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「乃亜、一緒に帰ろ?」


 放課後すぐ、勇太君は私の席へ来た。


「一緒にって言っても、勇太君の家と私の家、反対方向だよね?」

「そうだけど、俺が遠回りして帰るよ。じゃないと乃亜と一緒に帰れないし」


 真っ直ぐ素直な言葉。きっと彼を心底好きな子だったら、飛んで喜ぶのだろう。


 彼と手繋ぎ廊下を歩いていると、ふとあることに気付いてしまう。それは、周りの生徒達の視線。

 これはある意味お披露目会だ。新学期早々、校内を仲良く並んで歩いていたら、誰がどう見ても夏休み中に結ばれたカップルだ。


「あ」


 勇太君と私の数メートル先、友達数人と会話をしている陸の姿が見えた。


「ゆ、勇太君っ。西の階段から行かない?」

「え、なんで?東の方が近いよ?」

「な、なんとなく!いいから行こっ」


 半ば強引に彼を反転させて、背中を押した。

 どうか気付かれていませんように、と願いを込めて一度だけ振り返ったのに、ばっちりと合ってしまった陸との視線。それはまるで槍の如く、鋭いものだった。



「乃亜は、何曜日が空いてるの?」


 校舎を出ると、勇太君は聞いた。私は頭の中のカレンダーを溯る。捲れど捲れど白いそれは、味気のない人生そのものを表していた。


「は、恥ずかしいけど、いつも暇……」

「そうなの?じゃあ、俺の塾がない日は遊ぼうよ」

「勇太君の塾は何曜日?」

「俺の行ってるとこはシフトで組んでるから、先生との都合があえば、毎日でも行けるんだ」


 さすがは優等生。次元が違う。


「だから夏休み中の夕方は、ほぼ毎日授業を入れてたんだけど──」


 おもむろに足を止めた彼につられて、私も立ち止まった。はにかみながら見つめられて、目のやり場に困る。


「塾じゃなくても、乃亜と一緒だって勉強はできるから。俺の固定シフトに乃亜を入れていい?」


 直球に投げられたそのボールは、私の手にすとんと収まった。


 素っ気ない陸のメールで呼び出されたのは、その日の夜のこと。

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