ヲタッキーズ64 機動戦士ランダム
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第64話"機動戦士ランダム"。さて、今回は夕暮れの首都高速で連続狙撃事件が発生!
しかし、余りにランダムな発生に捜査は難航…さらに脳損傷の異次元人スーパーヒロインの存在が浮上して…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 首都高物語、始まる
首都高には物語がアル。
神田北乗物町界隈から北上スル首都1号上野線は、アキバをかすめ台東区の入谷に抜ける。
中央環状線と接続していないため比較的交通量は少なく、ほとんど渋滞するコトはない。
事故時以外はw
「今日の映画、つまんなかった!」
「うーん確かにパパもヘンな映画だと思ったな」
「え。私は感動したわ!」
映画帰りの車内はケンケンガクガクだw
「つまんなかった!クダらなかった!」
「何ょ!アニメよりマシでしょ」
「ヒドい!恋愛映画なんて退屈なだけだわっ!」
姉妹の会話は過熱し、父親は中立を決め込み苦笑い。
「アイスでも食べて帰ろうか」
「素敵!通り道だしね」
「首都高で通り道なハズないでしょ…でも、パパも食べたいの?」
「え。あぁウンまぁ、どちらかと言えば…」
その瞬間!フロントガラス全面にヒビが走ったと思うや父親は首から血を噴き無言でハンドルに突っ伏すw
「パパ?!」
「お姉ちゃん!ブレーキ!」
「踏んでる!でも、ハンドルが…」
首都高の4車線で突然ダッチロールを始めた車はアチコチの車とハデに接触し火花を散らす!
クラクションと急ブレーキと火花の洪水の中、最後は半回転し防音壁に激突して停車スルw
「きゃあああっ!」
摩天楼のビルの谷間を流れていたヘッドライトの流れが次第に止まる。
徐々に長くなる赤いテールランプの渋滞車列。上空にはヘリの爆音が…
「パパ?!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、僕達は悲惨なハイウェイ事故の現場を遥か眼下に見下ろすタワービル最上階にある御屋敷にいる。
今宵は、天才ルイナの独壇場だw
「ランダム!またの名を偶然、あるいは幸運。リアルは、その意味を全く誤解してる。一般人は、均一性をランダムだと思い、不均一性に意味がアルと勘違いスル。ソレが不合理な判断へと誘うリスクに誰も気づかない。例えば、高層ビルでの勤務や、地震地域での生活を嫌う。でも、確率が証明してるの。9.11同時テロ攻撃より腹上死、震災よりアルコールの過剰摂取で死ぬ確率の方が遥かに高い。宝くじを当てるより、買いに行く途中で事故死する確率の方が3倍も高い。だが!パンピーは宝くじを買う。ナゼか?」
「…ヲタクだからさ」
ルイナの長口舌にキメ台詞を返したが誰にも受けズw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃"外神田ER"に半狂乱の家族が続々集まるw
「主人が撃たれたと聞いて!」
「御主人様?貴女…秋葉原のメイドなの?」
「妻ですっ!」
トンでもない誤解をしてるけど、腰まである髪を見事な七色に染め上げたアラフォー妻の方にも非はアルw
「失礼…犯人に心当たりは?」
「ってかアンタこそ誰?懐かしのミニスカポリス?」
「首都高HPですっ!」
コチラもトンでもない誤解してるけど、アメリカンポリスのコスプレなのに超ミニスカな警察側にも非が…
「私は、長女のテロカです」
「首都高HPのプルカょ」
「パパを撃ったのは誰?」
「今、ソレを調べてる」
「私、白いトラックを見たわ!」
「貴女は?」
「次女のススロょ」
「子供は引っ込んでて!今、私がおまわりさんと…」
「お姉ちゃんはダサい!」
「な、何ょ!」
過熱スル姉妹の会話を聞いて母親は中立を決め込む。
「前にも首都高で狙撃事件があったと…新聞で読みましたが、主人も?」
「YES。ですが、狙撃事件と御主人の件との関連性は、未だ不明です。奥さん、出来れば、もう少しお話を伺いたく…」
ココで最後の役者が白衣で登場。
「失礼します。キサルさん?担当医のミズナです。御主人の容体は安定しました」
「ハレルヤ!」
「容体をお話ししたいのですが…」
察した首都高HPのプルカが席を外す。
「私はアチラで待機します」
「あ。待って」
「はい?」
呼び止めた七色長髪妻は言い争ってる姉妹を指差す。
「あ。分りました。お嬢さん方の面倒は小官が。ガールズ!1列縦隊!前へ進め!」
人から命令されたコトの無い姉妹は、驚いた顔をしながらも小さく前へ倣えで整列、トコトコと歩き出す。
「銃弾は、御主人の頭部に残ったママです。貫通はせズに右後頭葉に残っている。ただし、手術で取り除ける位置です」
七色長髪妻は、安堵のあまり口に手を当て泣き出す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、首都高HPのプルカは姉妹をデイルームで接待w
「ハイ、自販機のアイスクリーム。ねぇ何があったのかアイスをおごってくれる、親切なお姉ちゃんにだけ、ソッと教えてくれない?」
「OK!バーターね?未だ警察のオバサンにも話してナイけど、スゴい音がして振り向いたら、妹が怯えてチビって…」
「ああっ!ダメ!ソレ、言わない約束っ!お姉ちゃん、ダサい上にヒドい!」
「妹のススロちゃんには、ハイパーチョコチップのウルトラトッピングスペシャルよっ!で?」
「妹の視線の先を見たら、パパが倒れてた」
「それから?」
「ハンドルを握って、無我夢中で車を避けた」
「とても賢い判断ね。銃撃の直前のコトだけど、不審な車とか見なかった?」
「そういえば白いトラックを見たの!でも、誰が運転してるのかは見えなかった」
妹のススロがハイパーチョコチップ(以下略w)の分だけ"バーター"で話してくれるのだが…ナゼか得意げw
「その白いトラック、私は見てないわ…ねぇパパは大丈夫なの?」
「モチロンょ。さ、犯人探しは首都高HPに任せてね」
「はい、お姉ちゃん」
小さな姉妹は、眩しげにプルカを見上げる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そのプルカを"外神田ER"で待っていたのは…
