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 乃亜と勇太が別れたら、俺、お前に告白していい?もちろん、ゲームじゃないやつ。


 そう言った陸には伝えなければいけないと思い、その日の夜に、私は彼を呼び出した。


「どれだけしつこいんだよ、勇太の奴」


 公園ベンチの笠木に両腕を預け、陸は不快を露わにした。


「というか普通、オッケーするか?乃亜もどれだけお人好しだよ」


 言い訳も弁解もない私は陸の隣、彼の「もう帰ろうか」をひたすら待つ。寒いくらいの夜なのに、公園にはカップルが多かった。


 事実を告げただけで無言を貫く私との間を突として詰めた陸は、人目憚らずにキスをした。唇を微かに開けて、彼の温もりを受け入れる。ゆっくりとその唇を外した陸は、こう言った。


「また、拒否しないのな」


 理解し難い私の行動に、彼の目がつり上がる。


「なんなのお前。俺の気持ち知ってて勇太と付き合って、別れるって言ったのにまた付き合って、だけど俺のキスは受け入れる。何がしたいの?」


 頭を抱えた陸は、地に目を落として溜め息を吐いた。


「俺のこと、嫌い……?」


 陸の丸まった背中に答えを投げる。


「嫌いじゃない」

「勇太が好きなの?」

「好きじゃない」

「じゃあ──」


 ザワッと嫌な風が吹く。それが皮膚より外なのか内なのかは、わからなかった。


「俺のこと、好き?」


 ほらまた、ザワッと。


 私の体はいつだって、心に逆らう天邪鬼だ。見る気などなくとも目で追って、冷静を保ちたくとも涙を落として。


「好き……」


 そして今日も、何ひとつとして言うことをきかない。


「私、陸が好き」


 昼間の猫のような瞳をつけて、陸は顔を上げた。


「え……?」

「でも、陸とは付き合えない」

「は……?」

「失いたくないから」


 タガでも外れてしまったのか、私は小さな頃からずっと胸に抱えていた、蟠りを迸らせた。


「恋愛なんて所詮、終わりがくるでしょう?私のお父さんは浮気ばっかりだし、陸のお母さんだって離婚した。どうせこの公園にいるカップルだって、一年後またいるかって言ったら半分もいないよ。恋愛は始まったらいつか終わりがくるんだよ。私は、勇太君や他の人とは、いつか終わるって覚悟で恋愛できるけど、陸とは絶対に終わりたくない。そんな悲しい未来、想像もしたくない。だから陸とはずっと今みたいな関係でいたいの。始まりも終わりもない、幼馴染のままがいい」


 機械の如く淡々と述べていると、陸が狼狽え出した。


「ちょ、ちょっと待って。つまりは俺達、両想いってこと?」

「うん」

「だけど俺は幼馴染の枠にいるから、乃亜の恋愛対象外?」

「大切だから、そこから出したくない」


 心底愛しているから。だから陸とは付き合えない。


 再び頭を抱えた陸は、何やらぶつぶつ呟いて、整理し終えた頭をまた上げた。


「乃亜と付き合ったら、絶対別れないっていう自信があるんだけど」

「今の自信は関係ないよ。未来の気持ちはわからないでしょう?」

「この気持ちのまま、ずっといればいいじゃん」

「それも仮定だよ。確定じゃない」


 陸が止まる。苛々し始めている。


「……じゃあ何。乃亜はこれからもずっと、終わっても平気な奴とだけ付き合っていくの?乃亜は俺を好きなのに?他の奴を選ぶの?」


 こくんと頷いて、小さく「ごめん」と言った。


「納得いくかよそんなの……」


 陸もまた、独り言のように小さな声だった。

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