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 空がオレンジ色に染まる頃、陸を誘う。


「なんだよ乃亜、昨日の話も中途半端なまんま、急に帰っておいて」


 私がコンビニへ到着するよりも前に、彼はいた。


「そんな話いいから夕飯奢ってよ。私今、全財産百三十二円しかないんだからっ」

「あーあ、俺んち今日カレーだったのに!」


 頬を膨らませながらも、陸は私の頭を優しく寄せる。


「乃亜の夕飯くらい、用意してから遊び行けよな親父さんっ」



 ピザ味のパンを手に取って、陸に渡す。


「それだけで足りんの?」

「足りる」

「うさぎより少食じゃんか」


 会計時、ポケットから出したありったけの小銭をキャッシュトレーに置くと、陸は「お釣り」と言って、百円玉二枚を私の手に押し付けた。


「陸さま、いただきます」


 店の壁際にしゃがみ込み、パンで乾杯。陸は聞く。


「今日も親父さん遅いの?飲み会?」


 パンを飲み込んでから、私は答える。


「そうなんじゃない?彼女の店に行くらしいし」

「彼女……ああ、スナックの経営してるっていう」

「そう。カウンター越しのナンパから始まったくせして、一緒に住むとかすごくない?」

「え、まじで?親父さんの彼女、乃亜んちに住んでんの?」


 陸の口からは、ぽーんとひとかけらのパンが駐車場へ飛んで行った。


「先週だったかな?いきなり荷物まとめて来た」

「まじかよ」

「べつにこんなの、初めてのことじゃないから慣れてるけどね。今日もふたり揃って仲良く酔っ払ってるんじゃない?パンごちそうさまっ」


 立ち上がって、うーんとひとつ、伸びをした。チキンを口に押し込んだ陸は言った。


「乃亜、ちょっと川行くか」

「川ぁ?」

「散歩散歩っ」


 私の手からパンの袋を奪った陸は、代わりに自身の手をあてがった。

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