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「ごめん勇太君。み、見ないで……」


 公衆トイレへと飛び込んだ私は、付き添おうとした勇太君を突き放し、上着だけを彼に預けた。今日はほとんど何も食していないから、胃液が喉を刺激し痛い。


 涙ぐみながら不快な時間をトイレで過ごしていると、プルルと聞こえた着信音。私のものか、勇太君のものか。例え私のものだとしても、携帯電話は上着のポケットの中にある。そしてこの状況では、出るに出られない。


「はい」


 着信音が止むと同時に、彼の声がした。


「乃亜ならまだ一緒にいるよ。え?別れてないけど」


 鳴っていたのは私の電話。そしてその相手は陸。話の内容から、そう悟った。


「もう切っていい?どの立場で言ってくるんだよ」


 焦りも戸惑いも襲うのに、どうしようもない吐き気のせいで、私は未だに便器から顔を上げられない。


「乃亜は俺の彼女だ。気安く電話なんてしないで欲しい」


 心労が、気持ち悪さに拍車をかける。



✴︎

 ✴︎

✴︎

 ✴︎

✴︎



「こんなとこへ呼び出して、なんの用?」


 翌朝のホームルーム。そこに勇太君の姿はなかった。


「学校の屋上って入っちゃいけないんだよ?受験生なのにバレたらどうすんの?陸が責任とってくれよな」


 どうしていないのだろう。


「ああ、責任とるよ」

「で、用件は何?」

「勇太さあ、乃亜が別れたいって言ってんだから、別れてやれよ」

「は?」

「どうせ、お前が駄々こねたんだろ」

「……悪いけど、乃亜が昨日俺にくれた言葉知ってる?」

「そんなん知らねえよ」

「なら教える。『俺がお腹の子の父親で良かった』って、そう言ったよ」


 ドゴッ!

 

 勇太君がなかなか教室に現れないのは、もしかすると昨日の電話が関係しているのではないかと、胸騒ぎが止まらなかった。


「いってえ……」

「勇太が避妊しなかったから乃亜は苦しんでんだよ!それなのに何が父親だよふざけんな!結婚もできねえ年齢で乃亜のこと孕ませやがって!アイツがどれだけ辛い思いしてんのか、知ってんのかよっ!」

「……相変わらず、陸は熱いな」

「はあ!?」

「予想通り、陸はもう知ってたんだね、妊娠のこと」

「そうだよ、もうこれ以上乃亜を悩ますな!別れてやれよ!」

「おい離せよ。陸には関係ないだろっ」

「関係あんだよ!大体お前は勝手すぎんだよ、ただヤりてーだけのオスだよ!自分の所有物みたいに色んなとこキスマークつけて、乃亜を囲ってるだけじゃねえか!」

「おい、陸」

「んだよっ」

「色んなとこのキスマーク……?首以外は俺、脱がなきゃ見えない箇所にしかつけてないんだけど」

「あ、やべ」


 ボゴッ!


 時計を見る。もうそろそろ、ホームルームが終わる。


「……ッテエ」

「陸も結局変わらないじゃないか!人の彼女と勝手に寝て、何を俺に忠告してくれてんだよ、ふざけんな!」

「お、俺はっ」

「ヤりたいなら人の恋人でも構わない。陸の方が、よっぽどただのオスだよ」

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