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 熱が下がれば日常はすぐにやってくる。高校生になってから初めて、私は半袖シャツに腕を通した。


「乃亜ちゃん、昨日どうして休んだの?」


 登校早々心配してくれたのは、最近仲良くなったクラスメイトの双葉(ふたば)だった。


「ちょっと風邪引いちゃってて。でも昨日ずっと家にいたら、すっかりよくなったよ」

「そうだったんだ。実はね、私、乃亜ちゃんとふたりで遊んでみたくて、昨日の放課後に誘おうと思ってたの。今日も空いてるんだけど、乃亜ちゃん病み上がりだし、無理だよね?」


 その気持ちを嬉しく思い、笑顔になった。


「私も双葉と色々な話してみたいっ。遊ぼうよ!」

「ほんとに?やったあっ」


 にっこり笑った彼女はチャイムと同時に自身の席へ戻って行く。ハーフのような顔立ちにゆるふわヘアー。同級生の男子数名は、彼女に告白したって噂だ。


✴︎


 放課後。私達は校舎最寄りのファミリーレストランへと腰を据える。


「乃亜ちゃんって、どうしてこの高校にしたの?」


 パンケーキを頬張りながら、双葉が聞く。私は相も変わらずホットのブラック。


「大きな理由はないの。家の周りは偏差値高い学校が多かったから、消去法で」

「そうなんだ。でもこの学校いいよね。校則ゆるいし、いい先生も多いし」

「私もそれ思った……って、あれ?」


 華奢な彼女の背中越し、同じ制服に身を包んだ男子がひとり、入店するのが目に入る。彼はゆっくりこちらへやって来た。


「双葉、あれってうちの学年じゃない?」

「どれ?」


 そう言って振り返った彼女の前で、彼は立ち止まる。


「す、須和双葉(すわふたば)ちゃんっ?」

「そうですけど……」


 彼の視線は双葉へ直線。蚊帳の外の私は、ふたりのやり取りを眺め入る。


「俺、隣のクラスの尾崎慎吾(おざきしんご)っていうんだけど。よ、よかったら連絡先交換しない?」

「あー……はい、いいですけど」

「まじ?やったっ」


 小さくガッツポーズを作る彼は、遊び目当てには見えなかった。ただ純粋に好きな子と繋がりを持ちたいのだと、そう思えた。

 目的を成し遂げた彼は、ようやく私に目を向けた。


「ごめんね、急に。ふたりがこの店に入るの見えたからさ、つい」

「気にしてないよー」

「君は、ええっと……」

「双葉と同じクラスの乃亜です」

「そっか。双葉ちゃん、乃亜ちゃん、また学校で」


 軽い会釈をし、スマートに店外へ出た彼は好印象。私は双葉に視線を移す。


「尾崎君いいじゃん、礼儀正しくて」


 浮かれる私に対し、彼女は溜め息を漏らしていた。

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