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 いつものコンビニで、今宵の飯を選ぶ。パンやおにぎりをカゴに入れ、最後に寄るのは菓子コーナー。ひとつに目標を定めると、棚へと手を伸ばす。


「あ、すみませんっ」


 ふいにその手とぶつかった手の持ち主に頭を下げると、そこには陸がいた。


「のーあっ。何やってんの?」


 耳から耳まで白い歯を見せて戯ける彼に、教室で抱えた不安が一気に失せた。


 私のカゴに目を落とした陸は、目を丸くさせてこう言った。


「うっわ、もしかして晩飯?しけたもん食ってんなあー。栄養にならんぞ」

「か、勝手に見ないでよっ。そしてそのチョコ、買いたいから返してっ」


 陸の手には、先ほど私が狙いを定めた菓子箱が握られていた。彼は「これか?」と嫌味たらしくそれを揺り動かす。


「俺も食いたいからやだ」

「はあ!?最後の一個じゃん!返してっ」

「やだねー」


 ヘソを曲げる私などお構いなし。陸はスタスタとレジへ進んだ。


 会計を終わらせ店を出ると、先に表へ出ていた陸が、犬のように戦利品を咥えていた。


「チョコ泥棒……」


 キッと睨んでから家路を行く。陸は後をついて来る。


「乃亜。うまいぞ、これ」

「あっそ。性格悪っ」

「はははっ。くっやしそ〜」


 そんなやり取りをしているうちに、陸は自宅を通り過ぎた。


「どっか行くの?」

「夜だし送ってあげようと思って」


 意地悪なんだか優しいんだか、彼は時折掴めない。


「晩飯買ってるってことは、親父さんまた遅いの?」


 敗者の隣で堂々とふたつ目のチョコを頬張って、陸は聞く。やはり意地悪だ。


「そうっ。今日も明日も明後日も、一週間はコンビニご飯っ」

「そっか……」


 陸の声は、僅かに暗くなったかもしれない。心配をかけたかなと思ったその時、ピコンと携帯電話が鳴った。


「メール?」

「うん、勇太君だ。塾終わって今から帰るって」


 そのメールに私が返信している最中の陸は、ずっと無言だった。


「私も、勉強しよっと」


 マナーモードに切り替えた携帯電話をポケットに戻して、私は言った。


「どうした、急に」

「みんなが頑張ってる中、焦ってるのは事実だし。そろそろ本気で勉強やらないと」

「高校、行く気になったのな」

「行かないと漫画も貸してくれない、意地悪な幼馴染がいるからね」

「漫画の為かよ」


「そう!」と私がきっぱり断言すると、陸も「作戦成功!」と胸を張った。

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