「こんにちわ。万世橋警察署のラギィ警部ょ。あの子達、口が固いでしょ?何かしゃべった?」
「えぇ打ち解けたら意外に歌ってくれました」
「そぉ?この8週間に7件の襲撃事件かあり、4人が死亡してる」
「7件も?てっきり、今回が2件目かと」
「首都高の上ではね。下界の一般道でも奇怪な事故が続出中ょ…あら?どぉしたの?」
「いいえ。実は父親の容体で、あの姉妹にウソを言いまして」
「あら。慰めって必要ょ」
「慰め?気休めに過ぎません」
「秋葉原では、誰でも希望を持たなきゃ」
「しかし、ラギィ警部。この街の何処に希望が?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。敏腕ラギィ警部の下に続々と情報が集まる。
「警部!被害者には、金銭面も夫婦面も特にトラブルはありません」
「有力な目撃情報もナシです」
「でも、2ヶ月で7件の襲撃事件ょ?何かアルでしょ?」
「連続犯でしょうか?」
「あり得るけど、ソレすらもワカラナイ」
「現場に落ちてた凶器も、レンガにタイヤ、ゴルフクラブ、ライフル銃など節操ありません」
「今回は…恐らくフロントガラスの割れ具合から見て音波銃でしょうね」
音波銃は、異次元人が好んで使う武器だ。
「被害者も不規則か。金持ちにいるし低所得者もいる。人種もパンピーにヲタクと様々で…やっぱりランダムだわ」
「複数の模倣犯の可能性もアリます」
「ますますランダムじゃない」
キーワードが連呼されるや、ソレに敏感に反応して、会議アプリで話に割り込む声は、天才ルイナだ。
「ちょっと待って!パターンが無い?」
「え。確かにそう言ったけど、地雷だった?」
「あのね。単独犯か複数の模倣犯か。でも、どちらもソレがパターンなの」
「でも、ルイナ。私が思うに、どの事件もランダムに起きてるわ」
「例えば、音楽動画のシャッフル機能ね。曲順はランダムに決まる。でも、パンピーはソコに規則性を見つけようとするの。しかし、ソレは間違いだわ」
「あら。私のシャッフルには一定の傾向があるわ。アーリージャズょ」
「ソレこそ一般人が規則性の信奉者である良い例だわ」
「とりあえず、音波銃が出て異次元人絡みの可能性があるから本件はジャドーとの合同捜査ょ。力を貸してね、ルイナ」
「もちろん」
「ソレから、今回は7件中2件が首都高で起きた。その関係で、コチラとも組むわょ。首都高HPのプルカ隊長」
捜査本部に時ならぬドヨメキが起きる。
「やった!ミニスカポリスだ!」
続いて、意味不明な拍手も湧き起こるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードを改修したら、ヤタラ居心地良くなって常連の溜まり場と化し、実は少々困ってるw
というソバから、オーナーでアル僕自身がドロドロ溜まってしまって…落ち着くンだょスチームパンクが←
「テリィたん、時間ある?」
「時間のナイ人はココに来ないさ。どーした、ルイナ」
「ちょっち奥で話せる?」
いや。既にココが奥だょバックヤードなんだからw
"メイド服を着た天才"ルイナは妙なコトを逝う。
「ココで聞くょ。首相官邸の最年少アドバイザーの天才が今宵はどーした?夜景を楽しもうょ」
「実は最近…ヲタクの聖地にいる実感がわかないの。ローティーンの時からズッと研究生活を続けて来たから」
「ソレは、確かに悩むべき問題だな。でもさ。だから、普通の天才は、アキバになんか来ないンだょ。ルイナは、何でアキバに来たの?」
「メイド服を着たかった」←
「なるほど。すると、アキバは関係無いワケだね。だったら先ずアキバを受け入れるのが先決だ。周りの僕達は、昔も今も変わらズ君を受け入れるから」
「うーんニワカに理解は不可能だけど、何だか奥の深い言葉だわ」
「きっと駄菓子チョコのカフェインのせいさ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕と無駄話をしたルイナは深夜に自分のラボに帰る。
ルイナのラボは、万世橋とはアプリでオンラインだ。
「あ。ルイナ、何処に行ってたの?ねぇ1連の事件には何かパターンがあるって言ってたわょね?そのパターンが…やっぱり見えて来ないの!」
「ラギィ警部。一般的に、ハイウェイ事故の環境要因となるのは、天候、渋滞、人種問題、他に普通に人がイラつくモノ全てょ。何か、典型的な特徴はナイの?」
「今回は、幼い姉妹が白い小型トラックを目撃してる。姉妹は、自宅の近くでも見たと言ってるわ」
「白いトラック?そこら中を走ってるわね」
「ダッシュボードに"鬼滅の焼津"のマスコットが飾ってあったそうよ。どう思う?」
「子供の証言だけど、被害者が狙われていた可能性も考えられるわね」
「OK。両方の線から探りましょう。万世橋警察署は、総動員で白いトラックの登録情報を調べるわ」
「もう1つは何?」
「妻が夫を善人だとアレだけ絶賛スルのは、絶対に怪しい。七色長髪妻の身元を洗わなきゃ」
「え。ソッチが私の担当?何かデータ解析にしてょ」
「大丈夫。コッチは、首都高HPに行ってもらうから。ウケが良いの、彼女」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ウケが良いのはプルカではなくてアイスだw
"32アイスクリーム"パーティパック持参で"外神田ER"に意識不明の被害者(&家族w)を見舞うプルカ。
「プルカお姉ちゃん!ゴミ出ししたし、ススロの宿題も見たわ。あ、ススロは今、テレビゲームをやってるわ。パパの入院中は、お家のコトは私が全部やってるの!」
「スゴい!はい、激レアのスーパーチョコミントデラックス紅白バージョンあげる」
「わぁい!で、ススロの見た白いトラックは?」
「今、(万世橋のw)みんなで調べてるトコロょ。そのコトでママとお話ししてもOK?」
「OK!ススロ、アイス来たょー!」
幼い姉は、幼い妹のもとへ走る。
プルカは七色長髪妻と向き合う。
「ご主人は?」
「銃弾は取り除いたわ」
「ススロちゃんが見たと言う白いトラックですが、ヲタク、じゃなかった、お宅の近くでも目撃されていました」
「え。私達は狙われていたと?」
「心当たりは?」
「ナイわ。全く考えられナイわ」
「会社や御近所でのトラブルは?」
「何もナイわ」
「…貴女自身は?」
「私?まさか…ないハズょ」
「知らズに誰かの恨みを買ってるとか」
