①
「乃亜。飲み物何にする?」
「オレンジにしよっかな。勇太君は?」
「じゃあ俺もそれ」
地元の駅から二駅先にあるリゾートカフェ。日曜日の勇太君と私はそこにいた。
「こんな可愛いカフェがあったの知らなかった。勇太君、よく知ってたね」
彼の私服は、夏休み以来。
「前に母親と来たことがあるんだ。デートっぽいでしょ」
そう言って彼は、コップの中の氷を指で回した。
「この前の乃亜、だいぶ疲れてるみたいだったけど平気?」
「この前?」
「うん、学校でずっと寝てた日」
ああ。陸の家に泊まった次の日のことだ。
「前日の女子会がちょっと長引いて……」
「そうなんだ。凛花ちゃん?」
「いや、えーっと……後輩っ」
「へえ。後輩にも仲良い子がいるんだね」
やましいことなど何もないが、『陸の妹』というワードは伏せた。
彼はまた、氷を回す。
「あーあっ。もっと早くに乃亜と付き合いたかったな」
運ばれてきたパスタをフォークに巻きつけていると、勇太君が残念そうに言った。
「もし受験生じゃなかったら、もっと乃亜とたくさん遊べたのにって思うよ。勉強は好きだけど、乃亜ともずっとこうしていたい」
ストレートな想いを口にする彼に、胸がはむっと啄まれる。
「一年の時に乃亜と仲良くなれなかったのが失敗だな。何組にいたの?」
「D組。勇太君は?」
「俺はA組。くそー。AとDじゃ、体育の授業も一緒じゃないもんなあっ」
学級委員で優等生の彼。こんなにも悔しそうな顔は、初めて見る。
「中二の時、俺のクラスの森と付き合ってたでしょ?」
「うん。二ヶ月くらいかなあ?」
「その時クラスに時々来る乃亜を見て、可愛いなって思ってたんだよね。森の彼女だったから、恋愛対象ではないけど」
照れた。可愛いという単語は、女ならば誰でも嬉しく思う。
頬杖をついた彼は、瞼で半分隠れた瞳を私へ向けた。
「食べ終わったから、乃亜でも見てよっと」
そう堂々と宣告されて、私の顔は熱くなる。
急いで食べた。口元を隠して食べた。それでも喉から先がうまく通らずに、そこで時間を食ってしまう。そんな私に彼はトドメを刺す。
「可愛いなあっ、もうっ」




