①
熱が下がれば日常はすぐにやってくる。高校生になってから初めて、私は半袖シャツに腕を通した。
「乃亜ちゃん、昨日どうして休んだの?」
登校早々心配してくれたのは、最近仲良くなったクラスメイトの双葉だった。
「ちょっと風邪引いちゃってて。でも昨日ずっと家にいたら、すっかりよくなったよ」
「そうだったんだ。実はね、私、乃亜ちゃんとふたりで遊んでみたくて、昨日の放課後に誘おうと思ってたの。今日も空いてるんだけど、乃亜ちゃん病み上がりだし、無理だよね?」
その気持ちを嬉しく思い、笑顔になった。
「私も双葉と色々な話してみたいっ。遊ぼうよ!」
「ほんとに?やったあっ」
にっこり笑った彼女はチャイムと同時に自身の席へ戻って行く。ハーフのような顔立ちにゆるふわヘアー。同級生の男子数名は、彼女に告白したって噂だ。
✴︎
放課後。私達は校舎最寄りのファミリーレストランへと腰を据える。
「乃亜ちゃんって、どうしてこの高校にしたの?」
パンケーキを頬張りながら、双葉が聞く。私は相も変わらずホットのブラック。
「大きな理由はないの。家の周りは偏差値高い学校が多かったから、消去法で」
「そうなんだ。でもこの学校いいよね。校則ゆるいし、いい先生も多いし」
「私もそれ思った……って、あれ?」
華奢な彼女の背中越し、同じ制服に身を包んだ男子がひとり、入店するのが目に入る。彼はゆっくりこちらへやって来た。
「双葉、あれってうちの学年じゃない?」
「どれ?」
そう言って振り返った彼女の前で、彼は立ち止まる。
「す、須和双葉ちゃんっ?」
「そうですけど……」
彼の視線は双葉へ直線。蚊帳の外の私は、ふたりのやり取りを眺め入る。
「俺、隣のクラスの尾崎慎吾っていうんだけど。よ、よかったら連絡先交換しない?」
「あー……はい、いいですけど」
「まじ?やったっ」
小さくガッツポーズを作る彼は、遊び目当てには見えなかった。ただ純粋に好きな子と繋がりを持ちたいのだと、そう思えた。
目的を成し遂げた彼は、ようやく私に目を向けた。
「ごめんね、急に。ふたりがこの店に入るの見えたからさ、つい」
「気にしてないよー」
「君は、ええっと……」
「双葉と同じクラスの乃亜です」
「そっか。双葉ちゃん、乃亜ちゃん、また学校で」
軽い会釈をし、スマートに店外へ出た彼は好印象。私は双葉に視線を移す。
「尾崎君いいじゃん、礼儀正しくて」
浮かれる私に対し、彼女は溜め息を漏らしていた。




