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「はーいっ、ここで少し休憩ーっ。各自水飲んで、また十分後に再開ねー」


 先生の合図で、凛花と私はドサッと地面に尻を落とす。


「意外とハードなダンスッ」


 そう言って、彼女は体操着の中に風を送る。


「男子達は騎馬戦かあ」


 ふたつに区切った校庭の片面では、男子による騎馬戦の練習が行われていた。本番さながらに盛り上がる彼等をぼんやり眺めていると、手で丸く双眼鏡を作った凛花は言った。


「お、菊池勇太の番じゃん!わっ、しかも相手、陸だよ!騎手対決っ」


 目を細めて見てみれば、そこには確かにふたりの姿。


「なんか面白そう!近くで見ようよ!」


 瞬く間に疲れが吹き飛んだのか、彼女は私を置き去りにして走り出す。


「ちょっと、待ってよっ」


 私も慌てて腰を上げ、その後を追った。

 


「位置について!」


 バンッ!というピストルの音と共に、ゲームは始まった。

 先に仕掛ける陸。上手く躱す勇太君。次は勇太君が後ろに回り込む。陸が手で払う。攻める、逃れる、また攻める。

 どちらも譲らない中、いつの間にやら観衆もたくさん集まって、ふたりの名前を叫んでいた。凛花が言う。


「乃亜は菊池勇太でしょ?じゃあ私は、陸を応援するね。いっけー陸ー!」


 遠慮なしに陸の名を口にする彼女の横、喉に空気が引っかかる。私は、どちらを応援したいのだろう。



 どちらの名も呼べぬまま立ち尽くす最中、勇太君の見事な戦法に、陸が体勢を崩した。


「あっ」


 苦しい姿勢、だけど落ちまいと、必死に耐えている。私は息を吸った。


「り、陸!頑張って!」


 その瞬間、陸は立て直したようにも見えたがそのまま落馬。勝負は勇太君の勝ち。広い校庭の空は、歓喜と落胆の声で埋め尽くされた。


 砂に塗れた陸の背中は哀愁いっぱいで、まるで何か大きな闘いに負けたようにも思えた。



「ほら女子!始めるわよー!」


 女子演技指導担当の先生が遠くで叫ぶ。女子達は火花のように、いっせいにその場から散っていく。


「ほら乃亜、行くよ!」

「う、うんっ」


 私も後ろ髪ひかれる思いでその場を離れた。


「応援するの、菊池勇太じゃないんかい!」


 途中、凛花が走りながら私にツッコミを入れた。私も自分で自分の頭をハリセンで叩きたいくらいだ。


 結局、陸なんかいっ。

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