「考えられないわ」
「スーパーの駐車場やレジで喧嘩しました?」
「あのね!私達は、すすんで他の人に場所を譲る夫婦なの!彼の欠点と言えば、人が良過ぎるトコロくらいだけど何か?!」
「わ、わかりました。落ち着いてw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、万世橋では捜査員総出でPC作業が続くw
「おい。白いトラック、見つかったか?」
「まだだ。俺は177台調べたがな。他にも気になるコト、あるょな?」
「例えば?」
「例えば、交通情報、天気、職業、発生時刻、曜日、月齢…」
「ランダムな事件に何とかしてパターンを見つけなきゃ!ジャドーのパツキン姐さんに怒られそうだ」
「しかし、7件とも類似事件の典型的な要因とまるで一致しないとはなー」
「氷河期到来、太陽フレア、宇宙人来訪、ストリートゲーマーとの抗争…7件とも秋葉原の事件プロファイルに当てはまらない」
「確かに聖地の事件としては不自然だな」
「ホント、犯人も動機も見えないナンて」
「ランダムと考えるには、ランダム過ぎルンだょw」
第2章 ランダム vs パターン
その頃ジャドー司令部では…
あ、ジャドーはアキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る首相官邸直轄の秘密防衛組織。
で、"メイド服を着た天才"であるルイナは、このジャドーの中に自分専用の研究室を持っている。
「ランダム過ぎる?レイカ司令官、ソレは程度の差だと言うなら、まだわかりますが、ランダム過ぎるナンて概念は、存在し得ません」
「あら?どうしてかしら、ルイナ。万世橋は、先行して発生した7件は、どれ1つとして過去の事例と重ならないからランダム過ぎると…」
「失礼します!首都高HPのプルカです。首都高上で発生した傷害事件の7割は、運転手同士の口論が発端です。ドライバーが間欠性爆発性障害である場合もあります」
ジャドー司令部にコスプレ女子が勢揃いw
ジャドー司令官のレイカは銀ラメのSFスーツ。ゲーセン地下にある秘密基地に通うための仮装。
対するルイナは、趣味のメイド服。首都高HPのプルカは…御存知アメリカンなミニスカポリスw
何ともアキバは風景だょナゴむ←
「間欠性爆発性障害?ソンな人でも運転免許が?ネジがゆるい人のコトでしょ?」
「差別発言!実は…私の父もそうだったけど、この障害はもっと深刻なの。一見何の理由もナイけど、突然激しく怒り出すのょ」
「え。そんな人、私の周りには何ダースもいるけど、みんな病気なのかしら…とにかく!1連の事件には典型的で象徴的な要因が見当たらないと言うコトね?」
「ソレは、見えない規則性、隠れた変数理論と言うコトです。あらゆる事象は、全て何らかの影響を受けて起きる。たとえ、目に見えなくても」
「でもね、ルイナ。7件ともシンボリックな要因が見当たらないのょ」
「司令官。ソレ自体、特異ではありますが、アリ得なくはナイ。つまり、パターンなのです」
わかったわかったと逝う顔のSFスーツとミニスカw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、万世橋の捜査本部。
「どうだ?」
「おぅ。白いトラックの捜査1307台が終わったトコロだ。残りは約16万台だ!」
「だいぶ進んだな!」←
「ソッチは?」
「実は…7件の被害者同士の関係を探ってみた」
「おぉ!成果は?」
「収穫は少ないw3人が同じジーンズを履いてた。同じ蕎麦屋に通ってたのは…」
「おい!コレは何だ?」
「ん?バニー洗車?バニーガールが洗車してくれるのか?」
「フロリダ発祥のビキニ美女が車を洗う"ビキニ洗車"なら、今や立派なアメリカンカルチャーだが」
「そー言えばアキバでも、ひと夏"スク水洗車"ってのが流行ったコトがあったな。直ぐに廃れたが…でも、今は真冬だぞ?」
「いや!萌えがあれば季節は問わない。この前、中国でもビキニ洗車を見た」
「えっ?!何処で?」
「ウルムチ(新疆ウイグル自治区州府)」
「話は止めど無く脱線してるが…とにかく!俺達はパターンを発見したぞ!キーワードは"バニーガール洗車"だ!警部を呼べ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部の捜査方針会議。
「一見ランダムに見える7件ですが、地道な精査の結果、ようやくパターンが見えて来ました!2人目の被害者レイズと5人目のズミス。実は同じ"バニーガール洗車"の常連でした。特にレイズは、死亡スル2週間前、洗車でビショ濡れバニーガールを盗撮して店側と口論になっています」
「まぁヒドい。原因は?」
「"洗車マイスター"の資格を持つバニーが金を盗んだと騒いで通報されたのを逆恨みし、警察の到着前に盗撮して去ったそうです」
「悲惨!で、口論の相手は?」
「"ウサ耳ケリィ"。バニーガール洗車の売れっ子です」
「とりあえず、その"ウサ耳ケリィ"を連行して」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
バニーガール洗車"ア・ウサギ・クー"は、ふれあい通りの新幹線ガード下にある。
アキバでも真昼間から自称JKのアラフォーが出没スルと噂の聖地のピンクゾーンだ。
さて、捜査員が覆面パトカーで乗りつけると闇夜から真っ赤なバニーガールが登場。
オイデオイデをされるママに、黒のセダンをガード下の神田川べりまで乗り入れる。
「おかえりなさいませ、ドライバー様。1万円でワックスも芳香剤もつけるわ。5万円なら私もつけちゃう」
「私もつける?ツーショットにお絵描きとか?」
「ウケる。カーセックスょ」←
見ると狭い駐車場のアチコチで車が"揺れている"。
「オジ様達"買い"じゃナイの?お仕事は?」
「万世橋警察署だっ!全員、売春容疑で…」
「激ヤバ!みんな、逃げて!万世橋の手入れだよっ!」
リーダーバニーの叫びに、全車、揺れがピタリと止んで、ドアが次々と開く。
飛び出して来たウサギ達は半裸に全裸、耳の有無、連れ子の有無…大狂乱だw
「"ウサ耳ケリィ"!御用だっ!ってかどのウサギがケリィだよっ?!」
「ケリィ?」「あの子ょ」「この子だわ」「私?」w
「伏せろ!音波銃だっ!」
混乱の現場で"全裸にウサ耳"の最凶バニーが、刑事達に拳銃?を向ける!
