⑥
七月下旬、夏休み前最後の週末。並河高校の最寄り駅で、双葉と待ち合わせた。
「今日ね、私の友達が受付で鉢巻き配ってるんだって。双葉のこと紹介してもいい?」
「うんもちろんっ。中学のお友達?」
「そう。バイトも一緒なんだ。大きくて見た目は迫力あるけど、話しやすいよ」
グレー一色の今日の空は、去年の体育祭を思い出させる。
校庭へ着くと、男女問わない大勢の生徒が目に入る。
「なんか軽く運動会みたいだね。双葉、ナンパにご用心」
「ラジャ。体操服じゃない観客もちらほらいるね。並河高校の生徒とかかな?」
「そうじゃない?」
そんな会話をしながら受付に向かえば、そこには二色の鉢巻きを手にした森君がいた。
「乃亜来たかー。桜橋校は赤い鉢巻きな」
「おはよう森君。今日は負けないよっ」
「こっちだって」
「そうそう、この子双葉ね。高校で一番の仲良し」
ぺこりと頭を下げた双葉には、森君もお辞儀で返していた。
上手く巻けぬ鉢巻きを森君に押し付けて、後頭部で結んでもらっていると、彼は私の背後で呟いた。
「今日、陸くるかも」
その言葉に勢いよく振り返れば鉢巻きは振り出しに。「前を向いてて」と注意を受ける。
「この前、中学の奴等と遊んでた時に今日のことを話したらさ、何人かで応援しに行くって言われた。あ、乃亜がいることは言ってないよ」
陸と会うとすればあのゲームセンター以来、約一ヶ月振りだ。
時が解決してくれることを願っているが、まだまだそれには時間を要す。
桜橋校エリアに着席した双葉と私は、パンフレットを手に出場競技を模索する。
「どれでもいいってなると迷うなあ。パン食い競争にでもしようかな。乃亜ちゃんは?」
「パンは取れる自信ないし、ハードルは倒す自信あるし、どうしよう」
「じゃあこれは?」
双葉の指の先、そこには「借り物競争」の文字。
「えー、お題が難しかったらどうすんのっ」
「でも運が良ければ勝てる競技だよ」
それもそうかと思い、運動音痴な私はそれを選んだ。伸びをしがてら辺りを見回す。
「観客増えてきたね」
「森君と乃亜ちゃんのお友達、いる?」
「うーん。これだけ人が多かったら、いても発見できないや」
二種類しかない鉢巻きの色に、体操着姿の生徒がうじゃうじゃ。陸がここを訪れたとしても、おそらく私の存在には気付かぬだろう。そう思い込めば、強張っていた心臓は幾らか解れた。
「よーいドン!」
双葉が出場したパン食い競争は、野太い声援が多かった。
「次は乃亜ちゃんだねっ。頑張って」
パンをゲットしご満悦な彼女。小さな拳を私に向ける。
「うん、行ってくるね」
パァンッと放たれた銃声と共に、ゲームは始まる。女子数人の内、ドベでお題へ辿り着き、慌てる手で開く用紙。
「え……」
そこには敗北を確信させる内容が書かれていた。




