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 園内の飲食店はどこも満席で、とてもじゃないけど四人席は確保できそうになかった。


「乃亜と凛花で座ってゆっくり食えよ。俺達はどっかで立ち食いでいいし。なあ森?」

「うん、そうだね。ふたりなら座れるんじゃないかな」


 彩られた数々のメニューを見ても、食欲が湧かぬ私は言う。


「私、まだお腹空いてないの。その辺散歩してくるから、三人で食べて?」

「え、おい」


 私の腕を掴もうとした陸の手を躱し、人混みを掻き分けて表へ出た。


「ここら辺にいるから戻ってきてねーっ」

「おっけー!」


 凛花の声には明るく応えた、はず。



 自動販売機で水を買い、木陰に座る。

 夏休み初日である遊園地の賑わいをさりげなく眺めていると、居場所違いな自分に気付いてしまい、絶句した。やり場のない感情、気分が塞ぐ。これは奈緒さんに対する失望なのか、それとも陸への嫉妬なのか、はたまた凛花への羨望か。もはや全てだ。


 去年の夏は、勇太君といつも一緒にいた。図書館へ行って、勉強をして、告白をされて付き合って。彼の家にも行ったし、可愛いカフェでジュースも飲んだ。だけど今、私の隣に彼はいない。今年の夏の思い出のひとひらにも、彼が存在することはない。それが、愛を続けられない愚かな人間の実情だ。



 今日は長い。太陽はまだあんなに天の高いところ。


 先ほどの飲食店へ戻ると、凛花がひとりで手鏡を見ていた。


「お帰りっ。陸達は今トイレに行ってるよ。乃亜、本当に何も食べなくていいの?」

「うん大丈夫。実は朝ご飯、食べ過ぎちゃったんだよね」

「あははっ。それで遅刻するなしー」


 彼女はテーブルに手鏡を置いた。


「乃亜、森君どうよ?いい加減、付き合えっちゃえば?」


 彼女は私と森君をくっつけたがっている。それは春からひしひしと感じていた。


「森君と乃亜が付き合えばさ、こうやってダブルデートできるじゃんっ。楽しいと思わない?」

「凛花、私と森君はそういうのじゃないよ」

「そお?お似合いだと思うんだけどなあ。あ、そうだ。さっき陸がね、残したおかずくれたんだ。間接キスじゃんってツッコんだら、ちょっと耳赤くなってた。可愛いくない?」


 いつの間にやら食い縛っていた奥歯には、更にきりりと力が入る。


「乃亜も森君の耳、赤くしてみてよっ」


 これは彼女だけに対する感情ではなかったと思うけれど、口走るとは、おそらくこういうことを言うのだろう。


「あのさあ凛花。いい加減にしてほしいんだけど」

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