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①②

 途中、陸は私の首に触れた。


「これ……外していい?」


 私の返事を待たずして、ペリッと剥がされる絆創膏。咄嗟に手で覆うけれど、その手もまた、指を絡めながら剥がされてしまう。


「まだ、痕残ってるんだね……」


 ググッと奥歯を噛み締めて、悔しそうにする陸に胸が詰まる。


 しかし驚いたのは、次の行動だ。


「え、陸っ」


 多少の痛みを伴うほど強く、深く、陸はそこに吸い付いた。どうしたらいいのかわからずに、私はただ目の前に見えた、彼の髪の毛を掴んでいた。


 唇を離した陸は言う。


「上書き」


✴︎


「送らなくていい」と玄関先で告げたけれど、陸は私の後ろをついてきた。どちらが言うまでもなく、遠回りの川沿いを歩く。


 秋めいた風。そろそろ暑さから解放される。


「乃亜」


 風と遊ぶ髪の毛を押さえていると、隣に追いついた陸が言う。


「俺、今日のことちゃんと勇太に……勇太に正直に、言うべきだよな?」


 私は愚か者だから、あれだけ求めた陸のことを、疎ましくも感じてしまうんだ。


「言わなくていい。事故みたいなものだし」


 こんな風に、冷たく言い放つ。


「俺は、事故だとは思ってないよ」


 だけど陸は、続けてくる。


「確かにどうかしてた。乃亜が好きでもない勇太とヤッたって知ってムカツいて、感情のままにお前を抱いた。でも俺はまだ足りねえっ。もっとお前が欲しいし、アイツから奪いたいって思ってるっ」


 こんな日に限って、どうして川辺には誰もいないのだろう。ここが人溢れる雑踏の中ならば、陸だってこんなにも声を荒げないのに。


「俺は乃亜のことが好きだから、諦められねえよっ!」



 手を離せば、髪が旗のようにはためいた。川がちゃぷんと波をうつ。絡む視線。


「もう、やめて……」


 歯の隙間から、精一杯陸を否定した。


「そんなこと言わないで、幼馴染でいてよっ……」


 恋も愛もすぐ消える。陸と私の間には、そんな薄っぺらいものはいらない。

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