⑧
「はーいっ、ここで少し休憩ーっ。各自水飲んで、また十分後に再開ねー」
先生の合図で、凛花と私はドサッと地面に尻を落とす。
「意外とハードなダンスッ」
そう言って、彼女は体操着の中に風を送る。
「男子達は騎馬戦かあ」
ふたつに区切った校庭の片面では、男子による騎馬戦の練習が行われていた。本番さながらに盛り上がる彼等をぼんやり眺めていると、手で丸く双眼鏡を作った凛花は言った。
「お、菊池勇太の番じゃん!わっ、しかも相手、陸だよ!騎手対決っ」
目を細めて見てみれば、そこには確かにふたりの姿。
「なんか面白そう!近くで見ようよ!」
瞬く間に疲れが吹き飛んだのか、彼女は私を置き去りにして走り出す。
「ちょっと、待ってよっ」
私も慌てて腰を上げ、その後を追った。
「位置について!」
バンッ!というピストルの音と共に、ゲームは始まった。
先に仕掛ける陸。上手く躱す勇太君。次は勇太君が後ろに回り込む。陸が手で払う。攻める、逃れる、また攻める。
どちらも譲らない中、いつの間にやら観衆もたくさん集まって、ふたりの名前を叫んでいた。凛花が言う。
「乃亜は菊池勇太でしょ?じゃあ私は、陸を応援するね。いっけー陸ー!」
遠慮なしに陸の名を口にする彼女の横、喉に空気が引っかかる。私は、どちらを応援したいのだろう。
どちらの名も呼べぬまま立ち尽くす最中、勇太君の見事な戦法に、陸が体勢を崩した。
「あっ」
苦しい姿勢、だけど落ちまいと、必死に耐えている。私は息を吸った。
「り、陸!頑張って!」
その瞬間、陸は立て直したようにも見えたがそのまま落馬。勝負は勇太君の勝ち。広い校庭の空は、歓喜と落胆の声で埋め尽くされた。
砂に塗れた陸の背中は哀愁いっぱいで、まるで何か大きな闘いに負けたようにも思えた。
「ほら女子!始めるわよー!」
女子演技指導担当の先生が遠くで叫ぶ。女子達は火花のように、いっせいにその場から散っていく。
「ほら乃亜、行くよ!」
「う、うんっ」
私も後ろ髪ひかれる思いでその場を離れた。
「応援するの、菊池勇太じゃないんかい!」
途中、凛花が走りながら私にツッコミを入れた。私も自分で自分の頭をハリセンで叩きたいくらいだ。
結局、陸なんかいっ。




