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『試験行ってきまーす!乃亜も頑張って!』
受験当日、朝の電車内。はつらつとした凛花のメールに、鼓舞される。
『私も行ってくる!お互い頑張ろうね!』
空席に座らないのは緊張のせいなのか。流れゆく街並みを、私は窓際で眺めていた。
『隣の陸も、応援してるってさ!』
そしてそれに対する返信に手間取ってしまうのも、おそらく緊張のせいだ。
『はーい。サンキュー』
見慣れた街が、遠ざかる。
同じ時、同じ空の下で目標は一緒なのに、電車が違うというだけで、こんなにも離れ離れに感じてしまう陸との距離。
私の鞄についたふたつの御守りは、電車に揺れて、時折チリンと重なった。
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「神様、ありがとうございましたっ」
合格発表当日、陸と私は神社にいた。
「お前、律儀だな」
「だってこのアホな私達が合格できたのは、元旦にここでお願いしたからだよ?ほら、陸も手合わせて御礼言って!」
「はいはい」
そう言うと、陸は渋々手合わせ目を閉じた。私も瞼を下ろし、手を合わせる。
真っ暗な視界の中、彼の声はすぐにした。
「もういい?」
「まだ」
「えー。まだかよ」
「早過ぎ」
「………もういい?」
「もうちょっと!」
もうちょっと。もうちょっとだけ、こうしていようよ。
「陸。願いが叶った御守りって、どうすればいいの?」
御礼参りを終えた私達は、鈴の前で話をする。
「さぁ。来年までとっておけば?」
「もう使わないのに?お焚き上げがなくても回収してくれないのかなあ?」
携帯電話片手に私が調べだすと、陸はそれをひょいと奪った。
「えっ、何すんのっ。返してよ」
私の手の届かないところまで高く掲げ、真剣な顔で白い息を吐く。
「来年でいいじゃん」
「え?」
「来年また、初詣の時にでも一緒に燃やせばいいよ」
そう言って、陸は私の鞄に携帯電話を押し込んだ。くるりと方向転換し、境内の階段を降りて行く。私はそんな背中を追いかけた。
「それって、来年の初詣も一緒に行こーって意味?」
陸は振り向かない。返答せずに、先を行く。
「ねえってばっ」
彼の赤い耳が、もうそのまま答えなのだろうけれど、私は執拗に聞いてしまう。
「ねえ陸。今誘ったんでしょ?『来年の初詣も俺と一緒に行こう』って、そういう意味でしょ?」
「しつけえなあー」
「素直になりなよっ」
「うるせえ」
自然に掴んだ陸の腕を離せない。日毎に増す、この空漠たる思い。
「誘ったって言えっ。陸のひねくれ者っ」
「しつけえってば」
だけど陸が来年の約束をくれたから、寂しくなんかない。