その銃口は…ラッパ型?アレは異次元人の音波銃か?あっ!超音波を発射w
「しまった!ホシは異次元人だったか!ジャドーに応援を要請…ぎゃ!」
「フン。アンタはゲームセットだょ」
「た、助けてくれ!命だけは…」
超音波の直撃を受けガードは崩落、下敷きになった刑事に無情の銃口が向けられる。
顔面にラッパ型の銃口を押しつけられ、観念して目を瞑った刑事にバニーが告げる。
「アンタ、命が惜しけりゃ…テリィたんを呼びな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ラモナ。あぁ!お前か!」
「Hi!テリィたん。私のいない秋葉原、寂しかった?」
「ウケる。お前、2度と聖地巡礼はナシだと誓ったろ?」
ラギィに呼ばれ万世橋に顔を出したら…ラモナだょw
悪夢だ!前回アキバ追放になったスーパーヒロイン←
「でも、絶対来てくれるって信じてた。Hello 秋葉原!ただいま、テリィたん」
「…刑事さんに音波銃を向けたンだって?」
「私がバカでした。だって!脅せば私の逮捕を諦めるカナって。地獄の底…じゃなかった、ココロの底から反省してるぅ」
絶対してナイwその谷間見せびらかしポーズやめろ!
「しかし、ラモナ。シングルマザーとは逝え、母親だろ?今更バニーガール洗車ってのは無いンじゃナイか?」
「返す言葉もナイわ!」
「元気いっぱい返すなw」
「ダメょ。テリィたんの挑発には乗らないわ。ホラ、私達異次元人って、進化の代償としてキレやすい性格になったでしょ?だから、秋葉原に来るために、怒り抑制セラピーに通ったの。この冷静沈着な態度には、お金がかかってるのょん」
「マジ?ラモナがセラピーに通うとは(世も末だw)!」
「でしょ?実は、仮釈放の条件だったンだけど…ソレに、お金はかかってるけど全部テリィたん達の税金だから気にしないで!」
「気にスルよっ!納税者をナメるな!特にサラリーマンの源泉徴収分を無駄遣いスルなっ!」
「何ソレ?テリィたん、今じゃ私はセラピーの広告塔なのょエッヘン」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室から出て来た僕は頭を抱える。
「ハイウェイ狙撃事件の時は洗車してたって逝ってるけど。証拠のチェキも探せばアリそう」
「マジ?じゃシロかしら。しっかし、酷い広告塔ね」
「…コレで容疑者不明でフリダシ?」
「まったくもー!やっぱり7件はランダムで無関係なのかしら」
「ソレでも単独犯なら、かなり万事慎重で利口な奴だ(絶対ラモナじゃナイw)」
僕とラギィは顔を見合わせ深い溜め息…ソコへ!
「警部!また襲撃です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場は…何とバニーガール洗車の新幹線ガード下だ。
東西をパトカーが封鎖し、神田消防の救急車も到着。
「43才女性。職業は…バニーガール」
「え。」
「即死です」
何とバニーガールの死体。
しかも…リーダーバニー。
「コンクリート片を秋葉原第1高架橋の上に運び、車に落として逃走。目撃者なし」
「計画的な犯行ね。そして、標的は彼女だった」
「YES。一撃必殺でした」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ジャドー司令官ラボ。
ゲーセン店員とメイドの会話。
「…ピタゴラスの定理に余弦定理。メトリクス。ソレに等価原理?ランダム解析を基礎からやり直すつもり?」
「あ、司令官。基礎は終えて、既に11次元超重力理論を展開中。今は10次元を計算中ょ。C領域に対し磁気を帯びたPブレーン解が集束するハズだけど…」
「ラボに寝泊まりしてるの?」
「通勤時間を節約出来るし」
「うーん新しい家が必要だわ。不健全ょ」
「壁紙やパーコレーターを選ぶのが面倒なの。目下の関心事はランダムょ」
「でも…ココじゃ誰も呼べないでしょ?」
「誰を呼ぶンです?」
「例えば…テリィたんとか」
「ヤメて。ミユリ姉様から略奪愛?らしくナイわ」
「ソレはフェアね…やっぱりランダム過ぎる事象ってアルのかしら。笑えるわ」
「え。何かおかしいですか?」
「ルイナが過剰にランダムってコトょ」
「…司令官。いくつか質問するから簡潔にお答えいただけますか?」
「OK」
「目下の関心ゴトは、首都高の襲撃事件ですょね?」
「YES」
「誰もが犯行手口の多様性を気にしてる。なぜなら、7件の事件の手口が…」
「8件になったみたいょ」
「8件が全て異なる手口で行われてるから。でも、ソレを不自然だと感じるベキなのカモしれない」
「YES。2つのサイコロを8回振っても同じ結果は2度出ない。ソレがランダム?」
「いいえ。繰り返さないのがランダムとは限らない」
そうつぶやき、ルイナは押し黙る。そして…
「シャッフル!ねぇシャッフル機能を見落としていたわ!」
第3章 進化の代償
その頃、捜査本部でも発見がアルw
発見者はヲタッキーズのエアリ。あ、ヲタッキーズはミユリさん率いるスーパーヒロイングループだ。
エアリは、実は妖精だけど平時は図書館カフェのメイド長で…とゆーワケで今もメイド服を着ているw
「エアリ!コッチょ!何?何かヒラめいた?」
「あ。ラギィ警部!みなさんの洗い出した8件以外にもパターンに合う襲撃がアルみたい」
「ウッソー!マジ?」
リアクションは昭和だが、発見は最先端w
「あのね。保険会社への保険金請求や車の損害報告書を当たってみたの」
「え?…うーんナルホド意外に鋭いカモ」
「つまり、負傷者がいない事故を調べたワケ。そしたら、出るわ出るわ…大理石の塊、鉛の銛、鉄パイプやらが雨アラレと降って来て、死傷者こそ出ないけど、この2ヶ月で12件も発生してる」
「警察に事故調書がない事故?保険会社か…そっか盲点だったわ。エアリ、鋭い!しかし、何で思いついたの?」
「ソレが"隠れ酒場"で、たまたまサブプラで"プレイガール"を見てたら…」
「え。バニーガール?」
「違うでしょ。"プレイガール"。昭和のお色気番組でミニスカお姉さんのパンチラアクションものょ。ある意味、私達スーパーヒロインの先輩ね。テリィたんが食い入るように(パンチラをw)見てたわ」
「あぁ彼のどストライクね。ミユリも一緒だったの?」
「YES。複雑な表情して…で、主人公のパンチラ姐さん軍団が保険会社の調査員なワケ。ソレで思いついたのよっ!」←
ソコへ、スゴい勢いでルイナが飛び込んで来る!
