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「乃亜。飲み物何にする?」

「オレンジにしよっかな。勇太君は?」

「じゃあ俺もそれ」


 地元の駅から二駅先にあるリゾートカフェ。日曜日の勇太君と私はそこにいた。


「こんな可愛いカフェがあったの知らなかった。勇太君、よく知ってたね」


 彼の私服は、夏休み以来。


「前に母親と来たことがあるんだ。デートっぽいでしょ」


 そう言って彼は、コップの中の氷を指で回した。


「この前の乃亜、だいぶ疲れてるみたいだったけど平気?」

「この前?」

「うん、学校でずっと寝てた日」


 ああ。陸の家に泊まった次の日のことだ。


「前日の女子会がちょっと長引いて……」

「そうなんだ。凛花ちゃん?」

「いや、えーっと……後輩っ」

「へえ。後輩にも仲良い子がいるんだね」


 やましいことなど何もないが、『陸の妹』というワードは伏せた。


 彼はまた、氷を回す。


「あーあっ。もっと早くに乃亜と付き合いたかったな」


 運ばれてきたパスタをフォークに巻きつけていると、勇太君が残念そうに言った。


「もし受験生じゃなかったら、もっと乃亜とたくさん遊べたのにって思うよ。勉強は好きだけど、乃亜ともずっとこうしていたい」


 ストレートな想いを口にする彼に、胸がはむっと啄まれる。


「一年の時に乃亜と仲良くなれなかったのが失敗だな。何組にいたの?」

「D組。勇太君は?」

「俺はA組。くそー。AとDじゃ、体育の授業も一緒じゃないもんなあっ」


 学級委員で優等生の彼。こんなにも悔しそうな顔は、初めて見る。


「中二の時、俺のクラスの森と付き合ってたでしょ?」

「うん。二ヶ月くらいかなあ?」

「その時クラスに時々来る乃亜を見て、可愛いなって思ってたんだよね。森の彼女だったから、恋愛対象ではないけど」


 照れた。可愛いという単語は、女ならば誰でも嬉しく思う。


 頬杖をついた彼は、瞼で半分隠れた瞳を私へ向けた。


「食べ終わったから、乃亜でも見てよっと」


 そう堂々と宣告されて、私の顔は熱くなる。

 急いで食べた。口元を隠して食べた。それでも喉から先がうまく通らずに、そこで時間を食ってしまう。そんな私に彼はトドメを刺す。


「可愛いなあっ、もうっ」

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