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 午前のうちに終わった大会は、私達桜橋高校が勝利した。メダル代わりのタオルを首にかけ、双葉と駅までの道を歩く。


「ねえ、借り物競争の時の彼って誰?乃亜ちゃんの長所、超さらさら言えてたじゃんっ」

「この前話した幼馴染」

「乃亜ちゃんの好きだっていう?」

「そう」


 先ほど得たパンを頬張りながら、彼女は言った。


「直感だけど、まだ頑張ればいけそうな気がする。彼には彼女がいるって言ってたけど、乃亜ちゃんがアタックすれば付き合えるよ絶対」


 うん、と大きく頷いて、背中を押そうとしてくれる彼女。だけど押されてはいけない理由(わけ)がある。


「この前も言ったけど、彼の恋人は私の親友だもん。だから応援してあげたい」

「愛情より友情ってやつだよね。乃亜ちゃんもそっちタイプだもんね」


 乃亜ちゃん「も」。引っかかった私が問うより先に、彼女は遠くを見つめて話し出す。


「それ、私の好きな人と一緒の理由だよ。彼の断り文句はいつも『親友の好きな子とは付き合えない』。そう言ってフラれるの。でもそんなのこっちは納得いかないよ。本当は両思いかもしれないのに、気持ちも教えてくれないまま、時間だけが過ぎて」


「でも」と反論しようとした私の口には「だから」と食べかけのパンを押し込まれた。


「自分の気持ちに嘘をつかないでよ、乃亜ちゃん。友情の方が大事とか、もう諦めなきゃいけないとか、そんなんじゃなくて。どっちにも本気で向き合えばいいじゃん」


 その言葉は、グサッと私の心に突き刺さる。パンを懸命に飲み込んで、彼女に聞いた。


「双葉はさ、何度も何度もフられた相手を諦めて前を向こうとしてる時に、今更やっぱり好きだ付き合おうって言われたら、ムカつかないの?」


 想像してみたのか、束の間彼女は空を見上げた。そして私へ視線を戻したその時は、向日葵みたいな笑顔だった。


「すっごい嬉しい。だってそんなの、夢みたいっ」


✴︎


 双葉と別れ、コンビニで立ち読みをしていると、目の前の窓ガラスにぬるっと人影。


「ひゃっ!」


 図らずとも狂う声。悪戯に成功して喜ぶ少年、陸と目が合った。


「何読んでんの?」と、彼は店内に入ってくる。


「ただの週刊誌。森君達と遊んでたんじゃないの?」

「さくっと飯食って別れた。今日はみんな、午後に予定があるんだって」


 そのまま奥に進んだ陸は、買い物をし始めた。私はわりと好きな芸能人のゴシップ記事に夢中だった。



「ほいっ」

「ひゃっ!」


 今度は首筋にあたった熱い何かに、素っ頓狂な声が出る。


「乃亜の分も買ったぞ。外カフェするべ」


 陸とホットブラックコーヒーのセットほど、贅沢なものはない。

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