「私が、この事件を11次元超重力理論で解析中に、貴女達は低俗パンチラ番組を見て鼻の下を伸ばして喜んでたの?!」
「わ。怒れる官邸顧問キター!訂正!鼻の下が伸びてたのはテリィたんだけだから!」
「でも、テリィたんは正しい」
「へ?」
「シャッフル機能ょ。アルゴリズムで不規則な曲順が決まっても、実はソレってランダムじゃない。ポイントは、同じ曲の繰り返しは皆無ってコト」
「なるほど!ソレで襲撃事件の方も繰り返しは無いワケね?と言うコトは…」
「単独犯?!」
共にメイド服のエアリとルイナが異口同音。
「しかも、単独犯だけどワザとランダムに見せかけている?」
「来て、ルイナ。見せたいモノがあるの」
「何?貴女のパンチラ?」
「…別の12件の事故現場ょゴメンね」
「報道されていない事件なの?」
「報道されてないドコロか、警察すら知らない事故ょ。でも、今回との関連性が有意なコトは確認済み。警察調書のある事件8件を足して合計20件の事件を発生順に並べてみるわ。PCでシミュレーションしてみると…ホラ、こんな感じ」
「頻度がドンドン高くなってる!ありがとう。コレで自信を持って言えるわ。犯人は、必死にパターンを避けてる」
「で、ソレがパターンになってるワケかw」
「…ソレに犯行の衝動を抑え切れズに、事件の間隔がドンドン短くなってる。連続犯の典型ね。間違いなく単独犯だわ」
「ついに、パターンをつかんだわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヲタッキーズのエアリにマリレ、さらにルイナが加わって、ラギィ警部に御注進…ん?全員メイド服だなw
「警部、聞いてください!被害者の13人中5人が過去2ヶ月に起きた重傷事故に関わっています!」
「事件と関連がアルの?」
「未だ確信は持てませんが…」
警部は、コーヒーを飲みながら渡された書類を見る。
「とりあえず、首都高HPに連絡して。あとジャドーにも…うーん半分以下の確率かぁ」
「タダの偶然かもしれません」
「調べればわかる。責任は取ってあげるから調べて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜"潜り酒場"で僕とミユリさんとふたりきり。
「襲撃犯の逮捕まで首都高を控えるべきかな」
「テリィ様、確率的にナンセンスです。心配し過ぎでは?ルイナに怒られますょ」
「確率論ナンて原発論争を思い出すな」←
「私は!テリィ様の会社のコトも思って…そんなに心配ならバスにお乗りになれば?」
「東京のバスは楽しいょね。早く無料パスの年齢にならないかな」
「東京人は、年間100時間も車の中にいる。通算年に4日間もジッと渋滞にハマってる計算ょ」
振り向くと…ルイナだ。息抜きで深夜の御帰宅かな?
「最初の手札がロイヤルフラッシュである確率は、首都高で襲撃される確率の2倍ょ」
「レトリックだ。比較がおかしいや」
「じゃ言い回しを変えるわ。心配なら、犯人逮捕まで運転するな。これでOK?」
「うんにゃ。実はペーパードライバーだ」
「…私をからかってるの?」
「うんにゃ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"から連絡があり、被害者の意識が戻ったとのコトで早速ラギィ警部他にくっついてお見舞い。
「コチラは首都高HPのプルカさんと万世橋警察署のラギィさん。そして、コチラは…国民的ヲタク作家のテリィたん。ホラ、あの"地下鉄戦隊メトロん5"を描いた…」
「はじめまして、テリィたん。次作の"メトロん5"に私を登場させてくださいません?」
「お安い御用です。七色長髪のヤンママ怪人、コレはウケそうだ!」
「実はアラフォーなのにヤンママだナンて!みなさん、捜査に進展はありましたか?」
「被害者の内5人が、ある交通事故に関わっていて、関係スルみなさんからお話を伺っています」
「あのぉ。夫はスピード違反もしない人で」
「ソレは存じています」
ココで意識が戻ったキサル氏がベッドから話に割り込む。言葉はシッカリしてるがカラダは痩せこけてるw
ミイラみたいだw
「…私は子供もいるし、運転は慎重なつもりです。2年ほど前、ヒドい事故に少年が巻き込まれるのを見て…」
「交通事故の目撃を?」
「YES。信号無視の車がセダンに衝突して…私は、お役に立てればと警察に証言をしました」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部に話を持ち帰ると、たちまち追加情報が…
「警部!彼は、6歳の少年が重傷を負った交通事故で信号無視を証言、保険会社が、その証言を採用しています」
「でも…単に目撃者なワケでしょ?」
「連続襲撃の動機には、サド的な要素がつきものょ。傷つく被害者を見て興奮する。でも、この犯人は遠くから音波銃を撃ってる。殺害が目的でもナイ」
「プロファイリングは?」
「うーん男性、神経質、高学歴。激情型で定職につけないタイプ。常に被害者意識を抱いている…傷害事件の被害者の可能性もアルわ」
「とにかく、事故資料と被害者の照合を急ぎましょう。ルイナにもデータを流して。現時点で免許を有する8000万人が容疑者ょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラボをのぞいたら、早速ルイナが解析に励んでる。
「あ、テリィたん。アルゴリズムの最適化なら、今はコンピューターがやってくれる。既存のプログラムが使えるハズだから」
「(未だ何も聞いてナイけどw)あ、そぉ良かった!」
「…で、ミユリ姉様とはどーなの最近?」
PCで忙しく作業しながら、遠慮ない視線を飛ばすw
「え。最近?最近って何だょ?何かあった?」
「別に」
「え。何だょ?万事、相変わらズだけど」
「最近パンチラにハマってるとか」
「いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリなんだょ?ソレにパンチラ好きは小学生の頃からだ」←
「そ、そーなの?とにかく!テリィたんは、恋愛は秘密主義だから」
「神秘主義と呼んでくれ。何かあれば真っ先に話すょ」
「どーだか」
「ミユリさんは、僕をどぉ思ってるのかな?」
「素晴らしいヲタクだって言ってたわ」
「ホント?!」
破顔一笑、頭をポリポリかく僕←
「ミユリさん本人がそう逝ってるの?」
「何にでUFOを持ち出すから、わかりにくいけど好意は認められるって…あ!見つけたわ!」
「愛を?」
「最適化の前の別検証をw見落としがちな要素」
「だから、何?」
「交通量。どの襲撃も交通量が多い、路上での日中の犯行だわ」
「でも、目撃者はナシか」
「犯人が常に逃走経路を考えているからだわ」
「そうか」
「でも…もしかしたら、現場付近の交通パターンを解析すれば、逃走経路と逃走場所を推測出来るカモしれない」
「渋滞も避けるハズだな」
「もちろん。車の流れはビルの中の水流に似てる。水流を決めるのは、配管の長さや太さ、分岐点や蛇口の数などね。交通量はもっと複雑だわ。でも、偏微分方程式で逃走経路の最適条件を割り出せる。交通監視カメラやシドレの衛星画像の情報をもとにして、信号のアルゴリズムも計算に入れれば…うーんなかなか高度な数学の問題に変身ょ」
「その方程式が解けるのはルイナ、君だけだ!襲撃の周期を考えると、次の犯行は直ぐだし」
「あぁテリィたん、ソレならもっと私に優しくしてょ」
「無理。秘めた感情を明かしたら最後、僕は星の如く激しく萌え、崩壊スル」
「いやーん。私、この太陽系を守らなきゃ!」
おぉ何となく天才とイチャイチャだ!ハレルヤ!
