④
「乃亜、一緒に帰ろ?」
放課後すぐ、勇太君は私の席へ来た。
「一緒にって言っても、勇太君の家と私の家、反対方向だよね?」
「そうだけど、俺が遠回りして帰るよ。じゃないと乃亜と一緒に帰れないし」
真っ直ぐ素直な言葉。きっと彼を心底好きな子だったら、飛んで喜ぶのだろう。
彼と手繋ぎ廊下を歩いていると、ふとあることに気付いてしまう。それは、周りの生徒達の視線。
これはある意味お披露目会だ。新学期早々、校内を仲良く並んで歩いていたら、誰がどう見ても夏休み中に結ばれたカップルだ。
「あ」
勇太君と私の数メートル先、友達数人と会話をしている陸の姿が見えた。
「ゆ、勇太君っ。西の階段から行かない?」
「え、なんで?東の方が近いよ?」
「な、なんとなく!いいから行こっ」
半ば強引に彼を反転させて、背中を押した。
どうか気付かれていませんように、と願いを込めて一度だけ振り返ったのに、ばっちりと合ってしまった陸との視線。それはまるで槍の如く、鋭いものだった。
「乃亜は、何曜日が空いてるの?」
校舎を出ると、勇太君は聞いた。私は頭の中のカレンダーを溯る。捲れど捲れど白いそれは、味気のない人生そのものを表していた。
「は、恥ずかしいけど、いつも暇……」
「そうなの?じゃあ、俺の塾がない日は遊ぼうよ」
「勇太君の塾は何曜日?」
「俺の行ってるとこはシフトで組んでるから、先生との都合があえば、毎日でも行けるんだ」
さすがは優等生。次元が違う。
「だから夏休み中の夕方は、ほぼ毎日授業を入れてたんだけど──」
おもむろに足を止めた彼につられて、私も立ち止まった。はにかみながら見つめられて、目のやり場に困る。
「塾じゃなくても、乃亜と一緒だって勉強はできるから。俺の固定シフトに乃亜を入れていい?」
直球に投げられたそのボールは、私の手にすとんと収まった。
素っ気ない陸のメールで呼び出されたのは、その日の夜のこと。




