部知って、何回も振り回されて、それでも友達やりたいからやってんだろ?俺と一緒だよ凛花は。乃亜の身勝手なとこも全部知った上で、悔しいけどずっと一緒にいてぇんだよ」


 真顔のままにこちらを向いて、陸の親指がグッと立つ。


「だから安心して、話してこい」


 しっかり説得されてしまい、こくこくと二回に分けて頷いた。そんな私に、彼は優しく微笑んだ。


「あ。そーいうの全部終わったらさ、俺、また乃亜に告白するわ」


 ゲームを再開させた陸が言う。


「次は絶対、オッケーしろよ」


 綿毛のように軽い口調でも、耳は薔薇のような深紅色。くすぐられるのはハートの真ん中、笑みが自然と溢れていく。


「陸の格好いい告白、待ってる」

「ハードルあげんな、ばーか」


 色々な雑念を飛び越えて、その日を待ち遠しく思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