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第23話 残虐なあなたへ⑧『追跡』

 オルタナは夜のロンドンを駆けていた。目的は『D機関』である。心当たりのある闇市等をしらみ潰しにあたる。だが『D機関』については驚くほど何も出てこなかった。


「ここまで何もないっていうのもおかしい……」


 オルタナは行き先を変える。場所は闇の情報屋「ドブネズミ」。ドブネズミは多くの情報を持っており、これまでもドブネズミの情報で多くの闇堕ちを捕らえた経緯がある。


 ドブネズミは普段は地下で商売をしている。オルタナはできればドブネズミのところには行きたくなかった。とにかく臭いのだ。


 ロンドンには様々な地下道や下水道があるが、地下は地下でも魔術師でないといけない地下も存在する。入り口は様々で、公衆電話だったりトイレだったりと様々だ。


「はあ……我慢我慢」


 オルタナは公衆トイレに入る。そして扉が開いたときオルタナはいなくなっていた。


 地下に入るとまず悪臭がオルタナを襲った。腐った卵の匂いが強烈で、鼻がひん曲がりそうだ。


 オルタナは鼻をハンカチで隠しながら進む。


 ドブネズミは椅子に座って優雅にワインをひっかけていた。


「腐った卵にハイカラネズミが食らいつく」


 これはドブネズミから情報を買うときの合言葉である。ちなみに意味は分からない。


 ドブネズミはグラスを置き、黄色い歯を覗かせる。


「魔術会さんか。今日はどんな情報が欲しいんだい?闇堕ちか?この前バーンズ一家の情報を売ったばかりだろう?欲しがりだねえ」


「バーンズ一家の件はどうも。今は牢獄ですやすやと寝てるよ。今日は闇堕ちの情報じゃない、別件で来た」


「別件?」


 ドブネズミはポケットからメガネを取り出しかける。レンズが小さすぎて果たしてかける意味があるのか。ドブネズミは珍しげにこちらを見る。魔術会が買う情報はいつも闇堕ちの情報だから驚いたようだ。


「まあ、金を貰えるのなら何でもいい。で?なんの情報だ?」


「『D機関』について何か知らないか?」


 ドブネズミの表情が固まる。それをオルタナは見逃さなかった。


「……あるんだな、情報」


「魔術会さん、悪いことは言わない。そこについては触れないほうがいい。死ぬよ」


「すでに多くの仲間が死んだ。魔術師としての未来を絶たれた者もいる。だから私が動いている、雷光の魔術師が。ドブネズミ、お前は黙って私に情報を売れ」


 オルタナは杖を抜きドブネズミの額に向ける。ドブネズミは「どうどう」と両手を上げる。


「『D機関』は遥か昔から存在する悪魔崇拝集団だ。奴らの最終目標は悪魔の世界をここに作ることだ。それ以上もそれ以下もない。『D機関』は謎の多い組織でね、どこからとなくポッと湧いて出てきて、そして悪魔を召喚しまくって人を殺しまくる。おれたち闇の人間からしても近づきたくないやばい組織だよ。あんたの口ぶりだと、また現れたんだね?なら気をつけたほうがいい。これからさらに人が死ぬ」


 オルタナは初めてその歴史を聞いた。魔術会が所有するどの文献にもそんなものは書かれていなかった。


「魔術会がそんなものを野放しにするはずがない。記録を必ず取っているはずだ。でもなぜ文献に残っていない……?」


「まず結論を言っておくが居場所などは知らん。というか知りたくもないね」


「そうか……すまないな、ありがとう。もし何かあったら私に連絡してくれ」


 オルタナは金を払いドブネズミに背を向ける。


「ああ、そうだ。最後にもう一つ。最近野良か闇堕ちが集会をしているというような情報はないか?」


「……あるよ。二件。バーミンガムのアストンパークとブロードウェイのどっかだ。今日は店じまいだ。帰ってくれ。おれはまだ死にたくない」


 そう言うとドブネズミは地下のドブの中に消えていった。ドブネズミが臭い理由が分かった気がしたオルタナだった。


「バーミンガムとブロードウェイか……」


 オルタナはすぐに本部に戻り、部下に招集をかけた。部下にはバーミンガムの調査を命じ、自分はブロードウェイに向かう。ドブネズミはバーミンガムについてははっきりと場所を示したのにブロードウェイだけは濁した情報を流してきた。間違いなくそこに何かがある。


「ブロードウェイですか、オルタナさん。一緒に行きます」


 リーゼウスが近づいてきた。


「アレンさんからです。『D機関』については禁書「闇」を見ろとのことでした」


 禁書とは、読むだけで有害な書物として魔術会が指定し、会長自らが管理する秘密文書に当たる。それを読むことが出来るのは会長だけである。なぜアレンがそれの存在を知っているのか疑問ではあったがとりあえず触れないことにした。



※ 



 オルタナとリーゼウスはブロードウェイに入る。そしてすぐに違和感を感じた。人の気配が全くしないのだ。


「……どうやらあたりのようだ」


 建物の中を見ると人の死体が散乱していた。オルタナたちはゆっくりと進んでいく。襲撃を警戒していたがそれすらも気配がなかった。ただ奥に進むにつれて空気が重くなるのだけはしっかりと感じた。


 そして人影を確認し、二人は足を止める。


「たった二人か。いくら雷光の魔術師だからといって舐め過ぎではないか?」


「二人で十分ということだよ」


死に絶えよ(デス・ヴォルド)!」


 赤い光線が二人に襲いかかる。


防壁(ウォール)


 オルタナは防御魔術で防ぎ、すぐに反撃する。


雷撃弾(ボルタ・バレット)


 電撃の弾丸が人影に向かっていく。


「いきなり「ヴォルド」を使うか。そいつは禁術ではないか?」


「ヴォルド」の名を持つ魔術はあまりにも非人道的な魔術であることから野良であろうが闇堕ちであろうが使うことはタブーとされている魔術だ。


「雷光の魔術師が相手だからね、それぐらいのハンデはくれないと」


『D機関』がオルタナたちの前に姿を現した。

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