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前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!  作者: 鳥柄ささみ


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第十八話 一度きりの人生

 授業が終わり、アイザックと一緒に寮に戻るとそこにはマリアンヌがいた。

 お互い目が合った瞬間気まずくなるが、私が目を逸らそうとしたところでアイザックに肩を叩かれる。


「ほら、あの子に謝るんだろ?」

「……うん」


 アイザックに背中を押されて前に進む。

 そしてマリアンヌの前に立つと、深々と頭を下げた。


「マリアンヌ、ごめんなさい! 私、貴女に甘えて八つ当たりをしたわ。本当は、マリアンヌのこと大嫌いじゃないし、むしろ大大大好きよ!! 昨日はつい心にもないことを言ってしまって、貴女を傷つけた。本当にごめんなさい!」


 思ったことを正直に言って謝る。

 これが私の今できる精一杯の謝罪だ。


 すると、マリアンヌは驚きの表情からふっと表情を緩めると、泣きそうな顔をして眉尻を下げたあと口を開いた。


「クラリス、私のほうこそごめんなさい。貴女のことをわかってたつもりなのに、つい自分の気持ちを優先して余計なことをしてしまったわ」

「そうじゃない、マリアンヌのせいじゃないわ! 私が、色々と意固地になってたせいで……っ」


 ずっと引きこもりだったのは前世のことを引き摺っていたからだ。

 でも今は新たな生を受けて平穏な喪女生活を目指す上でずっと今までのように受け身なままではダメなのだと気づいた。


 こうしてNMAに入学したのだって、周りからの説得とはいえ、何かしら変わるきっかけになればいいと思ったのも事実だ。

 それに実際入ったことでアイザックやハーパー、オリビアとも仲良くなれて友達が増えたことはよかったことだと言える。


「それなら私も、つい意地を張ってたわ。私のクラリスをみんなに自慢したくて」

「自慢?」

「だって、こんなにも可愛くて魔法力も長けていて素敵な幼馴染なのだもの。たくさんの人にクラリスは凄いのよーって自慢したかったの。……私の勝手な押し付けだったけど。でも、未だにそれは思ってるわ。クラリスは素敵な才能があるのだから、もっと前向きに生きて欲しいって」

「マリアンヌ……っ!」


 幼馴染で大親友のマリアンヌがここまで私のことを想ってくれていたなんて、と胸がいっぱいになる。


 言われてみたら昔からマリアンヌは「もっと外に出たらクラリスに見せたいものがあるから一緒に観に行きましょう」「世界にはクラリスの知らないたくさんの素敵が詰まってるのよ」などと言って積極的に脱引きこもりをさせようとしていた。


 あれはずっと両親からの差し金かと思っていたが、どうやらマリアンヌの本心からだったらしい。

 マリアンヌの気持ちを知って私は彼女に抱きつき、ぎゅうううと力強く抱き締めた。


「だって、せっかくの一度きりの人生だもの。楽しんだほうがいいじゃない?」

「そうね。あ、でもエディオンのことはやっぱり苦手だから、そこは考慮してもらえるとありがたいのだけど」

「ふふ、わかった。苦手なものは仕方ないものね。というか、いつの間にノースくんと仲良くなってるの?」


 仲直りした途端、コソコソっとアイザックとのことを耳打ちしてくるマリアンヌ。

 寮に一緒に入ってくるところをバッチリ見ていたらしい。


「ちょっとそれには色々あって」

「何よそれ、詳しく教えなさいな」


 やけにいつもよりも鼻息が荒いマリアンヌ。

 考えてみればマリアンヌとこういう異性の話をしたことがあまりなかったためか、食いつきがとても良かった。


「いいけど、これからアイザックに勉強を教える予定なの。マリアンヌも参加する?」

「それは遠慮しておくわ。せっかく二人でやるのだもの、邪魔したら悪いでしょうし」

「別に邪魔だなんて。一緒にやりましょうよ? アイザックもマリアンヌが参加したらきっと喜ぶわ」

「そんなことないわよ。というか、もう名前で呼び合ってるの?」

「彼、ファミリーネームが嫌いらしくて」

「ふぅん、そうなのね。とにかく私のことはいいからもう行ったら? ノースくんも待ってると思うわよ」

「えー? わかった。じゃあまた今度一緒に勉強会しましょう?」

「はいはい。とにかくいってらっしゃい」


 マリアンヌに急かされるように追い立てられて、遠くから私達の様子を見ていたアイザックのところへ戻る。

 マリアンヌからの視線を感じて「そんなに見るなら一緒に勉強会に参加すればいいのに」と思うも、彼女は彼女で頑固なのできっとこれ以上説得したところで来てはくれないだろう。


「無事に仲直りは済んだか?」

「えぇ、おかげさまで」

「それはよかったな」

「ありがとう。さっそく勉強会する?」

「あぁ。だが、彼女はいいのか? さっきからこっちを微笑みながら見ているようだが」


 アイザックも気づくほどマリアンヌのあからさまな様子に苦笑する。


「来ないんだって。マリアンヌも勉強は得意なはずなのだけど。とりあえず行きましょう? あまり遅くなっても夕飯に遅れるだろうし」

「それもそうだな」


 なんとなく未だ感じる視線に居心地悪くなりながらも、アイザックと共に談話室のテーブルで勉強会を始める。


 マリアンヌとの(わだかま)りも解消し、私の心は晴れやかだった。

 そのため集中して勉強することができ、魔法史や魔法薬学、物理魔法など時間が許す限りアイザックとは一緒に勉強した。

 アイザックとの勉強会は楽しく、あっという間に時は過ぎていくのであった。

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