ところが…ぎゃムーンライトセレナーダーだっw
「こんばんわ。コーヒーの出前ょ」
ミユリさん…じゃなかった、彼女が変身したムーンライトセレナーダー登場。白のヘソ出しセパレート!
ボトムはテニスウェアみたいなミニスカひらひらでブラボー…あれ?前回まで黒だったけどイメチェン?
「何かわかったの?ルイナ」
「ミ、ミユリ姉様!デ、データから、襲撃事件後の交通の流れを計算したのっ!画面を見て!30分を30秒に短縮してみたわ!」
「(何なの?その大声w)コ、コレは?」
ルイナが示すのはアキバの交通量シミュレーション。
「交通量に変則的な動きがあった道を拡大して!」
「変だな。昭和通りは流れて、直交スル神田明神通りは渋滞してる…ん?コレも同じ流れだわ。タイムスケールを見ると…襲撃事件の直後からね?」
「誰かが犯行に合わせて交通量を変えてるみたいょ」
「…逃走経路を作るために?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
深夜の神田明神通り。
交通の途絶えた真夜中の4車線道路の中央に黒いセダンが…乗り捨てられている?
無謀な路駐に、時折すれ違う車はクラクションを鳴らしながらすれ違って逝くw
「邪魔だぞ。どけょ」
誰が通報したのか、ランプを明滅させて、万世橋のパトカーが到着。
ライト片手に警官が降りて来て、不審車の運転席に近づき窓を叩く。
「すみません。窓を開けて」
車内を覗き込む警官…フロントガラスに銃痕←
運転席に額を撃ち抜かれた中年女性の…死体w
第4章 誰かのためのヒロイン
1時間後、現場には非常線が張られ大騒ぎw
「キャサ・クルガ。46歳。2人の子持ちだけどシングルマザー。区の職員です」
「さすがに今度はシングルマザーだけどバニーじゃないのね…一連の襲撃事件との関連性を調べて!」
「至近距離での銃撃は2度目。同じ手口を使うのは初めてですね」
「別の犯人でしょうか?」
「同一犯ょ。慎重じゃなくなっただけ」
「となると、焦ってルンですね。逃げるつもりかな」
「カモね。でも、必ず捕まえる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。早速、襲撃事件との関連性が…
「死亡したキャサ・クルガですが、2年前、区民協働課で信号機設置の要望があった際の予算担当だったようです」
「そして、その要望を彼女は却下した」
「と言うコトは…キャサ・クルガは被害者ではなくて…」
「信号機設置を望む者にとっては加害者だった?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
直ちに本部で捜査方針会議が開かれる。
「被害者キャサ・クルガが要望を却下した神田明神下交差点で、半年後に交通事故が発生。死者2人生存者1人。生き残ったのはブラン・ソマズ。同乗の妻は即死」
「彼は、事故により脳を損傷。以来、怒りを抑制するコトが出来なくなり、失職。その後、似た交通事故で2回逮捕されるも、いずれも不起訴となっています」
「信号機の件でクルガに恨みを?」
「だったら、最初の標的にスルのでは?」
「犯行を重ねる内に、怒りがフツフツと再燃するタイプなのカモ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昔、神田川沿いには小さな町工場が密集していたが、その後開発が進んでビル街に変貌。
しかし、今も時代に取り残されたような小さな町工場がトコロドコロに生き残っている。
その1つにジャドーの特殊部隊が忍び寄る。
「ターゲット、視認」
「2人、裏へ回れ!行くぞ…」
「ソマズ!手を上げろ!」
防弾チョッキに短機関銃の特殊部隊がなだれ込む!
