③
川沿いは行かない。彼女持ちの陸と長く過ごす必要はない。
「お前スカート短くね?金髪にミニスカート、危ねえよ」
「そんなことないよ。うちの学校、みんなこのくらいだもん」
「変な男寄ってくんぞ」
足元の小石をひとつ蹴って、陸はそう言った。
「大丈夫。今日も友達の双葉って子だけが番号聞かれてて、私なんか相手にされなかった」
「へぇ、可愛いのその子?そりゃ、盾になっていいな」
普通に話せている自分に、少し驚く。
「楓は元気?」
「元気。あいつ最近、彼氏できたらしいぞ」
「うそ!私の楓がお嫁にいっちゃったあ〜」
「結婚してねぇよ」
こうしていつも通り会話ができるのは、私の努力では決してなくて、どんな機嫌の私を前にしても、常にブレずにいてくれる陸のお陰だ。
家のマンションが見えてきて、さようならまであと少し。咳を払って喉を整える。
「陸、ごめんね」
「何が」
「昨日の電話。心配してくれてたのに、態度悪くしちゃって」
「あーべつに、気にしてねーけど」
ぶっきらぼうな優しさに、また涙が出そうになってしまう。
「凛花のこと大事にしてね。あの子の初めての恋だから、私、めちゃんこ応援してる」
「……ん」
「私と陸はさ、これからもずーっと幼馴染ね。時々こうやって、近況報告でもしようよ」
「おう……そうだな」
陸は、私の心を読むなど簡単だろうから、私が涙を堪えたことくらい、わかったと思う。だけどもう、泣きそうな私を抱きしめはしない。彼が確実に、前へと進んでいる証拠だ。
エントランスで陸に背を向けた途端、下瞼すぐそこまできていた涙はあっという間に地に落ちた。だけどこれは、悲しみの涙なんかじゃなくて。
「陸……っ」
募る愛しさを流す涙だ。
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「レクリエーション大会?」
「うん、並河高校でやるんだって。乃亜ちゃん一緒に行こうよ」
森君が通う高校との交流会。そういえば以前そんなことを、彼が言っていたかもしれない。双葉と私は揃って参加用紙に記入した。
「レクリエーション大会、俺も参加するよ」
バイトの帰り道、森君に誘われゲームセンターへとやって来た。
「マルバツゲームは毎年難しいって噂だぞ。気をつけろ」
「あははっ。どう気をつければいいの」
彼がプレイしたいと言った戦闘ゲームまで向かう途中、私の足はふと、一台のクレーンゲーム機の前で立ち止まる。ケースの中にはあの魚のぬいぐるみが数匹いた。
森君が言う。
「これ、妖怪魚戦争のキャラクターじゃん」
「よ、妖怪?この魚、妖怪なの?」
「うん。ゲームの妖怪だよ」
これに似ていると言われた私って一体。
「この魚、ぼけっとした顔してるけどけっこう強くてさ、俺まだ一回も倒せてないわ。口から泥みたいな気持ち悪いの出してくるんだよ。それにあたると一発で死ぬ」
陸との淡い思い出が複雑な色へと変わろうとしたその時、背後から声がした。
「あれ、乃亜と森君じゃーん」




