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 卒業式のリハーサルばかりがやたらと増えたかと思ったら、本番の日はすぐに来た。

 仲間の半分以上が同じ学校に進学する小学生の時とは違い、中学の卒業がこんなにも切ないとは。


「あー、終わっちゃった!中学生活、結局彼氏できなかった!」


 卒業証書の筒で腿を叩きながら、凛花は空に向かって嘆いていた。同級生や先生との写真撮影も終わり、皆が談笑している校庭。この敷地から一歩外に出れば、もうここへ通うことはない。そんな想いからだろうか、校庭の賑わいは、なかなか収まらない。


「凛花、恋人作りは高校で頑張ろう!彼氏できたら報告ね!」

「そっちこそ彼氏できたらちゃんと言ってよ。この前みたく、事後報告なしだよ」

「あははっ。了解」


 そんなやり取りをしている最中も、私の黒目は校庭中を駆け巡っていた。


「乃亜ー」


 名を呼ばれて、振り返る。


「勇太君」


 わいわい群がる男子の輪を抜け、勇太君が駆けてきた。


「乃亜、写真撮ろう?」

「うん。私の携帯でも」


 いらぬ配慮をした凛花がカメラマン役を買って出て、手際よくシャッターを切る。


「ありがとう、凛花ちゃん」


 撮影が終わり、携帯電話を受け取る勇太君。


「菊池勇太の高校はけっこう遠いんだっけ。もうあんまり会わないと思うけど、元気でね」

「凛花ちゃんも元気で。バスケ頑張ってね」


 彼の笑顔は、桜ともよく似合う。


「乃亜も、元気で」


 そう言って、差し出される手。


「勇太君も」


 その手を友達としてとったのは初めてだったけれど、今日の握手が一番しっくりときた。


「そろそろみんな、校庭出てくね。私達も出る?」


 疎らになってきた生徒を見て、凛花が言った。役立たずな私の黒目は、未だに目当てを発見できずにいる。


「乃亜、誰か探してるの?」

「陸って、もう校庭出ちゃったのかなあ」

「陸?陸なんか近所なんだから、いつでも会えるでしょ。お別れ言う必要なくない?」

「そうだけどさ」

「本当、あんた達の幼馴染愛はすごいね」


 勇太君でさえ気付いた私のこの気持ちを、凛花はとうとう三年間知らぬままに終わった。


「やっぱいいや。帰ろっか」


 後ろ髪を引かれたが、この場を離れることを決めた。


 校庭からコンクリートに変わるギリギリの位置に立ち、凛花が言う。


「いっせーのせで、この線越えない?」

「うん」

「行くよ」

「「いっせーのっ──」」


 さようなら、中学生の自分。



「「せ!」」



 グレーの地面に着地して、ゆっくりと後ろを振り向けば、校舎はもう懐かしく思えてしまった。


「ばいばい中学!今までサンキュ!」


 凛花は少し、涙ぐんでいる。私も叫んだ。


「いっぱい青春をありがとう!」

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