「何の用だ?」
「振り向くな!両手を挙げたママ、ゆっくりコッチを向け!」
「言う通りにする!何なんだ!畜生!」
荒ぶる言葉とウラハラに心臓を抑え、重そうに脚を引きずって振り向く←
交通事故の後遺症か?コレじゃ首都高で待ち伏せ襲撃ナンて無理でしょw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
「俺は、優秀な建築家だった。神田明神下で交通事故に遭って脳を損傷、前頭葉の機能が低下、双極性障害を発症して集中力を喪失した。今では1分の読書も継続出来ない」
「キャサ・クルガのせいか?」
「誰だ?そんな女は知らん」
「信号設置の件で新聞に投稿したろ?彼女は区の信号機設置の予算担当者だった」
「確かに区に抗議はしたが、担当者は知らない。誰だ?もう1度名前を教えろ」
「ヤバ…喧嘩早いのは脳損傷のせいか?」
「怒りの衝動を抑えられないんだ。扁桃体の機能異常のせいだが、抑える努力はしている」
「復讐したいか?」
激昂し怒鳴るブラン・ソマズ。
「そんなワケない!私は!私は…セラピーに通っている。でも、思ったような効果が出ないンだ!」
「セラピー?まさか、あのバニーガールの…」
「おおっ!知ってるのか?やはり有名ナンだな?あのバニーガールがニッコリ微笑むコマーシャルの…」
「げ。あんな広告を信じる奴いるのか?」
「昔の温厚な性格に戻れるなら安いモノだと退職金を全部つぎこんだ。だのに…畜生!バニーガールの広告塔にダマされた!」
大の男がサメザメと泣き出し、刑事は肩に手を置く。
「秋葉原は、とっくにアンタを許した。あとは…アンタが自分を許すだけだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。
「監察医の所見では、ブラン・ソマズには投石も発砲も不可能です。家探しもしましたが、火器も証拠も何も見つかりません」
「でも、ようやく犯人に近づいたわ」
「はい?」
「犯人は、彼よりもっと激情型ってコトょ」
なーんだと逝う顔の捜査員達。ソコへ…
「ラギィ警部!もらった交通情報から、犯人の逃走経路を算出したわ。最も可能性が高いのは、赤の経路。次が黄色。青は可能性が低い」
PCを接続し、本部のモニターに地図を出す。
「周辺の聞き込みをしてみて!はい、地図のコピー!」
「やれやれ。楽しいドライブ遠足だ」
「お前が運転だ」
ボヤきながらも出動して逝く刑事達。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ドンキ前の中央通りは8車線で、交通量も多い。
昌平小学校の登下校時には交通監視員が立つw
いわゆる"緑のおじさん"だ。
「万世橋のおまわりさんかい?おぅ。銃撃事件のコトをラジオで聞いた直後にトラックが通り過ぎたぜょ」
「猛スピードで?」
「ソレだけじゃねぇ。その後小型トラックが来たんだが、赤信号になった」
「小型トラック?」
「おぅ。色は白だ。赤信号でも減速しない。危ねぇと思ったら、走り抜ける直前に信号の野郎、青に変わりやがった」
「え。たった数秒で?マジかょオッサン」
「おぅ。痩せても枯れても"緑のオッサン"だぜょ」
オレンジの派手なキャップをかぶり、交通安全ベストを着てサングラスをした"オッサン"は、胸を張るw
「他に車や運転手の特徴は?」
「国産の新型だったかと。確か運転手は色白男性で、浜田省吾みたいなサングラスをかけてた」
「ハマショー?翔子じゃなく?…ダッシュボードの上に何かなかったか?」
「無茶言うな。ブレーキも踏まず通り過ぎ、良く見えなかった」
「ありがとょオッサン。昌平キッズの交通安全は、オッサンに任せたぜ!」
「おぅ。任せとけ!おまわりさん達もシッカリな!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
オッサンと別れた刑事達は大興奮だ!
「出たぞ!白いトラックだ」
「冒頭で被害者の次女が見た車と同じだな」
「信号が直前に変わっただと?」
「怪しいな。何か操作してるに違いナイ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋から帰ったルイナをレイカ司令官が迎える。
「あら?ラギィに助言した後は、アキバ科学大で弦理論のシンポジウムじゃなかったの?」
「何だか気が乗らなくて」
「あらあら」
メイド姿の天才の隣にゲーセン店員姿の司令官が座る。
「悩みがあるなら聞くわょ?」
「説明するのが難しい事象カモ…」
「わかる。だから、自分をゴマかさずに話して」
「何を話せと?」
「ラボに寝泊まりして、重要なイベントを欠席スル。心配せズにはいられないわ」
「引っ越しは…壁紙とか考えるのが面倒なの」
「じゃシンポジウムは?」
「緊急度の高い用事が起きたら困るし」
「…テリィたんとのデートとか?」
「ソ、ソンなコト言ってない…ミユリ姉様に怒られちゃう!…でも、感謝スルわ」
「何を?」
「司令官の優しさに。私が、理性の道から外れたら、きっと司令官が救ってくれる」
「友達でしょ?いつでも頼って。ソレから、テリィたんだけど、最近パンチラにハマってルンだって。あ、月面基地とリモート会議の時間だわ」
レイカはソソクサと立ち去りルイナは取り残される。
「…パンチラか。でも、どーすれば良いの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。
「警部!中央通りを行く時、犯人は赤外線を放つ装置で交通信号を操作したモノと思われます」
「本来、皇族車両などにだけ許された、特殊な装備のハズです」
「だから、マンマと逃走出来たのね」
「操作された信号は、交通監視カメラの映像から特定が可能だわ。時間と場所を割り出しましょう」
「もしかしたら、運転席の犯人の写真もゲットです」
「しかし…調査範囲は恐ろしく膨大です」
「好都合だわ!広いほどデータが集まるモノ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜…と逝うか夜明け前wの捜査本部。
「全員徹夜、御苦労様!どう?」
「収穫がありました!今、数100台におよぶ交通監視カメラ画像を調べ終えたトコロです」
「9件目の襲撃事件から15分後の外堀通りの映像です。妻恋坂の交差点通過3秒前に信号が青になってます…が、ナンバーも運転手も見えません」
「あら。コレは何?拡大して」
正面モニターに映った画像をラギィが指差す。
「フロントガラスにステッカー?」
「このトラック、中央通りの交通指導員のオッサンや被害者の娘が証言した特徴とも合致してます」
「しかも、明らかに交通信号を操作してる…」
「運転手を探しましょう…ん?このステッカー、逆さまになってませんか?おい、180°反転出来るか?」
オペレーターが画像を反転!
「ADHD?どっかのテロ組織?」
「いいえ。注意欠如・多動症のコトです。コレはADHDの患者会のステッカーです。脳損傷したソマズが患者会の秋葉原支部に所属してました」
「ステッカーの下の文字は判読不能ですが…秋葉原と読めなくもナイです」
「こりゃ偶然じゃないな」
ソコへ別の情報が飛び込む。
「白いトラックの所有者が割れました。74歳の老女とミッチ・サラヤ38歳。またしてもシングルマザー」
「サラヤは、1年前にバイク事故で脳を損傷してます。最初の襲撃事件が発生したのは、彼女の患者会加入の2ヶ月後です」
「会員仲間の話から標的を選んでる?」
「彼女自身は、ひき逃げの被害者で…恐らく復讐スル相手が見つからなかったのでしょう」
「ソレで、仲間の仇打ち?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ADHD患者の会は、毎月第3木曜の夜…今宵だw
「当会では、周囲に理解されない、ADHD患者としての辛さを仲間と共有します。え?サラヤさん?彼女は、みんなとウマくやってマスょ。異次元人にとって、怒りのコントロールは、進化の過程で不要とされた機能だそうですが」
「え。サラヤさんは異次元人なのですか?」
「YES。スーパーパワーもお持ちの異次元人スーパーヒロインだと伺ってます」
ミーティング資料を配りながら世話人の女性は話す。
「最近の襲撃事件について、何か話していませんでしたか?」
「ええ。ミーティングでも何度か話題になりまして…記録をご覧になります?」
「どんな様子でしたか?彼女は」
「いつもは陽気で饒舌なサラヤさんが、襲撃事件の話題では沈黙していました」
「どうもありがとう。失礼します」
刑事は、会場を出るやスマホを抜く!
