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第四十三話 救援

 パーーーーーン!!


「お二人とも、大丈夫ですか!?」

「クラリス! 無事かい!?」


 大きな音と共に妖精達が構築した防御壁がシャボン玉が弾けるように割れ、外から必死の形相の学園長とエディオン、シーナさんがやってきた。


 学園長は状況を見るなり険しい表情になると、一瞬で私達のところに移動し、すぐさま防御壁を展開する。


「シーナくん!」

「えぇ! ちょっと耳、塞いでおいてね!!」


 シーナさんが繭に向かって魔法を放つと、ズガァアアアアアン!! と轟音と共に繭が爆発し、崩壊した。


 通常魔法の魔力を吸収し、非常に魔力を帯びて強固になっていた繭をたった一撃加えただけで破壊するシーナさんの凄まじさに、思わず呆気に取られる。


 そして学園長の防御壁も爆発をものともしないほど頑丈で、さすがだと感心せざるを得なかった。


「ふぅ。どうにかなってよかった」

「さすがシーナくん。こんな狭いところで魔力の塊をぶっ飛ばせるのはキミしかいない!」

「それ褒めてるの? 貶してるの?」

「もちろん褒めてますよ! ねぇ、マルティーニさん!」

「うぇ!? え、あ、はい、とっても凄かったです!」


 突然の学園長からのキラーパスに慌てつつもシーナの凄さに感心したのは事実なので、素直に褒める。

 すると、シーナさんは大きく「はぁぁぁぁ」と溜め息をつきながら頭を掻いた。


「あんたの適当発言に生徒を巻き込まないでちょうだい。とにかく、みんな無事で何よりだわ」


 繭が消滅したことにより、廊下は元通りの静けさを取り戻していた。

 それに合わせて妖精達が廊下にわっと押し寄せ、傷ついた壁や窓の修復を始める。


「シーナくんは相変わらず手厳しいですね。まぁ、とにかくこれほどの魔力暴走があったにも関わらず、大した怪我がなかったのは何よりです」

「そうね。とはいえ怪我は……多少はしてるようね。医務室で処置するわ。マルティーニさん、ノースくん、自分で歩ける?」

「歩けないならクラリスは僕が抱いて医務室へ連れて行くよ!」


 シーナさんの言葉に被せるように出張ってくるエディオンに、私は慌ててすくっと立ち上がってみせる。

 そして「大丈夫、歩けます!」とぴょんぴょんと身体は大丈夫だというアピールをすると彼は途端に残念そうな顔をした。


「というか、学園長達はどうしてここに?」

「私はここの学園長ですからね。何か異常があればすぐに妖精から伝達されるのですよ」

「そうだったんですね。でも、エディオンは何で?」


 学園長とシーナさんが来た理由はわかったが、なぜエディオンもいるのだろうか。

 するとエディオンは「ふふん」と勝ち誇った顔をして見せる。


「それはクラリスへの愛だよ」

「へ?」

「エディオンくん。違うでしょう?」


 私がキョトンとしていると、学園長が呆れたように指摘する。

 すると、エディオンは「冗談ですよ」と笑った。


「僕は学園長とたまたま一緒にいたから状況を知って駆けつけたんだ。僕も妖精語は得意だからね」

「というわけです。そして今回の件についてあらかた妖精達から聞きました。ブランシェットさん、詳しいことを聞きたいので学園長室へ御同行をお願いします」

「……はい」


 ミナが私から離れてゆっくりと立ち上がる。


 そのまま学園長のあとに続いて歩き始めるのを「待って!」と私は引き留めた。……このまま行ってしまったらもうミナに会えないような、全部彼女が悪いことにされてしまうような気がして。


「あの、学園長。今回の件は全部ミナが悪いわけじゃないんです! だから……っ」

「俺からもお願いします。彼女を退学などにはしないでください。もし証言などが必要であれば証言をしますので」


 いつの間にかアイザックが傍らにいた。

 上手く言葉が紡げない私を支えるように、肩を抱きながら私の言葉に追従してくれる。


 すると、私達が何を言いたいのか理解しているように、学園長は柔和な笑みを浮かべると優しく私の頭を撫でてくれた。


「大丈夫です。わかっていますよ。言ったでしょう? 妖精から聞いて全て把握済みだと。彼女の家のこともわかってます。ただ、このまま無罪放免というわけにもいきませんし、今後の方向性なども含めて話し合わないといけませんから」

「わかりました。……ミナ!」


 私がミナの名を呼ぶとミナが顔を上げる。

 先程泣いたせいか、まだ少し赤らんだ状態で申し訳なさそうにこちらを見ながら眉を下げていた。


「私、待ってるから!」

「……ありがとう、クラリス」

「またね、ミナ!」


 そう笑って手を振ると、ミナも少しだけ笑って小さく手を振り返してくれる。

 そして彼女は学園長と共に魔法陣で消えていった。


「さて、じゃあ貴女達は先に医務室に行っててちょうだい。私はここの妖精達に指示をしてから行くから」

「ありがとうございます。すみません、ご迷惑をかけて」

「いいのよ。それが私の仕事なんだし。それにかけられてる迷惑なら学園長のほうがずぅううううううううっと上だから安心してちょうだい」


(なんかすごい実感こもってる)


 シーナさんはそう言って微笑むと、妖精達に妖精語で指示を出し始める。


(凄いなぁ。私もこんな風になりたい)


 強くて凛々しいシーナさんの姿に憧れを抱きながら、私とアイザックとエディオンはシーナさんに言われた通りに医務室に向かった。


「本当に痛みはないのかい? 今なら僕達しかいないのだから、遠慮せずに僕が抱えて連れて行ってあげるよ?」

「大丈夫よ、エディオン。本当に大した怪我はしてないから、気持ちだけいただくわ」

「そうかい? でも、僕がついていれば……」


 悔しげなエディオン。

 確かに、エディオンが近くにいたらこんなことは起きなかったかもしれない。

 けれど、遅かれ早かれいずれはこうなっていただろうと考えると、今回無事に解決できてよかったと心の底から思った。


「そう気を落とさないで。エディオンのおかげで実戦で防衛術も使えたのよ? どうもありがとう」

「そう? クラリスの役に立ったならよかったよ。でも、やっぱり守るなら僕がキミを守りたかった。なんだかんだでアイクも力を取り戻しているようだし」

「あぁ。エディのおかげだ」

「ふんっ、敵に塩を送ったつもりはないんだけどな。……でも、まぁ、アイクが力を取り戻せたことは良かったと思うよ」

「ありがとう、エディ」

「べ、別に僕はアイクのためじゃなくて、あくまでクラリスのためにしただけだからな」


 まるで子供の言い合いのようなやり取りに、微笑ましく思う。

 彼らの関係が少しでも解れたようで、私は内心喜びながら二人の腕を同時に掴むと、「二人ともありがとう」と私は彼らに感謝するのだった。

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