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乃亜(のあ)って好きな奴いる?いないなら俺と付き合ってよ」


 中学三年生の夏休み、連日熱帯夜。周りは皆、受験勉強で忙しなく過ごしているというのに、私と(りく)は夜空の(もと)、コンビニの傍でアイスを頬張っていた。


「陸、垂れてるよ」

「わ。やっべー」


 コーンを伝うアイスを舌で掬う陸。変てこな顔に、少し笑う。


「どうせまた、罰ゲームでしょ?」


 クラスの男子が考案したゲームの延長線で、過去に何度も愛を告げてきた陸の「付き合って」は、もう信じないと決めている。


 ぽりぽりと頬を掻いて、陸は言う。


「今回はそのお……罰ゲームじゃないんだ」


 陸の耳はほんのりと赤かったかもしれない。でもそれは、勘違いかもしれない。


「なあ、乃亜」


 真剣な眼差しを寄越されて、思わず息を飲む。


「お前のことが好きなんだ。本当に」


 陸の向こう、夜空の中。大きな夏の大三角。



✴︎

 ✴︎

✴︎

 ✴︎

✴︎


「乃亜ちゃん、お湯沸いたわよ」


 翌朝。ポンッというケトルの合図と共に、奈緒(なお)さんは言った。


「コーヒー注いじゃうね」


 半袖でも汗ばむこんな朝でさえ、私はホットを好む。


 パジャマ姿のままに食卓へ着くと、コトンと置かれたマグカップ。奈緒さんは対面に腰を下ろした。


「今日の夕ご飯、何か作っておこうか?お父さんは、私のお店に来るって言ってたから」

「いいや、悪いし。適当に買って済ますよ」

「そう……夕飯代、ある?」

「うん。先週お父さんにもらった残りがまだあるから」


 湯気立つコーヒーに口をつけ、私は興味もないワイドショーへと目をやった。



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