「ラギィ警部!サラヤが犯人だっ!間違いナイ!」
「OK!居場所も判明したわ。神田花岡町」
「ソレから!ホシは異次元人でスーパーヒロインです!恐らく警察の手には負えない。ジャドーに応援要請を!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昭和通りをまたぐ歩道橋。眼下に流れる車列を見ながら、煉瓦ブロックを落とそうとスル人影…
その時、遠くからパトカーのサイレン、明滅スル赤ランプ、気がつけば忍び寄る特殊部隊の影w
「ジャドー?」
歩道橋の階段を完全武装で駆け上がって来る特殊部隊を逆に蹴り落として路駐中の白トラックに飛び乗るw
エンジンをかけ急発進!ダッシュボードで揺れる"鬼滅の焼津"…ところが、前後左右にパトカーが殺到!
「万世橋警察署だっ!異次元人ミッチ・サラヤ!投降しろ!両手を目に見えるトコロに出せ!」
「こんな感じ?」
「ぎゃー!」
サラヤの手の平から光線がほとばしり、渋滞中の昭和通りが爆発炎上スル!
彼女は…怒りをエネルギー光線に変えて発射するスーパーヒロインらしい。
「コレは正義よっ!この秋葉原では、罪なき人が殺され、犯人は野放しになっている!私は制裁を加えてるの!私はランダムを武器とスル機動戦士!」
「待って!でも、そのスーパーパワーはフェアじゃないわ!」
「誰?…あ、ムーンライトセレナーダー?!」
サラヤの"怒りエネルギー"と真っ向からぶつかる青い光線は"雷キネシス"!
スーパーヒロイン同士、光の奔流を激しくぶつけ合いジリジリ間合いを詰めるw
因みに前回まで黒だったムーンライトセレナーダーのコスプレは白、しかもボトムはミニスカがひらひら…
「えいっ!」
「え?パンチラキック?私、負けましたわ(回文)!」
「見ないで」
呆気なく蹴り倒され、待ち構えてた首都高HPプルカがお縄にスル。
タナボタでお手柄のプルカがムーンライトセレナーダーに尋ねる←
「ミユリ姉様、なぜ昭和なパンチラアクションを?」
「え。いいえ、私はソンなつもりは…あくまで咄嗟の判断ょ」
「…でも、聖地の全ヲタクが食い入るように見てましたw恐らくテリィたんも」
「そ、そぉかしら?テリィ様が御覧に?まぁ!全く気づかなかったわ、どぉしましょう!」
「カリオストロの銭形?」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「テリィ様、お疲れ様でした。最近スーパーヒロイン絡みの重大事件が続きましたね。タマには休暇でも、お取りになったら如何ですか?」
「え。でも、ウッカリ休んでるとミユリさんのパンチラ…じゃなかった!活躍を見落としてしまうし」
「まぁ!ナンてコトを…でも、少しはメイドの逝うコトもお聞きになって。御主人様」
ソコへメイド姿だけど客のルイナが飛び込んで来る!
「テリィたん!良かった!(パンチラのw)ミユリ姉様にも見せたいモノがアルの!」
「えっ?何だ(もしかしてルイナのパンチラw)?」
「最初、私は襲撃事件はランダムだと言ったわ。でもね、違ったの。実は、襲撃事件の連鎖を始めたのは、ミッチ・サラヤじゃなかった!」
「何の話だょ(パンチラじゃナイならw)もうヤメにしょ?」
「全てのキッカケは、ひき逃げ事件ょ。脳の損傷で彼女は衝動と怒りで制御不能になった」
「そして、罪を犯し償うコトになった」
「だけど、ミッチ・サラヤを轢いた犯人は野放しょ」
瞬間、みんなポカンとした顔になる。
ヤバいwソコにトドメをキメるのは…
「ミニスカアクションならオハコの首都高HP、プルカです!当時の事故報告書を取り寄せました。ミユリ姉様やテリィたんも見たいかなと思って。タイヤ痕。塗装。金属片。逮捕につながる証拠ばかりですぅ」
「あら。姉様が頭を…じゃなかった、カチューシャを抱えておられるわ。でも、姉様。秋葉原はヲタクの街、ヲタクが出来ない理由を捨てる街ですょね?」
「やれやれ。ミユリさん、先ずは容疑者を絞るコトから始めようか」
元祖ミニスカポリスのプルカがトドメを刺す。
「ミユリ姉様。貴女のスーパーパワーは誰のため?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
元旦AKIBAの夜にやって来た
まるでヲタクなダメ廃人
AKIBAは大混乱ヒドい騒ぎさ
廃人廃人とハヤされて
君はリアルに弾かれた
ひとりぼっちのヲタク
だけどどうだ?
ヲタクのココロのその奥に
ピュアなハートがあるさ
リアルを知らないその瞳が
臆病な僕達に教えてくれた
廃人になる強さを
Hello Happy New Year
プペプップーヲタク
ココロやさしいヲタクさ
Hello Happy New Year
プペプップーヲタク
君も僕もヲタクさ
輝く星が闇に飲まれて
リアルが見えなくても
行こうリアルを超えて
ヲタクの世界へ
Hello Happy New Year
プペプップーヲタク
奇跡が近づいてる
Hello Happy New Year
プペプップー首都高
ココロやさしい道路ヲタ
Hello Happy New Year
プペプップーヲタク
首都高の物語
AKIBAの物語
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"パンチラ"…ではなくて"ランダム"をテーマに、怒りをエネルギーとして発射する異次元人スーパーヒロイン、その怒りをコントロール出来ないADHD患者、首都高上で次々狙撃される人々とその家族、バニーガール洗車の関係者、ランダム犯行を追う天才や警察、作者がいつもアキバでお世話になっている、中央通りの交通整理のおじさんなどが登場しました。
さらに、異次元人とADHD患者の共通点、怒りの抑制と進化の関係なども、サイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みをコロナ第6波ただ中の秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。