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第12話 行尸走肉⑤『任務を終えて』

 アレンは今回の裏切り者を追いかけていた。既に姿は捉えており、捕まえるのは時間の問題であった。


「くそ!くそ!くそ!なんでアレン・グレイマンが出てきてんだよ!?話が違うじゃないか!」


 闇堕ちの魔術師は悪態をつきながらアレンから逃げる。本人は気付いていた。自分はわざと逃されていると。『最強』アレン・グレイマンが本気を出せば簡単に捕まることくらい考えなくても分かる。それが捕まらない。泳がされている。その事実に無性に腹が立つ。


「なんでお前が出てくるんだ!さっさと日本に帰れよ!」


「そんなこと言われてもなあ。お前、おれの大事な部下を殺そうとしただろ。おれはこう見えて部下想いのイケてる上司でね。それはそうと――――」


 アレンは逃げる男の首根っこを掴み、動きをビタリと止めた。その細身のどこにそんな力があるのか、男がどれだけあがいても前に進むことが出来ない。


「話が違う、っていうのはどういうことだ?まるで協力者がいるような口振りだな?今回の件、お前の後ろには誰がいる?一条将か?」


「……誰が言うかよ」


「……ふぅん」


 アレンは杖を取り出し、男のこめかみに突きつけた。そして小さく笑って男を突き飛ばした。突然解放され、男は困惑する。


「もういいよお前。帰っていいぞ」


 アレンの突然の態度のかわり具合に男は驚きつつも徐々に距離をとり、そして闇にとけて消えていった。


 アレンは男の背中を見送りながら笑っていた。



 ※ ※ ※



 周囲の検索を終えたオルタナは笑いながら悠たちのもとに戻ってきた。オルタナの後ろには生き延びた一般人たちが震えながらついてきていた。


 オルタナはヒョイと杖を振る。すると一般人たちは一斉に崩れ落ちた。


「ちょ……!?」


「大丈夫だ、眠らせただけだ。今回の事件の記憶を消したらすぐに病院に送る」


 オルタナの行動に抗議しようとした悠をリーゼウスが諌める。


「リーゼウス、君は彼らの記憶を消したら病院に連れて行ってくれ。一条君は話があるからついてきてくれ」


 そう言うとオルタナは公園を後にする。悠は不審に思いつつもオルタナについていく。公園の外に出るとアレンがベンチで缶コーヒーを飲んでいた。


「やあ弟君、災難だったね」


 アレンはコーヒーを飲み切り、缶を潰してポイ捨てする。それを見たオルタナはため息をつきながらその缶を拾う。


「そういうのは感心しないな。環境保全も立派な魔術師の仕事だぞアレン」


「そんなのは掃除業者に任せればいい。持ちつ持たれつだ。それより、そっちはどうだったんだ?」


「ガーゴイルがうじゃうじゃいたが、大したことない。全部片付いた。アレンのほうはどうだったんだ?ここにいるってことは闇堕ちを捕まえたんだろ?」


「え?逃したよ?」


 しばらくの静寂。そしてオルタナの周りでバチバチと静電気の音が響き渡る。


「アレン、君はどうしていつもそうなんだ?」


「やるのかオルタナ?」


 とてつもない圧に悠は押しつぶされそうになる。二人はバチバチに睨み合う。そして互いに笑った。


「ははは。アレン、君は本当に型破りなやつだ。さすがデイビッドが嫌うだけある」


「それは褒めてんのか?」


「オルタナさん、全部終わりま――――ってなにしてんですか?」


 一般人の処置を終えて来たリーゼウスは二人のやり取りを見てため息をつくのだった。


 ※


 ※


 ※


 本部に戻ったあと、悠は部屋に閉じこもっていた。アリスは概要を聞き、どうしようか考えたがどうすることもできず、そっとしておくことにした。


 悠はベットの上でうずくまっていた。少しでも自分は戦えると、守れると驕っていた自分が情けない。一条悠はこの世界では弱者だ。それは変えようのない事実。忘れてはいけない現実。


 油断しなければあの女性は助けられたかもしれない。女性は自分の慢心から死んだ。そう責めることでしか自分を保つことができなかった。


「おれは……弱い……弱いんだ……」




 ※ ※ ※


 デイビッドの部屋で、アレンとオルタナはことの顛末を報告していた。報告を聞きデイビッドはため息をつく。


「また闇堕ちか……なあ、魔術会ってそんな裏切りたくなる組織なのか?」


「まあ、ブラックだからな。そこは仕方ないんじゃないか?こんな血なまぐさい仕事、世界中探したってなかなかないぞ」


 アレンはスパッと言う。デイビッドは更にため息をつく。そんな中オルタナが口を開いた。


「アレン、君は明日日本に発つんだろう?一条君についての一切を私に任せてくれないか?私好みになるかもしれないが彼を育ててあげよう」


「おいおいオルタナ、おれたちは一応一条悠のことは認めていない立場なんだぞ?」


「デイビッドさん、この世界は実力主義です。たしかに一条君には疑惑がありますが、彼は中級悪魔を相手に生き延びました。まあほぼ私が出てきたからですが、運も実力のうち。それに、彼と一緒にいれば一条将に会える気がするんですよ。そうだよな、アレン?」


 アレンは笑いながら「さぁ?」ととぼけて見せる。


「まあオルタナがやってくれるってんならこちらは喜んで任せるぞ?ただし、ぶっ壊すのだけはやめてくれよ?お前、まじイカれてるから」


 アレンは笑いながらオルタナの肩を叩く。そして真顔になり、


「今回関わった闇堕ちの居場所は――――」


 アレンのその一言に二人は目をまるくするのだった。


「頼むぞオルタナ。あと、一条将を釣り出すために弟君を囮に使うといい。悪魔と戦うのが難しいならこういうところで役に立ってもらわないとな」


 アレンはニッと白い歯を覗かせ、部屋を出ていった。

次の四字熟語何にしようか悩んでます。

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