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「わっ。そのふたりで登校とか珍しっ」


 人目憚らず、自転車で通学路を進む凛花。陸と私の横で速度を落とした彼女に言った。


「凛花ってばまた自転車通学っ。そろそろ見つかるよー」

「平気だって。ピャーって行けばバレないバレないっ。じゃねっ」


 途端に風を切る彼女。その背中に目を奪われていると、背後から肩を叩かれた。


「乃亜っ、陸っ」


 振り返ると、そこには息を切らせた勇太君がいた。


「おはよう勇太君。どうして急いでるの?まだチャイムまで余裕あるよ」


 淡い色のハンカチを取り出して、額の汗を拭う彼。


「乃亜が見えたから、ついっ。今日は陸と一緒に来たんだね。俺もいい?」


 そう言うと、彼は私の手を握る。陸は不快な呆れ顔。


「んだよ、朝から見せつけんなよ。俺先行くわあ」

「ちょ、陸っ」


 私の声など完全無視で、陸はスタスタ行ってしまった。


「気なんて使わなくていいのにね」


 そう呟いた勇太君に、私も「ね」と苦笑で返した。


「昨日の俺のメッセージ、見てくれた?」


 遠くで友達と合流した陸の姿を目にしていると、横からぬっと勇太君の顔が視界に入り込む。


「き、昨日?」

「うん。夜十時頃だったかな」


 昨晩十時の私は交番か陸の家か。どちらにせよ、恋人に伝えるような場所ではない。


「ご、ごめん。昨日は早くに寝ちゃってて」

「そうだったんだ。ならいいんだ」

「ごめん……」

「いいっていいって。急用じゃないし」


 ごめんともう一度言いかけた私は、一体何に対して謝りたいのだろうか。


✴︎


「乃亜、寝過ぎっ」


 机にうつ伏せる私の頭頂部を、凛花はうちわの柄で小突く。


「もう放課後だよ。授業中ほとんど寝てたでしょっ。夜更かしでもしたの?」

「うんー……ちょっと女子会」


 こんな一日中やる気のない受験生を、同じクラスの勇太君はどう見ただろう。


 まだ眠い。帰ることすら面倒くさい。

 机からなかなか剥がれぬ己の頭に困っていると、ふいに呼ばれた名前。


「乃亜──」

「おい乃亜!」


 一瞬、勇太君の声がした気もしたが、ズズズと角度だけを変えた顔と共に目に映るは、扉付近にいた陸だった。

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