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『試験行ってきまーす!乃亜も頑張って!』


 受験当日、朝の電車内。はつらつとした凛花のメールに、鼓舞される。


『私も行ってくる!お互い頑張ろうね!』


 空席に座らないのは緊張のせいなのか。流れゆく街並みを、私は窓際で眺めていた。


『隣の陸も、応援してるってさ!』


 そしてそれに対する返信に手間取ってしまうのも、おそらく緊張のせいだ。


『はーい。サンキュー』


 見慣れた街が、遠ざかる。


 同じ時、同じ空の下で目標は一緒なのに、電車が違うというだけで、こんなにも離れ離れに感じてしまう陸との距離。

 私の鞄についたふたつの御守りは、電車に揺れて、時折チリンと重なった。



✴︎

 ✴︎

✴︎

 ✴︎

✴︎



「神様、ありがとうございましたっ」


 合格発表当日、陸と私は神社にいた。


「お前、律儀だな」

「だってこのアホな私達が合格できたのは、元旦にここでお願いしたからだよ?ほら、陸も手合わせて御礼言って!」

「はいはい」


 そう言うと、陸は渋々手合わせ目を閉じた。私も瞼を下ろし、手を合わせる。

 真っ暗な視界の中、彼の声はすぐにした。


「もういい?」

「まだ」

「えー。まだかよ」

「早過ぎ」

「………もういい?」

「もうちょっと!」


 もうちょっと。もうちょっとだけ、こうしていようよ。



「陸。願いが叶った御守りって、どうすればいいの?」


 御礼参りを終えた私達は、鈴の前で話をする。


「さぁ。来年までとっておけば?」

「もう使わないのに?お焚き上げがなくても回収してくれないのかなあ?」


 携帯電話片手に私が調べだすと、陸はそれをひょいと奪った。


「えっ、何すんのっ。返してよ」


 私の手の届かないところまで高く掲げ、真剣な顔で白い息を吐く。


「来年でいいじゃん」

「え?」

「来年また、初詣の時にでも一緒に燃やせばいいよ」


 そう言って、陸は私の鞄に携帯電話を押し込んだ。くるりと方向転換し、境内の階段を降りて行く。私はそんな背中を追いかけた。


「それって、来年の初詣も一緒に行こーって意味?」


 陸は振り向かない。返答せずに、先を行く。


「ねえってばっ」


 彼の赤い耳が、もうそのまま答えなのだろうけれど、私は執拗に聞いてしまう。


「ねえ陸。今誘ったんでしょ?『来年の初詣も俺と一緒に行こう』って、そういう意味でしょ?」

「しつけえなあー」

「素直になりなよっ」

「うるせえ」


 自然に掴んだ陸の腕を離せない。日毎に増す、この空漠たる思い。


「誘ったって言えっ。陸のひねくれ者っ」

「しつけえってば」


 だけど陸が来年の約束をくれたから、寂しくなんかない。

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