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第5話 四面楚歌②『初任務』



「エリザベス病院で悪魔による殺人が発生した。魔力を確認する限り下級の悪魔の仕業だろう。今回はその悪魔を斃してもらう」


 悠たちはエリザベス病院の前で準備をしていた。今回の任務はアレンの部下を中心にチームが組まれ、その中にアレンとアリスがいる。


「アレンさん、悪魔って扉が開かないとこっちに来れないんですよね?病院のどっかに扉があるんですか?」


 悠は気になってアレンに尋ねる。


「いや、今回は扉を開いたというよりはどっかのバカが悪魔召喚した()()だろう。多分もうやらかしたやつも死んでいる。結界は今の五階に張られている」


 アレンは部下たちの肩を叩く。


「今日もよろしく頼むよ」




 病院は誰もいなかった。どうやら医者から患者まで全て避難を終えているようでもぬけの殻だった。


 悠は真っ暗な病院をぶるぶる震えながら歩く。それを見たアリスは小さく「……ださ」と笑う。悠は悔しそうについていくのだった。


結界をくぐり一行は五階に入る。


 今回については悠とアリスが先頭にたって進むようになっていた。その後ろをアレンの部下がついて来るようになっていたのだが、何故かアレンの部下たちは悠たちについてこず、その場で二人を見ていた。


「……?あのー?」


「悪いな」


 そう言うとアレンの部下は自分たちを境に新たな結界を張った。悠とアリスは結界に閉じ込められ、来た道を引き返すがとき既に遅く、悠たちとアレンの部下たちとの間に壁が出来ていた。


「!?なんで!?どーゆこと!?アレン先生!?」


 アリスは怯えた顔で結界を叩く。


「アレンさんは関係ない。これはおれの独断だ」


 そう言ってアレンの部下のリーゼウスが前に出てくる。


「筋書きはこうだ。今回おれたちは病院での任務にお前たちをアレン先生の命令で仕方なく連れてきたが、不慮の事故でお前たちは結界内に閉じ込められ悪魔に食い殺されてしまった。おれたちは助けに入ったがとき既に遅し……なあ、おれはお前たちにイライラしてるんだ。()()魔術が使えない欠陥品にそもそも魔術師じゃない場違いなやつ。空気読んで大人しくしてろってんだ。おもりするこっちの身になれよ」


 リーゼウスはニヤッと笑う。


「邪魔だから死ね」


 そう言うとリーゼウスは部下たちを連れて階段を降りていった。アリスは「待って!」と泣きながら叫ぶ。全員の姿が見えなくなりアリスはその場にへたり込んでしまった。


 その様子を悠は気まずそうに見る。こういうときどうしたらいいのか全然分からなかった。





 しばらくして落ち着いたアリスが口を開いた。


「……あなた、何で魔術師でもないのにこの世界に来たんですか?」


「アレンさんに聞いてるかどうか知らないけどさ、おれ、日本で全部なくしたんだよ。友達も、家族も、地元も。悪魔?に全部食われたんだ。アレンさんに聞いたんだけど、おれの地元、政府じゃ対処しきれなくて地図から名前が消えるらしいよ」


 悠は身の上話をする。


「全部やったのおれの兄ちゃんでさ。びっくりしたよ。アレンさんに助けてもらったと思ったらいきなり捕まるし、本当に訳わかんないんだよ。今だってなんでおれここにいるのか分かんないもん」


「は?じゃあ……」


「訳わかんないよ。だからおれは兄ちゃんに聞かなきゃならないんだ。なぜこんなことをしたのか、何で兄ちゃんはおれを殺そうとするのか。それはおれの役目だ。それに……あの日のことを忘れておれだけのうのうと生きるなんて、おれがおれを許せない」


 アリスは何か言おうとして口をつぐむ。


「だからおれはあんたの護衛をする。それしかこの世界で生きる道がないなら死ぬ気であんたを守る。おれをあんたに認めさせてやる」


「……勝手にしてください。私は絶対に認めないですから」


「そういえばさ、さっきの人が言ってたほぼ魔術が使えないって、どーゆーこと?」


 悠は話をアリスのことに移す。


「言葉のまんまです――――話は後で。来たわ」


 ピチャピチャと音がし、手前の部屋から悪魔が一体出てきた。その悪魔は上半身だけのナースの死体をブンブン振っていた。


「うぇ」


 悠はえづく。


 悪魔は「ゲッゲッ」と気味の悪い声を上げながらフラフラと歩いていた。傍から見たら悪魔とナースがタップダンスを踊っているかのようだった。


 その様子を見て悠はアレンの言っていたある言葉を思い出した。


 ――――奴らは人類を蹂躪することしか考えていない


 悪魔から見れば人は弱い生き物だ。狩りの対象だ。人が家畜を当たり前のように食らうように、悪魔もまた人を当たり前のように食らう。


「楽しんでやがる……」


 悠のつぶやきに気付いた悪魔はナースの死体を投げ捨て、真っ直ぐこちらを見る。どうやら興味の対象が変わったようだ。


「来るぞ!」 


 悪魔が突っ込んできた。悠としては魔術師であるアリスに魔術を使ってもらって協力して撃退しようと考えていた。だがアリスは「ひっ」と悲鳴を上げてその場でしゃがみこんでしまった。


「え!?なんで!?」


「今日はダメなんです!」


 今日は駄目ってどういうことだよ!


 悠はそう心の中で叫びながら構える。そして悪魔が突っ込んできたところにそっと拳を突き出す。


「ふっ!」


 拳は悪魔の顔面にめり込み、悪魔は仰け反る。悠は更に中段蹴りで悪魔を蹴り飛ばし、距離を作った。それを見たアリスは呆然とする。


「……悪魔相手に素手で挑むのは初めて見ました」


「これでも黒帯ですから」


 ちなみに全日本チャンピオンでもある。だが相手は悪魔。魔術以外で斃すことの出来ない相手に空手で勝つことなど出来るはずもなく。


「ごぼっ」


 悪魔はちょっと小突くだけで人間をグチャグチャにできる。悠はうまくいなしダメージを最小限に留めたが、それでものたうち回るほどの痛みが襲いかかってきた。


 呼吸が苦しい。


 悪魔は悠が倒れたのを確認し、全く攻撃をしてこないアリスを脅威なしとみなし、襲いかかる。アリスは杖をブンブン振り回して魔術を使おうとする。しかし「ぽすん」と弱々しい音を立てるだけで魔術が発動しない。


「――――っ!」


 アリスは覚悟を決め目を閉じて身構える。だがいつになっても恐れた衝撃がこない。ゆっくり目を開けるとアリスの目の前に悠がいた。


 肋骨が折れたであろう悠は浅い息をしながら歯を食いしばり涙を流しながら立ち上がり、文字通り肉の壁となっていた。


 悪魔は悠の肩を噛む。かろうじて動脈を避けたのか、出血は予想より少ない。


「やらせるかよ」


 悠は悪魔を無理矢理引っ剥がし地面に叩きつける。そしてアレンから貰った魔具のナイフを取り出し、悪魔に突き刺した。

四字熟語ってなんかかっこいいじゃないですか。だからサブタイトルに定期的に使っていこうと思います。

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