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 凛花は言う。


「乃亜ってさあ、付き合ってはすぐ別れておしまーいって感じだけど、菊池勇太タイプには、絶対そんなことしちゃダメだよ」

「はあ?」

「あんな真面目君、遊んでポイしたらトラウマ抱えるよ」


 言葉とはあべこべに、キャハハとどこか楽しげな彼女。


「何もべつに、私だって別れたくて別れてるんじゃないんだけどっ。フられる方だってあるし」


 私はまた、黒目を転がした。彼はいないが念の為、声のボリュームを落とす。


「大体、中学や高校で付き合ったって結婚するわけないんだから、みんな別れるの前提で付き合ってるんでしょ?今までの人もそうだし、勇太君もそう。終わって当たり前」


 私のその発言に、凛花はこれぞ呆れ顔という顔を、惜しみなく顔面に貼り付けた。


「うっわ、乃亜のそういうところ悪魔!なんでそんなあんたに彼氏がいて、私にいないのよ!」


 うちわを唇で噛み締めて、キイーとか言ってくるものだから、私は爆笑しながら彼女の頭を叩いた。



「乃亜のどこが悪魔なの?」


 突如背後からしたその声に、背筋が凍る。


 カクカクとロボットのように振り向けば、真顔の勇太君が立っていた。

 ピリリと張り詰める空気。私ひとり、狼狽え出す。


「ち、ちがうのっ。これは凛花が勝手に言ってることでっ」


 いつからいた、どこから聞いていた。焦れば焦るほどに、口は上手くまわらない。

 彼はそんな私のさまを見て、柔和に笑った。


「あははっ。乃亜は朝から賑やかだね」


 その言葉にも何を返せばいいのか困った私は、とりあえずもう一度、凛花の頭を叩いておいた。


 昨日。「はい」と勇太君の手をとった。彼は驚いたように、そして嬉しそうに「ありがとう」を口にした。彼は確かに、私のことが好きなのだと思う。けれどその気持ちは、一時的なものだろう。


 恋心など続かない、愛などいつか冷める。例え愛し合えたとしても、終わりというものはやってくる。だから恋愛なんて、本気で好きな人とするものじゃない。

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