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 川沿いは行かない。彼女持ちの陸と長く過ごす必要はない。


「お前スカート短くね?金髪にミニスカート、危ねえよ」

「そんなことないよ。うちの学校、みんなこのくらいだもん」

「変な男寄ってくんぞ」


 足元の小石をひとつ蹴って、陸はそう言った。


「大丈夫。今日も友達の双葉って子だけが番号聞かれてて、私なんか相手にされなかった」

「へぇ、可愛いのその子?そりゃ、盾になっていいな」


 普通に話せている自分に、少し驚く。


「楓は元気?」

「元気。あいつ最近、彼氏できたらしいぞ」

「うそ!私の楓がお嫁にいっちゃったあ〜」

「結婚してねぇよ」


 こうしていつも通り会話ができるのは、私の努力では決してなくて、どんな機嫌の私を前にしても、常にブレずにいてくれる陸のお陰だ。



 家のマンションが見えてきて、さようならまであと少し。咳を払って喉を整える。


「陸、ごめんね」

「何が」

「昨日の電話。心配してくれてたのに、態度悪くしちゃって」

「あーべつに、気にしてねーけど」


 ぶっきらぼうな優しさに、また涙が出そうになってしまう。


「凛花のこと大事にしてね。あの子の初めての恋だから、私、めちゃんこ応援してる」

「……ん」

「私と陸はさ、これからもずーっと幼馴染ね。時々こうやって、近況報告でもしようよ」

「おう……そうだな」


 陸は、私の心を読むなど簡単だろうから、私が涙を堪えたことくらい、わかったと思う。だけどもう、泣きそうな私を抱きしめはしない。彼が確実に、前へと進んでいる証拠だ。



 エントランスで陸に背を向けた途端、下瞼すぐそこまできていた涙はあっという間に地に落ちた。だけどこれは、悲しみの涙なんかじゃなくて。


「陸……っ」


 募る愛しさを流す涙だ。



✴︎

 ✴︎

✴︎

 ✴︎

✴︎



「レクリエーション大会?」

「うん、並河高校でやるんだって。乃亜ちゃん一緒に行こうよ」


 森君が通う高校との交流会。そういえば以前そんなことを、彼が言っていたかもしれない。双葉と私は揃って参加用紙に記入した。



「レクリエーション大会、俺も参加するよ」


 バイトの帰り道、森君に誘われゲームセンターへとやって来た。


「マルバツゲームは毎年難しいって噂だぞ。気をつけろ」

「あははっ。どう気をつければいいの」


 彼がプレイしたいと言った戦闘ゲームまで向かう途中、私の足はふと、一台のクレーンゲーム機の前で立ち止まる。ケースの中にはあの魚のぬいぐるみが数匹いた。


 森君が言う。


「これ、妖怪魚戦争のキャラクターじゃん」

「よ、妖怪?この魚、妖怪なの?」

「うん。ゲームの妖怪だよ」


 これに似ていると言われた私って一体。


「この魚、ぼけっとした顔してるけどけっこう強くてさ、俺まだ一回も倒せてないわ。口から泥みたいな気持ち悪いの出してくるんだよ。それにあたると一発で死ぬ」


 陸との淡い思い出が複雑な色へと変わろうとしたその時、背後から声がした。


「あれ、乃亜と森君じゃーん」

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