⑨
頬を赤らめながら話す彼女の姿は、恋をしている少女そのものだった。陸と凛花が付き合った。それを改めて実感させられた。
「乃亜、聞いてる?」
親友がする初めての恋バナにも関わらず、真顔で相槌すらも打たぬ私に、凛花の顔が途端に歪んだ。私は慌てて笑顔を貼り付ける。
「り、凛花と陸かあっ。なんか想像つかないなあ」
「あははっ。だよね。キスした時も自分でそう思った」
しかしその笑顔も、彼女の言葉でぺらりと落ちた。
「告白オッケーもらった時にチュッと、私から。酔っ払いって凄いね。なんでもできちゃうわ」
陸の唇の感触を凛花も知っているのかと思うと、口に手をあてがうほどに、気分は悪くなった。
「乃亜、大丈夫?なんか顔色悪くない?」
吐き気がする。頭痛がする。体調は一気に急降下。
「ご、ごめん……おめでとう、凛花」
「なんか今日の乃亜うわの空だし、風邪でも引いてる?」
「ううん……」
「急に呼び出してごめんね、そろそろ帰ろっか」
✴︎
凛花と別れた後の私は最近ついた癖なのか、川の方へと歩いてきてしまっていた。ぐらりぐらりと揺蕩う頭。精神状態が、体までをも侵す。
草のクッションへ倒れ込むように身を預け、空を見た。時折奏でられる草音を耳に、思い耽る。
もし、陸が私の気持ちと同じくらい私を好きでいてくれたとすれば、今までどれだけ辛かったのだろう。私に彼氏ができる度に、こんなやりきれなさに襲われたのだろうか。苦しくて、切なくて、だけどどうすることもできないもどかしさに。
涙が真横に流れて垂れて、耳の穴が冷たい。今までどれだけ陸に対して身儘で、最低だったのか、この心の痛みが答えとなった。
暗い暗い闇の底。差し伸ばされる手はもうない。




